【行政法】行政裁量について、要件裁量と効果裁量、判断過程審査のまとめ

行政法総論
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行政法の行政裁量について学習します。

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行政裁量とは

行政裁量とは、法律が、行政機関に判断余地を与え、一定の活動の自由を認めている場合をいいます(櫻井=橋本100頁)。

法律による行政という原則を貫くと、行政についてあらゆることを法律で事前に定めておく必要があり、立法がそれに対応するのは現実的ではありません。また、行政も想定外の事態に対応できないという弊害が生じてしまいます。

そこで、行政機関に、一定の活動の自由が認められています。もっとも、行政裁量が広く認められてしまうと、恣意的な行政活動が行われるため、適切にコントロールすることが必要になります。行政裁量では、行政裁量にはどのようなものがあるか、そして、行政裁量はどこまで認められるのかを学習します。

要件裁量と効果裁量

行政裁量は、①要件裁量と②効果裁量の2つをおさえます。

①要件裁量とは、条文を適用するにあたっての裁量のことをいいます。②効果裁量とは、どのような効果を発生させるかについての裁量をいいます。

たとえば、国家公務員法82条1項3号は、「国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合」、「当該職員に対し、懲戒処分として、免職、停職、減給又は戒告の処分をすることができる。」と規定しています。このうち、「国民全体の奉仕者たるふさわしくない非行のあった場合」に当たるかどうかの裁量が要件裁量にあたります。そして、「免職、停職、減給又は戒告の処分」のうちどれを選択するかが効果裁量にあたります。

要件裁量と効果裁量について、判例を確認しておきましょう。

神戸税関事件

神戸税関の職員Xらは、訴外職員に対する懲戒処分についての抗議活動や勤務時間内の職場集会などにおいて指導的な役割を果たしたとし、国家公務員法に基づき、懲戒免職処分されました。そこで、Xらは、懲戒免職処分が懲戒権の裁量の範囲を超えたものとして、処分の無効確認および取消しを求めて出訴しました。

判例は、「国公法に定められた懲戒事由がある場合に,懲戒処分を行うかどうか,懲戒処分を行うときにいかなる処分を選ぶかは,懲戒権者の裁量に任されているものと解すべきである。もとより,右の裁量は,恣意にわたることを得ないものであることは当然であるが,懲戒権者が右の裁量権の行使としてした懲戒処分は,それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し,これを濫用したと認められる場合でない限り,その裁量権の範囲内にあるものとして,違法とならないものというべきである」としました(最判昭52.12.20)。

なお、今は要件裁量と効果裁量についてなので、具体的な司法審査の方法については、ここでは省略します。

行政裁量の司法審査

裁判所は、行政裁量について司法審査をする役割が与えられています。詳しくは、行政救済法で学習しますが、行政事件訴訟法30条は「行政庁の裁量処分については、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつた場合に限り、裁判所は、その処分を取り消すことができる。」と定めています。

裁判所による司法審査として、まず、①重大な事実誤認、②目的違反、③信義則違反、④比例原則違反、⑤平等原則違反などの点を考慮します。これらは、行政行為の結果に着目したものです。

次に、これらに加えて、行政行為の判断形成過程に着目して、司法審査を行う判断過程審査があります。判断過程審査では、考慮すべきでない事項を考慮したか(他事考慮)、考慮すべき事項を考慮しなかったか(考慮不尽)などの点を考慮します。

本試験では、さまざまな判例から行政裁量の範囲をこえ又はその濫用があるかどうかが問われます。

以下、行政裁量の司法審査について、重要な判例をみていきましょう。

伊方原発訴訟

四国電力の原子炉設置許可申請に対し、内閣総理大臣が許可処分をしました。これに対し、周辺住民であるXらは、本件原子炉の安全審査には違法な点があるとして、原子炉設置許可処分の取消しを求めて出訴しました。

判例は、「原子炉施設の安全性に関する判断の適否が争われる原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理,判断は,原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の専門技術的な調査審議及び判断を基にしてされた被告行政庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきであって,現在の科学技術水準に照らし,右調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点があり,あるいは当該原子炉施設が右の具体的審査基準に適合するとした原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があり,被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には,被告行政庁の右判断に不合理な点があるものとして,右判断に基づく原子炉設置許可処分は違法と解すべきである」として、審査基準を示しました(最判平4.10.29)。

剣道実技拒否事件

神戸市立工業高等専門学校(以下「神戸高専」)に入学した「エホバの証人」の信者であるXは、宗教的信条から剣道実技を拒否したため、原級留置・退学処分を受けました。そこで、Xは、当該処分は違法なものとして訴えを提起しました。

判例は、まず、「原級留置処分又は退学処分を行うかどうかの判断は,校長の合理的な教育的裁量にゆだねられるべきものであり,裁判所がその処分の適否を審査するに当たっては,校長と同一の立場に立って当該処分をすべきであったかどうか等について判断し,その結果と当該処分とを比較してその適否,軽重等を論ずべきものではなく,校長の裁量権の行使としての処分が,全く事実の基礎を欠くか又は社会観念上著しく妥当を欠き,裁量権の範囲を超え又は裁量権を濫用してされたと認められる場合に限り,違法である」として、審査基準を示しました。

そして、「Y(校長)の措置は,考慮すべき事項を考慮しておらず,又は考慮された事実に対する評価が明白に合理性を欠き,その結果,社会観念上著しく妥当を欠く処分をしたものと評するほかはなく,本件各処分は,裁量権の範囲を超える違法なものといわざるを得ない」として、違法としました(最判平8.3.8)。

小田急高架訴訟

東京都が、小田急線の高架化事業等を建設大臣に対して申請したところ、建設大臣は事業認可を行いました。これに対し、沿線住民Xらが、事業方式の選定に違法があるなどと主張し、事業認可の取消訴訟を提起しました。

判例は、まず、「都市施設の規模,配置等に関する事項を定めるに当たっては,当該都市施設に関する諸般の事情を総合的に考慮した上で,政策的,技術的な見地から判断することが不可欠であるといわざるを得ない。そうすると,このような判断は,これを決定する行政庁の広範な裁量にゆだねられている」として、行政庁の裁量を認めました。

次に、「裁判所が都市施設に関する都市計画の決定又は変更の内容の適否を審査するに当たっては,当該決定又は変更が裁量権の行使としてされたことを前提として,[①]その基礎とされた重要な事実に誤認があること等により重要な事実の基礎を欠くこととなる場合,又は,[②]事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと,判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等によりその内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限り,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となるとすべきものと解するのが相当である」として、司法審査の基準をしました(最判平18.11.2)。

SOMEYA, M.

東京都生まれ。沖縄県在住。主に行政書士試験対策について発信しているブログです。【好き】沖縄料理・ちゅらさん・Cocco・龍が如く3

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