憲法18条は、奴隷的拘束からの自由が定められ、31条以降では、人身の自由について定めています。ざっくり人権の後半部分を占めていることになります(41条以降は統治分野です)。
試験対策としては、表現の自由ほど判例がある部分ではないので、まずは条文を読んでおき、重要判例を押さえておくのをおすすめします。
第三者所有物没収事件
31条では、「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」として、適正手続の保障が規定されています。
貨物の密輸出を企てた被告人の没収された貨物について、第三者のものであったために、争われたものです。
第三者の所有物を没収する場合において、その没収に関して当該所有者に対し、何ら告知、弁解、防禦の機会を与えることなく、その所有権を奪うことは、著しく不合理であつて、憲法の容認しないところであるといわなければならない。(中略)
かかる没収の言渡を受けた被告人は、たとえ第三者の所有物に関する場合であつても、被告人に対する附加刑である以上、没収の裁判の違憲を理由として上告をなしうることは、当然である。
判例は、第三者の所有物を没収する場合において、所有者に対し、何ら告知、弁解、防御の機会を与えることなく、所有権を奪うことは、著しく不合理であって、憲法の容認しないところであるとしました。
成田新法事件
成田国際空港の安全確保に関する緊急措置法(成田新法)3条「国土交通大臣は、規制区域内に所在する建築物その他の工作物について、その工作物が次の各号に掲げる用に供され、又は供されるおそれがあると認めるときは、当該工作物の所有者、管理者又は占有者に対して、期限を付して、当該工作物をその用に供することを禁止することを命ずることができる。」が31条に反しないかが争われました。
一般に、行政手続は、刑事手続とその性質においておのずから差異があり、また、行政目的に応じて多種多様であるから、行政処分の相手方に事前の告知、弁解、防御の機会を与えるかどうかは、行政処分により制限を受ける権利利益の内容、性質、制限の程度、行政処分により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を総合較量して決定されるべきものであって、常に必ずそのような機会を与えることを必要とするものではないと解するのが相当である。
判例は、行政処分の相手方に事前の告知、弁解、防御の機会を与えるかどうかは、行政処分により制限を受ける権利利益の内容、性質、制限の程度、行政処分により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を総合較量して決定されるべきものであって、常に必ずそのような機会を与えることを必要とするものではないとしました。
成田新法事件については、行政法の「行政上の強制手段」の直接強制もおさらいしておきましょう。