行政手続法は、処分、行政指導、届出、命令等を定める手続に分けられています。
命令等とは、内閣または行政機関が定めるもので、法律に基づく命令、審査基準、処分基準、行政指導指針のことをいいます(2条8号)。
本試験では、命令等を定める手続について出題されます。ただ、最初から条文をひとつずつ覚えていこうとすると無機質で疲れてしまうので、全体的な流れを把握したあとは、過去問を見てどのような部分がどのくらいの深さで問われるのかを知って対策していくようにしましょう。
意見公募手続の全体の流れは、まず行政側で命令等を定めようという動きができます。次にどのような命令等を定めるか意見公募手続をします。そして、結果を公示します。
この全体の流れの中で、具体的に行政側がどのような手続をしなければならないのか、意見公募手続の期間はどのくらいなのか、何を公示しないといけないのかといったことを理解していきましょう。数字などたしかに覚えることもありますが、法律は必ずその裏側に趣旨・目的があります。どうして、このような手続をする必要があるのだろうというのを理解すると、暗記量が激減します。
さっそくですが、命令等を定める手続はどのようなものが対象かがよく問われます。さらにその中でも法的な拘束力をもたない行政指導指針については対象外とする誤りの選択肢が頻出です。
行政指導指針は、行政庁が任意に設定するものであり、また法的な拘束力を有するものではないため、行政指導指針を定めるに当たっては、意見公募手続を実施する必要はない。
(平30-問13-5)
正解:✕
命令等を定める場合の一般原則(38条)
命令等を定める機関(命令等制定機関)は、命令等を定めるにあたっては、当該命令等がこれを定める根拠となる法令の趣旨に適合するものとなるようにしなければなりません(38条1項)。
命令等制定機関は、命令等を定めた後においても、当該命令等の規定の実施状況、社会経済情勢の変化等を勘案し、必要に応じ、当該命令等の内容について検討を加え、その適正を確保するよう努めなければなりません(38条2項)。
意見公募手続(39条)
ここで、まず、意見公募手続の原則ルールについて定めています。
命令等制定機関は、命令等を定めようとする場合には、当該命令等の案及びこれに関連する資料をあらかじめ公示し、意見の提出先及び意見提出期間を定めて広く一般の意見を求めなければなりません(39条1項)。
公示する命令等の案は、具体的かつ明確な内容のものであって、かつ、当該命令等の題名及び当該命令等を定める根拠となる法令の条項が明示されたものでなければなりません(39条2項)。
意見提出期間は、公示の日から起算して30日以上でなければなりません(39条3項)。
意見公募手続の特例(40条)
そして、意見公募手続の例外について定めています。
命令等制定機関は、命令等を定めようとする場合において、30日以上の意見提出期間を定めることができないやむを得ない理由があるときは、30日を下回る意見提出期間を定めることができます(40条1項)。この場合、その理由を明らかにしなければなりません。
30日以上の意見提出期間を定めるのは、広く一般の意見を求める期間を確保するためです。もっとも、30日以上の意見提出期間を定めることができないやむを得ない理由があるとときは、30日を下回る意見提出期間を定めることができますが、そのときは理由を明らかにする必要があります。
命令等制定機関は、委員会等の議を経て命令等を定めようとする場合において、当該委員会等が意見公募手続に準じた手続を実施したときは、自ら意見公募手続を実施することを要しません(40条2項)。
本来、命令等を定めるときは、広く一般の意見を求める必要があります。しかし、委員会等の議を経て、つまり専門家たちによる委員会で意見公募手続と同じ手続をしたときは、意見公募手続を実施しなくてもよいということです。
本試験では、意見公募手続の原則と例外についての理解が問われます。原則は意見公募手続が必要ですが、例外として委員会で意見公募手続に準じた手続をしたときは、国民の意見を集めるという目的が達成できているので、意見公募手続を実施する必要はありません。
命令等制定機関は、命令等を定めようとする場合において、委員会等の議を経て命令等を定める場合であって、当該委員会等が意見公募手続に準じた手続を実施したときには、改めて意見公募手続を実施する必要はない。
(平30-問13-3)
正解:◯
意見公募手続の周知等(41条)
命令等制定機関は、意見公募手続を実施して命令等を定めるにあたっては、必要に応じ、当該意見公募手続の実施について周知するよう努めるとともに、当該意見公募手続の実施に関連する情報の提供に努めるものとしています(41条)。
こっそり意見公募手続をしては、目的が形骸化してしまうので、意見公募手続の実施について周知するよう努力義務が課せられています。地方公共団体のWebサイトを見ると、意見公募手続が実施されているので、お住まいの地方公共団体のWebサイトを見てみると印象に残りやすいと思います。
本試験では、意見公募手続の周知等の努力義務について問われています。なお、この問題は、申請に対する処分や不利益処分、行政指導などの手続における努力義務と義務規定が問われるものでした。
意見公募手続について、当該手続の実施について周知することおよび当該手続の実施に関連する情報を提供することは、命令等制定機関の努力義務にとどまり、義務とはされていない。
(平28-問12-5)
正解:◯
提出意見の考慮(42条)
命令等制定機関は、意見公募手続を実施して命令等を定める場合には、提出された当該命令等の案についての意見(提出意見)を十分に考慮しなければなりません(42条)。
意見公募手続をしても、それを無視しては意味がないので、提出意見を十分に考慮しなければならないとされています。ただ、あくまで「十分に考慮しなければならない」です。
本試験では、考慮について問われています。前半の考慮されなければならないまでは正しいですが、考慮されなかったときの個別通知については規定されていません。
意見公募手続において提出された意見は、当該命令等を定めるに際して十分に考慮されなければならず、考慮されなかった意見については、その理由が意見の提出者に個別に通知される。
(平27-問11-4)
正解:✕
結果の公示等(43条)
ここからがいよいよ公示です。
命令等制定機関は、意見公募手続を実施して命令等を定めた場合には、当該命令等の公布と同時期に、次に掲げる事項を公示しなければなりません(43条)。
①命令等の題名
②命令等の案の公示の日
③提出意見(提出意見がなかった場合にあっては、その旨)
④提出意見を考慮した結果及びその理由
命令等制定機関は、必要に応じ、提出意見に代えて、当該提出意見を整理または要約したものを公示することができます。この場合、公示の後遅滞なく、当該提出意見を当該命令等制定機関の事務所における備付けその他の適当な方法により公にしなければなりません(43条2項)。
命令等制定機関は、提出意見を公示しまたは公にすることにより第三者の利益を害するおそれがあるときは、当該提出意見の全部または一部を除くことができます(43条3項)。
命令等制定機関は、意見公募手続を実施したにもかかわらず命令等を定めないこととした場合には、その旨を速やかに公示しなければなりません(43条4項)。
命令等制定機関は、意見公募手続を実施しないで命令等を定めた場合には、当該命令等の公布と同時期に、次に掲げる事項を公示しなければなりません(43条5項)。
①命令等の題名及び趣旨
②意見公募手続を実施しなかった旨及びその理由
本試験では、「命令等を定めなかったときは公示する必要がない」「意見公募手続をしなかった理由を公示する必要がない」といった誤りの選択肢が多く出題されています。
命令等制定機関は、意見公募手続の実施後に命令等を定めるときには所定の事項を公示する必要があるが、意見公募手続の実施後に命令等を定めないこととした場合には、その旨につき特段の公示を行う必要はない。
(令3-問11-4)
正解:✕