前回、行政上の強制手段のひとつとして「行政強制」について見てきました。今回は「行政罰」です。行政強制が将来に向かって行政上必要な状態にさせるものであるのに対し、行政罰は過去の行政上の義務違反に対して制裁を行うものです。
行政罰は、行政刑罰と秩序罰に分けられます。行政罰は、法律あるいは条例の根拠がなければ科すことはできません。また、憲法39条後段が「同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない」と定めているため、二重処罰は禁止されます。
試験対策としては、まず名前から混同しやすい「執行罰」は行政罰ではないこと(行政強制)、そして行政刑罰と秩序罰の違いについて押さえておきましょう。
行政刑罰
行政刑罰とは、行政上の重大な義務違反に対して、刑罰(①懲役、②禁錮、③罰金、④拘留、⑤科料)を科すものをいいます。行政刑罰の手続は、刑事訴訟法によります。
また、行政刑罰は、取締り強化のため、違反者だけでなく、使用者も処罰する場合があります(両罰規定)。
秩序罰
秩序罰とは、行政上の軽微な義務違反に対して、過料を科すものをいいます。秩序罰は、国の法令に基づく場合は非訟事件手続法、条例や規則に基づく場合は地方公共団体の長が科します。
本試験では、秩序罰について、どのようなときはどのように科されるかが問われます。
行政上の秩序罰とは、行政上の秩序に障害を与える危険がある義務違反に対して科される罰であるが、刑法上の罰ではないので、国の法律違反に対する秩序罰については、非訟事件手続法の定めるところにより、所定の裁判所によって科される。
(令元-問8-4)
正解:◯
まとめ
最後に、行政刑罰と秩序罰について違いをまとめておきましょう。
行政刑罰 | 秩序罰 | |
適用 | 法律、条例 | 法律、条例、規則 |
手続 | 刑事訴訟法 | 非訟事件手続法 地方公共団体の長 |
処罰 | 懲役、禁錮、罰金、 拘留、科料 |
過料 |