【行政不服審査法】裁決について、却下・棄却・事情判決・認容のまとめ

行政不服審査法
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審査庁は、行政不服審査会等から諮問に対する答申を受けたときは、遅滞なく裁決をしなければなりません(行政不服審査法44条)。ここでは、裁決の却下、棄却、認容について解説します。



処分についての審査請求の却下または棄却

処分についての審査請求の却下または棄却

処分についての審査請求が法定の期間経過後にされたものである場合、その他不適法である場合には、審査庁は、裁決で、当該審査請求を却下します(45条1項)。処分についての審査請求が理由がない場合には、審査庁は、裁決で、当該審査請求を棄却します(45条2項)。

却下と棄却については、このあとの行政事件訴訟法でも出てくるので整理しておきましょう。「却下」というのは、いわゆる門前払いです。前述のように、審査請求が法定の期間経過後にされたなど不適法である場合は、審査をする前の段階で却下、つまり門前払いされてしまいます。次に「棄却」は、審査はされたけれど理由がない、つまり処分が違法・不当ではない場合にされるものです。

本試験では、却下と棄却の違いが理解できているかが問われます。

処分についての審査請求が不適法である場合や、審査請求が理由がない場合には、審査庁は、裁決で当該審査請求を却下するが、このような裁決には理由を記載しなければならない。

(平28-問16-1)

正解:✕

審査請求に係る処分が違法または不当ではあるが、これを取り消すことにより公の利益に著しい障害を生ずる場合においては、審査庁は、審査請求を棄却することができます(45条3項前段)。

本来、処分が違法または不当である場合は、審査請求を認容する必要がありますが、処分を取り消すことによって公の利益に著しい障害を生ずる場合、審査請求人の受ける不利益などを考慮した上で、審査庁は審査請求を棄却することができるということです。これを事情裁決といいます。

この場合には、審査庁は、裁決の主文で、当該処分が違法または不当であることを宣言しなければなりません(45条3項後段)。

処分についての審査請求の認容

処分についての審査請求の認容

処分についての審査請求が理由がある場合には、審査庁は、裁決で、当該処分の全部もしくは一部を取り消し、またはこれを変更します(46条1項本文)。ただし、審査庁が処分庁の上級行政庁または処分庁のいずれでもない場合には、当該処分を変更することはできません(46条1項但書)。

認容については、審査庁によってできることが異なるので、まとめてみましょう。

上級行政庁 処分庁 その他
取り消し
変更

処分(例:営業停止処分)の全部または一部を取り消す場合において、審査庁が処分庁の上級行政庁のときは、処分庁に対し、処分(例:営業停止処分を取り消す処分)をすべき旨を命じます。上級行政庁が審査をした場合は、処分庁に「処分をしなさい」と命ずるということです。審査庁が処分庁のときは、処分をします。処分庁自身が審査をした場合は、自分で処分すればいいということです。

ただし、審査庁が「上級行政庁」「処分庁」のいずれでもない場合は、処分を変更することができません。上級行政庁でなければ指揮監督権がなく、処分庁でなければ処分権はないからです。

次は、事実行為です。処分は、「申請に対する処分」や「不利益処分」などが該当します。事実行為は処分には該当しないもの、たとえば「行政指導」などを想像するとわかりやすいと思います。

事実上の行為についての審査請求が理由がある場合には、審査庁は、裁決で、当該事実上の行為が違法または不当である旨を宣言するとともに、一定の措置をとります(47条本文)。ただし、審査庁が処分庁の上級行政庁以外の審査庁である場合には、当該事実上の行為を変更すべき旨を命ずることはできません(47条但書)。

上級行政庁 処分庁 その他
撤廃
変更

事実上の行為の全部または一部を撤廃する場合において、審査庁が処分庁の上級行政庁のときは、処分庁に対し、事実行為の撤廃もしくは変更を命じます。審査庁が処分庁のときは、撤廃または変更します。その他のときは、撤廃を命ずることができます。変更はできません。

処分のときも事実上の行為のときも、ポイントは、その他の行政庁のときは変更を命ずることができないという点です。本試験でもここが狙われます。

審査庁は、処分庁の上級行政庁または処分庁でなくとも、審査請求に対する認容裁決によって処分を変更することができるが、審査請求人の不利益に処分を変更することは許されない。

(令5-問15-4)

正解:✕

不利益変更の禁止

不利益変更の禁止

審査庁は、審査請求人の不利益に処分を変更し、または事実上の行為を変更すべき旨を命じ、もしくはこれを変更することはできません(48条)。

審査請求人が処分に不服があって審査請求を申し立てているのに、それよりも不利益な処分をしてはいけないということです。たとえば、飲食店が3日間の営業停止処分を受けたために処分を取り消す審査請求をした場合、審査庁が7日間の営業停止処分をすることはできません。

不利益変更の禁止は、本試験でも頻出論点です。

処分についての審査請求に理由があり、当該処分を変更する裁決をすることができる場合であっても、審査請求人の不利益に当該処分を変更することはできない。

(令3-問16-ウ)

正解:◯

不作為についての審査請求の裁決

不作為についての審査請求の裁決

不作為についての審査請求が、申請から相当の期間が経過しないでされたものである場合、その他不適法である場合には、審査庁は、裁決で、当該審査請求を却下します(49条1項)。不作為についての審査請求が理由がない場合には、審査庁は、裁決で、当該審査請求を棄却します(49条2項)。

不作為とは、行為をしないことをいいます。申請から相当の期間が経過しない間に審査請求がされた場合は、まだ不作為かどうかわからないため、審査請求は却下されます。かんたんに言えば、審査請求をしないでもう少し待ちましょうということです。理由がない場合は、棄却します。

不作為についての審査請求が理由がある場合には、審査庁は、裁決で、当該不作為が違法または不当である旨を宣言します(49条3項前段)。審査庁は、当該申請に対して一定の処分をすべきものと認めるときは、次の措置をとります(49条3項後段)。

審査庁が不作為庁の場合、処分をします。審査庁が不作為庁の上級行政庁である場合、不作為庁に対し、処分をすべき旨を命じます。

本試験では、不作為について、どのようなときに却下や棄却をするのかが問われます。

不作為についての審査請求が当該不作為に係る処分についての申請から相当の期間が経過しないでされたものである場合、審査庁は、裁決で、当該審査請求を棄却する。

(令2-問16-ア)

正解:✕

裁決の方式

裁決の方式

裁決は、①主文、②事案の概要、③審理関係人の主張の要旨、④理由を記載し、審査庁が記名押印した裁決書によりしなければなりません(50条1項)。

行政不服審査会等への諮問を要しない場合には、裁決書には、審理員意見書を添付しなければなりません(50条2項)。

審査庁は、再審査請求をすることができる裁決をする場合には、裁決書に再審査請求をすることができる旨並びに再審査請求をすべき行政庁及び再審査請求期間を記載して、これらを教示しなければなりません(50条3項)。

裁決の効力発生

裁決の効力発生

裁決は、審査請求人に送達された時に、その効力を生じます(51条1項)。

裁決の送達は、送達を受けるべき者に裁決書の謄本を送付することによってします(51条2項)。

審査庁は、裁決書の謄本を参加人及び処分庁等に送付しなければなりません(51条4項)。

裁決の拘束力

裁決の拘束力

裁決は、関係行政庁拘束します(52条1項)。これにより、関係行政庁は、同一の条件の下において同一の処分をすることができなくなります。

SOMEYA, M.

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東京都生まれ。沖縄県在住。主に行政書士試験対策について発信しているブログです。【好き】沖縄料理・ちゅらさん・Cocco・龍が如く3

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