民法について学習します。民法は、択一式9問、記述式2問出題される行政書士試験の主要科目のひとつです。また、記述式問題で出題されることから、問題の正誤がわかるだけでなく、記述するだけの正確な理解が求められます。
民法は、全5編で構成されています。
- 第1編 総則
- 第2編 物権
- 第3編 債権
- 第4編 親族
- 第5編 相続
このうち、総則2問、物権2問、債権4問、親族・相続から1問出題される傾向があります。
民法の学習は、基本書がぶ厚い、民法典とはこういうものだという前提が長く、なかなか条文に入らない(学問としては重要だと思いますが)、どこが条文かわかりにくい、それにもかかわらず問題の解答には根拠条文が書かれており、わかって当然のように扱われる、そんな経験をしてきた方も多いと思います。ここでは、あくまで行政書士試験対策として、条文・判例を中心に学習していきましょう。
第1編「総則」は、全7章で構成されています。
- 第1章 通則
- 第2章 人
- 第3章 法人
- 第4章 物
- 第5章 法律行為
- 第6章 期間の計算
- 第7章 時効
総則は、民法すべてに共通することを定めています。今回は、総則のうち、第1章の「通則」について見ていきましょう。
私権は、公共の福祉に適合しなければならない(1条1項)。
権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない(1条2項)。
権利の濫用は、これを許さない(1条3項)。
1項は、権利の社会性・公共性を宣言したものと解されています。
2項は、信義誠実の原則(信義則)について定めたものです。
3項は、権利濫用の禁止について定めたものです。権利濫用の禁止は、宇奈月温泉事件をおさえておきましょう。宇奈月温泉は、富山県にある温泉です。温泉のお湯は、約7.5kmの引湯管によって引いていました。この引湯管の一部(2坪ほど)が、他人の土地をかすめていたことを知ったXが、このかすめている土地を買い受け、温泉を経営するYに対して、引湯管の撤去または土地を買い取ることを要求したというのが事実の概要です。
判例は、「如上(じょじょう)ノ行為ハ全体ニ於テ専ラ不当ナル利益ノ掴得(かくとく)ヲ目的トシ所有権ヲ以テ其ノ具ニ供スルニ帰スルモノナレハ社会観念上所有権ノ目的ニ違背シ其ノ機能トシテ許サルヘキ範囲ヲ超脱スルモノニシテ 権利ノ濫用ニ外ナラス」としました(大判昭10.10.5)。つまり、権利の濫用は許されないということです。