行政法の行政指導について学習します。行政指導とはどのようなものか、どのような種類があるのかを確認しましょう。
行政指導とは
行政指導とは、行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいいます(行政手続法2条6号)。
行政指導は、相手方の任意を前提とする事実行為であるため、法律の根拠は不要です。
なお、行政指導の手続については、行政手続法で規定されているため、行政手続法のところで学習します。
行政指導は、①規制的行政指導、②助成的行政指導、③調整的行政指導の3つに分けられます。
①規制的行政指導
①規制的行政指導とは、相手方の活動を規制することを目的として行われる行政指導をいいます(櫻井=橋本132頁)。
たとえば、病院開設中止勧告などがあります。
②助成的行政指導
②助成的行政指導とは、相手方に対して情報を提供し、もって私人の活動を助成しようとするものであり、相手方にとって利益的な意味合いを有する行政指導をいいます(櫻井=橋本132頁)。
たとえば、税務相談などがあります。
③調整的行政指導
③調整的行政指導とは、私人間の紛争に行政が介入し、その解決をさぐるために行われる行政指導をいいます(櫻井=橋本132頁)。
たとえば、建築主と付近住民の紛争に際しておこなわれるものなどがあります。
行政指導に対する救済
前述のように、行政指導は(法律行為ではなく)事実行為のため、処分性が認められないので、このあと学習する行政事件訴訟の抗告訴訟、つまり、行政の処分が違法であると争うことができないのが原則です。
もっとも、行き過ぎた行政指導は違法とされます。
判例を確認しましょう。
武蔵野マンション事件
武蔵野市は、昭和40年代、マンション建設が相次ぎ、日照障害、工事騒音等の問題が生じていました。市長は、市民の生活環境を守るため、指導要綱を制定し、マンションの建設事業者に対して、開発負担金を要求しました。そこで、事業者は、行政指導が違法な公権力の行使であるとして、国家賠償請求訴訟を提起しました。
判例は、まず、「行政指導として教育施設の充実に充てるために事業主に対して寄付金の納付を求めること自体は,強制にわたるなど事業主の任意性を損うことがない限り,違法ということはできない。」として、寄付金の納付を求めること自体は違法ではないとしました。
しかし、「Y[武蔵野市]がX[事業者]に対し指導要綱に基づいて教育施設負担金の納付を求めた行為も,Yの担当者が教育施設負担金の減免等の懇請に対し前例がないとして拒絶した態度とあいまって,Xに対し,指導要綱所定の教育施設負担金を納付しなければ,水道の給水契約の締結及び下水道の使用を拒絶されると考えさせるに十分なものであって,マンションを建築しようとする以上右行政指導に従うことを余儀なくさせるものであり,Xに教育施設負担金の納付を事実上強制しようとしたものということができる。指導要綱に基づく行政指導が,Y市民の生活環境をいわゆる乱開発から守ることを目的とするものであり,多くのY市民の支持を受けていたことなどを考慮しても,右行為は,本来任意に寄付金の納付を求めるべき行政指導の限度を超えるものであり,違法な公権力の行使であるといわざるを得ない。」として、国家賠償請求を認めました(最判平5.2.18)。
