民法の債権の総則から債権の目的について学習します。今回から、債権法に入ります。
債権とは、特定の人が特定の人に対して、一定の行為を請求することができる権利をいいます。
これまで学習してきた物権は、誰に対しても権利を主張することができました。たとえば、土地の所有権を持っていれば、誰に対してもその土地の所有権を主張することができます。これに対して、債権の場合、たとえば、売買契約であると、買主Aさんは、売主Bさんにしか「物の引渡し」を請求することができません。また、売主Bさんは、買主Aさんにしか売買代金を請求することができません。
債権は、全5章で構成されています。
- 第1章 総則
- 第2章 契約
- 第3章 事務管理
- 第4章 不当利得
- 第5章 不法行為
第1章「総則」は、全7節で構成されています。
- 第1節 債権の目的
- 第2節 債権の効力
- 第3節 多数当事者の債権及び債務
- 第4節 債権の譲渡
- 第5節 債務の引受け
- 第6節 債権の消滅
- 第7節 有価証券
今回は、債権の全体について定める総則から債権の目的についてみていきましょう。
特定物の引渡しの場合の注意義務
債権者とは、債権を有している人をいいます。
債務者とは、債務を負っている人をいいます。
特定物とは、その物の個性に着目して引渡しの対象とされた物をいいます。
たとえば、不動産や美術品などを考えるとわかりやすいと思います。
債権の目的物が特定物の引渡しであるときは、債務者は、債権の目的物の引渡しをするまで、善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければなりません。これを善管注意義務といいます。
条文だと難しく感じますが、たとえば、美術品を引き渡す義務を負っている人、つまり売主は、美術品を引き渡すまで善管注意義務をもって、保存する必要があるということです。
種類債権
債権の目的物を種類のみで指定した場合において、法律行為の性質又は当事者の意思によってその品質を定めることができないときは、債務者は、中等の品質を有する物を給付しなければならない(401条1項)。
前項の場合において、[①]債務者が物の給付をするのに必要な行為を完了し、又は[②]債権者の同意を得てその給付すべき物を指定したときは、以後その物を債権の目的物とする(401条2項)。
種類債権とは、同じ種類の物を一定数量の引渡しが目的とされる債権をいいます。
種類債権の目的物を種類物といいます。特定物と種類物を比較しておさえましょう。
たとえば、債権の目的物を「りんご」と指定した場合、当事者の意思によって品質を定めることができないときは、りんごの引渡しの義務を負っている者は、中等の品質を有する物を給付しなければなりません。
種類物債権の場合、債務者が物の給付をするのに必要な行為を完了し、または引渡しの債権者、つまり買主の同意を得て給付すべき物を指定したときは、以後その物を債権の目的物とします。このときに、種類債権の目的物は、特定の物になったので、特定物債権になります。特定物債権になったということは、先ほどの400条が適用されるので、引渡しの債務者に善管注意義務が発生します。
たとえば、①債務者がりんごを箱詰めをしたり、または②債権者が「このりんごがいい」と指定したときは、そのりんごが特定物になると考えるとわかりやすいと思います。
債権の総則では抽象的な内容が続くので、できるだけ具体的に考えるようにしましょう。
選択債権における選択権の帰属
物の引渡しという債権の目的が数個の給付の中から選択によって定まるときは、その選択権は、引渡しの義務を負う債務者にあります。
選択権の行使
前条の選択権は、相手方に対する意思表示によって行使する(407条1項)。
前項の意思表示は、相手方の承諾を得なければ、撤回することができない(407条2項)。
選択権は、相手方に対する意思表示によって行使します。
また、一度選択がなされると、相手方が信頼するため、それを変更することによって不測の損害を被らせることになるので、選択の意思表示は、相手方の承諾を得なければ、撤回することができないとされています。
選択権の移転
弁済とは、債権の給付内容を実現することをいいます。
この時期を弁済期といいます。
りんごを引き渡す時期にある場合において、相手方である債権者側から相当の期間を定めて催告をしても、当事者がその期間内に選択をしないときは、種類債権のままで特定されないため、選択権は、相手方である債権者に移転します。
第三者の選択権
第三者が選択をすべき場合には、その選択は、債権者又は債務者に対する意思表示によってする(409条1項)。
前項に規定する場合において、[①]第三者が選択をすることができず、又は[②]選択をする意思を有しないときは、選択権は、債務者に移転する(409条2項)。
第三者が選択をする場合、債権者または債務者に意思表示をすることによって選択します。
この場合、第三者が選択をすることができず、または選択をする意思を有しないときは、選択権は、原則に戻って、債務者に移転します。
不能による選択債権の特定
りんごの中に不能のものがある場合、その不能が選択権を有する者の過失によるものであるときは、りんごは、その残ったものから選びます。
選択の効力
選択をすると、債権の発生の時にさかのぼって効力を生じます。
