行政法の行政上の義務履行確保から代執行について学習します。
代執行とは
代執行とは、他人が代わってなすことができる代替的作為義務について、これを履行しない義務者に代わって行政庁が行い、その費用を義務者から徴収する制度をいいます(櫻井=橋本168頁)。
文字通り、行政が義務者の代わりに執行すると考えるとわかりやすいと思います。たとえば、いわゆるごみ屋敷のごみを撤去するなどが代執行にあたります。
行政上の義務の履行確保については、行政代執行法という法律があるのでみていきましょう。
行政上の義務の履行確保について、原則として行政代執行が適用されます。つまり、行政上の義務の履行確保については、代執行が原則であるということです。
過去問:R1-8、R5-26
代執行について規定しています。
よく過去問で「行政代執行法は、行政強制の規定を条例で定めることも明文で許容している。」といった内容の出題がされていて、ここの解説がわかりにくいと思うので補足します。
まず、1条は「行政上の義務の履行確保に関しては、別に法律で定めるものを除いては、この法律の定めるところによる」と規定しています。つまり、行政上の義務の履行確保については、「別に法律で定めるもの」を除いて、行政代執行法が適用されるということです。
もっとも、「別に法律で定める」場合は、その法律に従います。たとえば、国税徴収法などがあげられます。このとき、「別に法律で定める」とあるので、あくまで「法律」で定めることができるのであって、「規則」や「条例」などで行政上の義務の履行確保の方法を定めることはできません。
その根拠として、2条の冒頭を見てみましょう。
2条は、「法律(法律の委任に基く命令、規則及び条例を含む。以下同じ。)」とあります。
ここの「法律」には、「法律」だけでなく、法律の委任に基づく「命令」「規則」「条例」が含まれます。
2条に「法律」かっこ書き「以下同じ」とあるということは、1条の「法律」には、命令や規則、条例が含まれないことです。もし、1条の法律にこれらが含まれるのだとしたら、1条の「法律」にかっこ書きがついているはずです。
また、1条に「条例」等が入らないのに、2条に「条例」等が入るというのもわかりにくいと思います。
1条は、行政上の義務の履行確保に関しては、原則として行政代執行法が適用されることについて定めています。前述のように、条例などで行政上の義務の履行確保の方法を定めることはできないということです。
2条は、法律や条例により義務を命ぜられた行為について義務者が履行しない場合は代執行をすることができることについて定めています。つまり、義務自体は条例で定めることはできるということです。たとえば、駅前に自転車を放置してはいけないなどです。条例により自転車を放置してはいけないという義務を義務者が履行しない場合は、代執行として自転車を撤去することができます。
1条はあくまで行政上の義務の履行確保の手段については「法律」で定める必要があること、そして、原則として代執行であること、2条は義務を命じるのは法律だけでなく、規則や命令、条例でもできることについて定めています。
行政上の義務履行確保でわかりにくい部分だと思うので補足しました。
条文に戻りましょう。
前条の規定による処分(代執行)をなすには、相当の履行期限を定め、その期限までに履行がなされないときは、代執行をなすべき旨を、予め文書で戒告しなければならない(3条1項)。
義務者が、前項の戒告を受けて、指定の期限までにその義務を履行しないときは、当該行政庁は、代執行令書をもつて、代執行をなすべき時期、代執行のために派遣する執行責任者の氏名及び代執行に要する費用の概算による見積額を義務者に通知する(3条2項)。
非常の場合又は危険切迫の場合において、当該行為の急速な実施について緊急の必要があり、前2項に規定する手続をとる暇がないときは、その手続を経ないで代執行をすることができる(3条3項)。
まず、代執行をなすには、相当の履行期限を定め、期限までに履行がなされいときは代執行をなすべき旨を文書にて戒告します。次に、義務者が指定の期限までに義務を履行しないときは、代執行をなすべき時期等を通知します。
もっとも、非常の場合や危険切迫の場合、緊急の必要があり、戒告や通知の手続をする暇がないときは、手続を経ないで代執行をすることができます。
執行責任者は、証票を携帯し、要求があるときは呈示する必要があります。
代執行に要した費用の徴収については、義務者に納付を命じます。
代執行に要した費用は、国税滞納処分の方法で徴収することができます。
代執行は、行政上の義務履行確保の中心となる手段なので、行政代執行法を中心におさえるようにしましょう。
