『ぼくの沖縄<復帰後>史プラス』は,著者である新城和博(しんじょう・かずひろ)さんの記憶とともにあの時代の沖縄がわかる第3回「この沖縄本がスゴい!」受賞作品です。
今回は,ジュンク堂書店 那覇店で激プッシュされていた『沖縄のトリセツ』を紹介します。
1970年代あたりの沖縄が好きな人におすすめ
本書は,1972年の返還以降の沖縄について書かれています。1990年代の安室奈美恵さん,2000年代以降の沖縄ブーム等にも言及はありますが,やはり面白いのは1970年代の復帰直後のお話です。
当時の記憶がある人は懐かしく,生まれていない人にとっては(僕がそうです),「あの時代」を知る興味深い資料のひとつとも言えるでしょう。
『ぼくの沖縄<復帰後>史プラス』の目次
本書の構成は,以下の通りです。
<1970年代>「車は左 人は右」,じゃあ沖縄は?
- 1972年 ドルから円への通貨交換
- 1975年 「ダイナハ」オープン
- 1976年 「海洋博」閉幕
- 1978年 ナナサンマル「7.30」
<1980年代>「ヤマントチューになりたくて,なりきれない」
- 1981年 具志堅用高,敗れる!
- 1981〜82年 断水326日
- 1983年 7か月のバススト争議
- 1985年 西銘順治「沖縄の心」発言
- 1986年 「日の丸・君が代問題
- 1987年 「海邦国体」開催
- 1989年 「慰霊の日」休日廃止問題
<1990年代>「オータ」と「アムロ」の時代
- 1990年 大田昌秀革新県政誕生
- 1991年 嘉納昌吉,紅白出場
- 1992年 「首里城公園」開園
- 1995年 10.21県民総決起大会
- 1996年 安室奈美恵,大ブレーク
- 1997年 「ミハマ・セブンプレックス」開館
- 1999年 映画「ナビィの恋」大ヒット
<2000年代以降>「苦渋の決断」はもういらない
- 2000年 「沖縄サミット」問題
- 2001年 ドラマ「ちゅらさん」ブーム
- 2002年 「美ら海水族館」オープン
- 2003年 「ゆいレール」発進
- 2004年 沖国大に米軍ヘリ墜落
- 2007年 教科書検定撤回9.20県民大会
- 2010年 興南高校野球部,春夏連覇
- 2012年 オスプレイ配備
本書は,「沖縄タイムス」の文化面に2011年1月から2012年4月まで連載された「沖縄復帰後史 我らの時代のフォークロア」をまとめたものです。
2014年に初版が出版され,2018年に増補改訂し,さらに追記改定(付録プラス+ <復帰後>史は続くよ,どこまでも? 2014年〜2020年)されました。
参考:新城さんの著書選出 この「沖縄本」がスゴい! 「ぼくの沖縄〈復帰後〉史プラス」(沖縄タイムス)
参考:「この沖縄本がスゴい!」に新城和博さん著書 復帰後の世相と思い出つづる「想像を膨らませて」(琉球新報)
「この沖縄本がスゴい!」まとめ
本書は,県内の書店がおすすめの1冊を選ぶ「この沖縄本がスゴい!」の受賞作品です。
そこで,「他にどんな受賞作品があるんだろう?」と思ったので,調べてみました。
- 第1回:復帰前へようこそーおきなわ懐かし写真館ー(海野文彦/新星出版)
- 第2回:絵でみる御願365日(むぎ社)
- 第3回:ぼくの沖縄<復帰後>史プラス(新城和博/ボーダーインク)
- 第4回:よくわかる琉球・沖縄史
たしかに,これらの本は沖縄ではよく見かけたのを覚えています。ジュンク堂書店ではどの本よりも目立つように平積みされていていました。今後も,沖縄本をチェックしたいと思います。
ドルから円への通貨交換
とにかく「復帰」すれば何かが変わることだけは感じていた。その最初の,そしてもっとも分かりやすいものが,ドルから円への通貨交換であった。
生まれた時からアメリカ統治下であり,お金と言えばドル以外に馴染みのなかった世代のぼくらが,その頃買い食いするのはもちろん近所の「いっせんまちやー」。すーじ小(路地)でおばぁがお家の軒下に品物を広げてやっていた駄菓子屋。みんなそれぞれ馴染みのお店があった。この「いっせん」はぼくらにとっては「1セント」の意味だった。1セント,5セント,10セント,25セントの硬貨をポケットにじゃらつかせて,三角のくじ引きアメやパッチーを買っていた。
この文章を読んで,あの頃の沖縄の景色に憧れを持つ人は,間違いなくハマります(笑)。こんな思い出たちが,ビートルズ後期と一緒に語られるんだもの…(ズルいぞ)。
※パッチー=めんこ
ナナサンマル「7.30」
1978年7月30日午前6時をもって,沖縄全県下一斉に左側交通方式に変わる。前日の午後10時から一般車両を通行禁止にして,わずか8時間のうちに,沖縄県警をはじめとするプロジェクトチームは,その作業を成し遂げた。この時期沖縄は毎年「プロジェクトX」的なことばかりしているのである。
しかし一夜明けたら世の中がまるっきり逆になるなんて,なかなか経験できることじゃない。<革命>というより,ある意味,社会的イリュージョンである。
沖縄が日本に返還されたのは1972年,左側交通方式に変わったのはその6年後の1978年です。
沖縄に住んでいる方は,この「ナナサンマル」を経験し,そして生まれていなかった(または物心がついていなかった)方は,親世代から聞いているそうです。
本書には,「ナナサンマル」当時の写真も掲載されています。
まとめ
本書は,復帰後の沖縄がわかる一冊です。特に1970年代の話は,当時が懐かしい人はもちろん,当時のことを知らない世代の方にとっても,あの頃の沖縄を興味深く知ることができます。
著者の新城和博さんが編集者として携わるボーダーインクの「ボーダー新書」には,
- 沖縄苗字のヒミツ
- 沖縄人はどこから来たか
- 外伝沖縄映画史
など,他にも興味ある本が多数出版されていました。さて,どこから手をつけようか。
書名 | ぼくの沖縄<復帰後>史プラス |
著者 | 新城和博 |
出版社 | ボーダーインク |