ここでは、取締役について解説します。
まず、大きな目で会社法を見てみましょう。
- 第1編 総則
- 第2編 株式会社
- 第3編 持分会社
- 第4編 社債
- 第5編 組織変更、合併、会社分割、株式交換、株式移転、株式交付
- 第6編 外国会社
- 第7編 雑則
- 第8編 罰則
取締役について規定されているのは、第2編の「株式会社」です。
次に、「株式会社」の中を見てみましょう。
- 第1章 設立
- 第2章 株式
- 第3章 新株予約権
- 第4章 機関
- 第5章 計算等
- 第6章 定款の変更
- 第7章 事業の譲渡等
- 第8章 解散
- 第9章 清算
取締役が規定されているのは、第4章の「機関」です。機関とは、会社の意思決定または行為をする者として認められる会社の組織上の者のことです。この中で、株主会社の機関である株主総会や取締役、取締役会、会計参与、監査役などについて規定されています。
株主総会は、株式会社の組織や運営など株式会社に関する一切の事項について決めることができます(295条1項)。お金を出した人が会社について口を出す権利があるということです。ただ、組織や運営について決めても、実際に業務を執行する人がいなければ、会社は回りません。そこで、株式会社には、1人以上の取締役を置かなければならないとしています(326条1項)。
業務の執行
取締役は、定款に別段の定めがある場合を除き、株式会社の業務を執行します(348条1項)。
まずは、この原則を押さえましょう。会社法を勉強していくと、さまざまな機関が登場します。その中で、「取締役会設置会社の場合は〜」「公開会社の場合は〜」「大会社の場合は〜」のように、機関設計ごとに決議機関が変わったり、設置すべき機関が異なってきます。しかし、これらを最初から記憶するのは難しく、また大切な基本が抜けてしまうおそれもあります。
株式会社の設立において、基本となる発起設立で大きな流れを理解したあとに募集設立を見てきたように、機関も基本となる会社、つまり株主総会と取締役がいるだけの会社から見ていきましょう。あとの機関は、デコレーションです。取締役会設置会社は、意思決定機関が会社の内部に入っているから、お目付け役の監査役がいないといけないとか、大会社は債権者が多いから、会計のプロである会計監査人を置かなければいけないとかは、あとからでも十分間に合います。
まずは、取締役は、株式会社の業務を執行するという基本を押さえます。
取締役が2人以上ある場合には、株式会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、取締役の過半数をもって決定します(348条2項)。
取締役が複数人いるときは、会社の方針がバラバラになってしまわないように、取締役の過半数で会社の意思を統一させましょうということです。
株式会社の代表
取締役
取締役は、株式会社を代表します(349条1項本文)。
ここでも、取締役は、株式会社を代表するという基本を押さえます。代表取締役や取締役会などは一度横に置いておき、この基本を押さえることが大切です。条文もこれを「本文」に規定しています。つまり、こちらが原則ということです(例外の「但書」は後述しています)。
また、取締役が2人以上ある場合には、取締役は、各自、株式会社を代表します(349条2項)。
とにかく、取締役は株式会社を代表するというイメージを持つようにしましょう。取締役が複数人いる場合には、各自が株式会社を代表しますが、会社の意思決定がバラバラになっては困るので、前述したように、株式会社の業務は、取締役の過半数をもって決定するとされています。
代表取締役
しかし、取締役が2人以上いる場合は、全員が株式会社を代表するより、代表する者を決めた方がやりやすいこともあります。また、会社と取引する相手方のことを考えても、会社を代表する人が明確の方が取引しやすいということもあるでしょう。
そこで、株式会社は、①定款、②定款の定めに基づく取締役の互選、③株主総会の決議によって、代表取締役を定めることができます(349条3項、309条1項)。
ここで初めて代表取締役が登場します。取締役は、各自、株式会社を代表するのが原則だけれど、会社を代表する者を定めてもいいということです。
代表取締役を定めた場合は、株式会社を代表するのは代表取締役になります(349条1項但書)。
つまり、このときになって初めて、取締役は株式会社を代表する者ではなくなるということです。
代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有します(349条4項)。また、この権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができません(349条5項)。