【憲法】生存権について,朝日訴訟・堀木訴訟など判例まとめ

憲法
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憲法25条は、生存権について規定しています。

第25条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
② 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

試験対策として,朝日訴訟などの判例を押さえておきましょう。



朝日訴訟

Xは、兄から扶養料を受けるようになったことにより、市からの生活扶助を打ち切られたため、生活保護法の規定する「健康で文化的な最低限度の生活水準を維持するにたりない違法なものであるとして、取消しを求める訴訟を提起しました。

生活保護法の規定に基づき要保護者または被保護者が国から生活保護を受けるのは、単なる国の恩恵ないし社会政策の実施に伴う反射的利益ではなく、法的権利であつて、保護受給権とも称すべきものと解すべきである。

しかし、この権利は、被保護者自身の最低限度の生活を維持するために当該個人に与えられた一身専属の権利であつて、他にこれを譲渡し得ないし(五九条参照)、相続の対象ともなり得ないというべきである。また、被保護者の生存中の扶助ですでに遅滞にあるものの給付を求める権利についても、医療扶助の場合はもちろんのこと、金銭給付を内容とする生活扶助の場合でも、それは当該被保護者の最低限度の生活の需要を満たすことを目的とするものであつて、法の予定する目的以外に流用することを許さないものであるから、当該被保護者の死亡によつて当然消滅し、相続の対象となり得ない、と解するのが相当である。(中略)

憲法二五条一項は、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と規定している。この規定は、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るように国政を運営すべきことを国の責務として宣言したにとどまり、直接個々の国民に対して具体的権利を賦与したものではない。具体的権利としては、憲法の規定の趣旨を実現するために制定された生活保護法によつて、はじめて与えられているというべきである。(中略)

健康で文化的な最低限度の生活なるものは、抽象的な相対的概念であり、その具体的内容は、文化の発達、国民経済の進展に伴つて向上するのはもとより、多数の不確定的要素を綜合考量してはじめて決定できるものである。

したがつて、何が健康で文化的な最低限度の生活であるかの認定判断は、いちおう、厚生大臣の合目的的な裁量に委されており、その判断は、当不当の問題として政府の政治責任が問われることはあつても、直ちに違法の問題を生ずることはない。ただ、現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定する等憲法および生活保護法の趣旨・目的に反し、法律によつて与えられた裁量権の限界をこえた場合または裁量権を濫用した場合には、違法な行為として司法審査の対象となることをまぬかれない。

最判昭42.5.24

判例のポイントとして、ひとつめは、生活保護受給権は、一身専属の権利であって、譲渡の対象になったり相続の対象にならないという点です。

ふたつめは、25条1項の規定は、国の責務として宣言したにとどまり、直接国民に対して具体的な権利を付与したものではないという点です。具体的な権利は、生活保護法によって与えられています。また、「健康で文化的な最低限度の生活」であるかは、厚生大臣裁量に委ねられており、もし不当であったとしても、ただちに違法の問題が生ずることはないとしています。

堀木訴訟

視力障害者として障害福祉年金を受給していたXは、児童扶養手当の認定を請求したところ、障害福祉年金を受給していることを理由に棄却されたため、処分の取消しを求める訴訟を提起しました。

「健康で文化的な最低限度の生活」なるものは、きわめて抽象的・相対的な概念であつて、その具体的内容は、その時々における文化の発達の程度、経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであるとともに、右規定を現実の立法として具体化するに当たつては、国の財政事情を無視することができず、また、多方面にわたる複雑多様な、しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである。したがつて、憲法二五条の規定の趣旨にこたえて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量にゆだねられており、それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるをえないような場合を除き、裁判所が審査判断するのに適しない事柄であるといわなければならない。

最判昭57.7.7

判例は、「健康で文化的な最低限度の生活」は、抽象的・相対的な概念であって、その具体的内容は、その時々における文化の発達の程度、経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであるとしています。そして、立法するに当たっては、国の財政事情を無視することができず、また、高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものであるとしています。結論として、不合理な立法ではないとされました。

朝日訴訟と堀木訴訟は、どちらがどちらだったかがわからなくなりやすい判例です。判例の事案を逆に出題するという引っかけ方はしないと思いますが、エピソード記憶の方が定着しやすいと思うので、事案を読んで、どちらがどのような問題があったかを整理しておくようにするのをおすすめします。

SOMEYA, M.

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東京都生まれ。沖縄県在住。主に行政書士試験対策について発信しているブログです。【好き】沖縄料理・ちゅらさん・Cocco・龍が如く3

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