行政法の行政上の義務履行確保から執行罰について学習します。
執行罰とは
執行罰とは、義務者に自ら義務を履行させるため、あらかじめ義務不履行の場合には過料を課すことを予告するとともに、義務不履行の場合にはそのつど過料を徴収することによって、義務の履行を促す間接強制の方法をいいます(櫻井=橋本177頁)。
執行罰は、現在、砂防法36条で規定されているのみです。
基本書でも「執行罰は今はほとんどない」「砂防法だけ」といった断片的な情報で具体的なイメージがしにくいと思うので、実際に条文を見てみましょう。
第36条 私人ニ於テ此ノ法律若ハ此ノ法律ニ基キテ発スル命令ニ依ル義務ヲ怠ルトキハ国土交通大臣若ハ都道府県知事ハ一定ノ期限ヲ示シ若シ期限内ニ履行セサルトキ若ハ之ヲ履行スルモ不充分ナルトキハ五百円以内ニ於テ指定シタル過料ニ処スルコトヲ予告シテ其ノ履行ヲ命スルコトヲ得
現代の言葉に直すと次のようになります。
「私人においてこの法律もしくはこの法律にもどづいて発する命令による義務を怠るときは、国土交通大臣もしくは都道府県知事は一定の期限を示し、もし期限内に履行せざるときもしくはこれを履行するも不充分なるときは500円以内において指定したる過料に処することを予告してその履行を命ずることができる」
砂防法(さぼうほう)は、砂防施設等(川幅を広くし、流れてきた土砂を一時的に貯める施設)に関する事項を定めた法律で、砂防施設等を要する土地のために一定の行為を禁止または制限しています。
そもそも、なぜこのような法律をもって規制する必要があるのかというと、かつて日本は乱伐によって水害が多発していたため、伐採や開墾を抑制する必要があったからです。そこで、砂防法が可決され(明治30年)、伐採等の行為を禁止または制限し、守らないものは過料に処すことになりました。
執行罰は、義務不履行の場合にはその「つど」過料を徴収します。
そこで、憲法39条後段が「同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。」と規定しているので、二重処罰の禁止について定める39条後段に反しないかが問題となりますが、執行罰は刑罰ではないので、反復して執行罰を課しても39条後段には反しません。
