【民法】弁済の充当の方法について、合意・指定・法定のまとめ

民法
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民法における「弁済の充当の方法」(488条、489条、490条、491条)を整理してまとめています。弁済の充当は整理をする機会が少なく、過去問を解く中で場当たり的な対応をしてしまいがちです。

まずは、弁済の充当には、①合意充当、②当事者の一方による指定充当、③法定充当があり、どのパターンに当てはまるか、(そのパターンにおいて)どのような順番で充当されるかを理解します。複雑そうに感じますが、これも普通(の損得)の感覚を持って臨めば理解できると思います。



弁済の充当の方法

弁済の充当の方法

前述のように、弁済の充当の方法は3つあります。

  • 合意充当(490条)
  • 当事者の一方による指定充当(488条1, 2, 3項)
  • 法定充当(488条4項)

条文は、488、489、490条の順番に並んでいますが、学習するときは、490条→489条→488条の順番に進めると理解しやすいと思います。

①合意充当

①合意充当

弁済をする者と弁済を受領する者との間に、弁済の充当の順序に関する合意があるときは、その順序に従って、弁済を充当します(490条)。

ふたりの間に合意があるのなら、それに従うということです。もし、合意がないのなら、ここで初めて「当事者の一方による指定充当」や「法定充当」の場合に進みます。

②当事者の一方による指定充当

②当事者の一方による指定充当

元本・利息・費用がある場合

債務者が1個または数個の債務について元本のほか利息・費用を支払うべき場合において、弁済をする者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、これを順次に費用利息元本に充当しなければなりません(489条1項)。

この条文だけでもややこしいのですが、次に出てくる488条を読むとさらにわかりにくくなるので、あらかじめどのようなことを言っているのかを整理しておきましょう。

債務は1個か数個どちらでもよいのですが、たとえばBさん(債務者)がAさん(債権者)に対して、1元本1,000万円、利息200万円、費用100万円の債務を負担している場合において、400万円を弁済として提供するなど債務の全部を消滅させるのに足りないときは(債務は全部で1300万円あります)、①費用100万円→②利息200万円→③元本1000万円のうち100万円に充当されるということです。

本条は「指定充当」というより「法定充当」に近いですが、処理の順番の便宜上、指定充当に分類しています。学習をするときは指定充当の例外のように捉えるとよいでしょう。

元本・利息・費用がなく、債務が数個の場合

債務者が同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担する場合において、弁済として提供した給付が全ての債務を消滅させるのに足りないとき(元本・利息・費用がある場合を除く)は、弁済をする者は、弁済を充当すべき債務を指定することができます(488条1項)。

さっきと何が違うのかわからない方も多いと思います。

たとえば、Bさん(債務者)が、Aさん(債権者)に対して、100万円、200万円、700万円などいくつか(数個)の債務を負担している場合において、300万円を弁済として提供するなどすべての債務を消滅させるのに足りないときは(債務は全部で1,000万円あります)、弁済を充当すべき債務を指定できるということです。

このとき、Bさんは、「100万円」と「200万円」の債務を指定して弁済することもできますし(残りは「700万円」の債務)、「100万円」と「700万円のうち200万円」の債務を指定して弁済することもできます(残りは「200万円」の債務、「700万円のうち500万円」の債務)。

「結局同じじゃないの?」と思うかもしれませんが、すでに弁済期に来ているものは利息が発生することも考えられるので、そこに指定充当の意義があります。

弁済をする者が指定しないとき

弁済をする者が指定をしないときは、弁済を受領する者は、その弁済を充当すべき債務を指定することができます(488条2項本文)。ただし、弁済をする者がその充当に対して直ちに異議を述べたときは、その充当は無効になり、次の法定に進みます(488条2項但書)。

【1】弁済をする者が指定しない

【2】弁済を受領する者が指定できる

【3】弁済をする者が直ちに異議を述べたら無効

【4】法定充当

あくまで弁済をする者の意見(気持ち)が優先されるということです。

弁済の指定は、相手方に対する意思表示で行います(488条3項)。

③法定充当

③法定充当

弁済をする者、弁済を受領する者が指定をしないときは(弁済を受領する者が指定したときに、弁済をする者が直ちに異議を述べた場合も含みます)、次の順番に従って弁済を充当します(488条4項)。

  1. 弁済期にあるもの
  2. 債務者のために弁済の利益が多いもの
  3. 弁済期が先に到来するもの
  4. 各債務の額に応じて充当

一見複雑に見えますが、考えてみたら「普通」のことが多いはずです。

【法定1】まず、弁済期にあるものと弁済期にないものがある場合は、弁済期にあるものに先に充当します。弁済期にあるものは利息が発生してしまうからです。一応補足しておくと、「弁済期にある」というのは、「弁済期限がある」という意味ではなく、「弁済する時期に来ている」という意味です。

【法定2】次に、すべての債務が弁済期にある、または弁済期にない場合は、債務者のために弁済の利益が多いものに先に充当されます。たとえば高金利のものや担保付の債務です。

【法定3】そして、債務者のために弁済の利益が大きい場合は、弁済期が先に到来するものに先に充当されます。利益が同じでも先に弁済しておいた方が履行遅滞になる可能性が低くなります。

【法定4】最後に、弁済期も同じ場合は、各債務の額に応じて充当されます。

補足すると、法定充当は、あくまで合意充当、当事者の一方による指定充当がないときに使われるものです。全体の流れを見失わないように気をつけましょう。

まとめ

最後に弁済の充当の方法についてまとめておきましょう。

①合意充当

合意があれば、その順序に従います。

②当事者の一方による指定充当

元本のほかに利息・費用がある場合は、費用→利息→元本の順番に充当されます。次に、数個の債務がある場合は、弁済をする者は弁済を充当する債務を指定できます。指定がない場合、弁済を受領する者が指定できます(弁済をする者は異議を述べられます)。

③法定充当

指定がない場合、弁済をする者が意義を述べた場合、法定充当になります。

SOMEYA, M.

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東京都生まれ。沖縄県在住。主に行政書士試験対策について発信しているブログです。【好き】沖縄料理・ちゅらさん・Cocco・龍が如く3

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