『沖縄経済と業界発展』は,1950倶楽部が企画・編集し, 大城 肇氏,與那原 建氏,山内 昌斗氏,大城 淳氏が執筆した沖縄経済とこれからがわかる一冊です。沖縄の歴史を知り,どの業界にどのような企業が生まれ,沖縄が抱える諸問題とそれらの解決策について学ぶことができます。
目次
沖縄の経済に興味がある人におすすめ
本書は,沖縄の経済に興味がある方におすすめです。「沖縄が好き」といったとき,「観光」「海」という反応が返ってくることにちょっと疲れてしまっている方,自分が生まれた場所,移り住んだこの場所で自分ができることをしたいと思っている方なら間違いなく楽しめるはずです。
『沖縄経済と業界発展』の目次
本書の構成は,以下の通りです。
第1章 琉球・沖縄の経済発展史
- 沖縄はなぜ貧しいのか
- 琉球王国と大交易時代
- 日中両属時代へ
- 琉球処分と近代化
- 米国統治下の沖縄経済
- さらなる発展に向けて
第2章 沖縄産業発展のあゆみ
- 沖縄における産業・業界の歴史
- 産業発展の鳥瞰
- 県内各業界のあゆみ
- 新たな沖縄の創造に向けて
第3章 自立型経済への挑戦
※ナンバリング見出しなし
第4章 両利き経営と沖縄の可能性
※ナンバリング見出しなし
琉球新報社と沖縄タイムスのコラムも楽しめる
本書は,琉球新報社,沖縄タイムス社による,それぞれ11編のコラムもあります。
- 首里城
- ソテツ地獄
- 移民
- 沖縄戦中経済
- 通貨交換(ドルから円に)
- 金門クラブ
- 寄留商人
- サトウキビ
- 経済四天王
- キャラウェイ旋風
- 沖縄の産業まつり
- 食料品製造業
- ビールと泡盛
- 沖縄ブーム
- 県内の経済団体
- 沖縄振興体制
- 失業率
- 沖縄21世紀ビジョン
- ポストコロナ
- アジア経済戦略構想
- 観光1千万
- モノレール
「沖縄ブーム」(紹介されているのは『ちゅらさん』)のようなライトなものもあれば,「経済四天王」「沖縄振興体制」など経済に興味がある方が楽しめるものまで掲載されています。
歴史から学ぶ
「歴史は繰り返さない。しかし,韻を踏む。」
(中略)
しかしながら,歴史は繰り返さないといっても,我々は歴史と対峙する中で教訓を得ることができる。また,歴史を一種の実験室として利用して,現代的な問いや仮説を検証することもできる。時代や空間を超えて成り立つような普遍的原理を,我々が近くできる歴史的欠片から抽出することや,少なくとも抽出しようとする試みは,現代の社会経済を理解する上でも有益な営みがある。
本書は,現代の沖縄の経済的状況を理解するために,歴史的な経緯をたどっていくところからはじまります。そして,歴史をたどるなかで,現代の沖縄の問題点,とりわけ経済的状況を知り,自分たちがこれからどのようにすれば良いか考えるきっかけを与えてくれます。
地場産業振興による自立型経済の確立
沖縄経済における古くて新しい命題の一つが,経済の自立を達成することである。経済自立とは,他の何ものにも依存しないことであり,経済的に独り立ちすることであるといえる。経済的に独り立ちするには,農林水産業と製造業などによるモノづくりと観光関連産業や第三次産業などによるサービスづくりをおこない,移輸出を増大させ,かせぎ=外貨を増やすことであり,あるいは県外から買っているものを県内産に置き替えて移輸入を減らすことは自明のことである。この自明なことが実現できないところに,沖縄経済の苦悩がある。
「第3章 自立型経済への挑戦」では,沖縄経済が自立するための方法が提言されています。
それが「IIPSアイランド・オキナワ」です。
- I:Independece(自立)
- I:Innovation(変革)
- P:Peace(平和)
- S:Sustainability(持続可能性)
そして,自立型経済を確立させるための導線として,地場産業を振興させること,具体的には県内企業をベースにしたクラスター化に向けた「プロジェクトK」が12個あげられています。
- 環境
- 健康
- 観光
- 海洋
- 交易
- 交通
- 研究
- 教育
- カルチャー(感性)
- 共同体
- 公共
- 交流
※プロジェクトKとしたのは,12個のキーワードがすべて「カ行」で表現できるため。
本書では,「教育:イノベーティブな中核人材の育成,オンライン教育システムの普及」など,それぞれの項目について,より具体的な内容が紹介されています。
まとめ
本書は,沖縄で何かをしたいという方にぴったりの一冊です。自分がやりたいことはもちろんですが,「何をやろう」というときに,「沖縄がどのような方向に向かっているのだろう」ということを把握しておくのも必要です。沖縄経済に興味がある方はぜひ(楽しいですよー)!
書名 | 沖縄経済と業界発展 |
著者 | 大城 肇 與那原 建 山内 昌斗 大城 淳 |
出版社 | 厚有出版 |