2024年度の試験から、「行政書士の業務に関し必要な基礎知識」(従来の「一般知識」)について、「①行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令」「②一般知識」「③情報通信・個人情報保護」「④文章理解」の分野からそれぞれ1題以上出題されることになりました。
おそらく、これら4つの分野から3題ほどずつ出題されることが予想されます。
そして、「①行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令」の中で出題可能性が高いのが「行政書士法」です。隣接資格を見ると、たとえば、司法書士試験は司法書士法から1題出題されます。また、社労士試験は社会保険労務士法としての枠はありませんが、一般常識科目の中からほぼ必ず社会保険労務士法から1題出題されます。おそらく、行政書士法もこうなるのではないかと思います。
行政書士制度を定める法律は、条文数も少ないので、押さえておくのをおすすめします。
総則
目的
行政書士法は、行政書士の制度を定め、その業務の適正を図ることにより、行政に関する手続の円滑な実施に寄与するとともに国民の利便に資し、もって国民の権利利益の実現に資することを目的としています(1条)。
業務
行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、次に掲げる事務を業とすることができます(1条の2、1条の3)。ただし、他の法律においてその業務を行うことが制限されている事項については、業務をすることはできません。たとえば、司法書士の不動産登記業務などがあげられます。
- 官公署に提出する書類を提出する手続、聴聞または弁明の機会の付与の手続、その他の意見陳述のための手続において当該官公署に対してする行為について代理すること。
- 官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立ての手続について代理すること。
- 行政書士が作成することができる契約その他に関する書類を代理人として作成すること。
- 行政書士が作成することができる書類の作成について相談に応ずること。
1号は、書類を提出する業務です。
2号の不服申立ての手続については、特定行政書士に限り行うことができます(1条の3第2項)。
隣接資格の出題状況から考えると、研修の課程を修了した者(例:特定行政書士)だけができる業務は出題されやすいので、特定行政書士については押さえておくようにしましょう。
3号は、行政書士といって思い浮かべる業務です。建設業や風俗営業などの書類を提出するものなどです。書類の作成と合わせて、先ほどの1号の提出業務も行うことが多くあります。
4号は、これらの相談に応ずることです。
実務にならって流れをまとめると、書類の作成について相談に応じたり、書類を作成したり、書類を提出することができる、また、特定行政書士は不服申立ての手続ができるということです。
資格
行政書士になる資格を有するのは、次のいずれかに該当する者です(2条)。
- 行政書士試験に合格した者
- 弁護士となる資格を有する者弁理士となる資格を有する者
- 公認会計士となる資格を有する者
- 税理士となる資格を有する者
- 公務員として行政事務を担当した期間が通算して20年以上の者
欠格事由
次のいずれかに該当する者は、行政書士となることができません(2条の2)。
- 未成年者
- 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
- 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなってから3年を経過しない者
- 公務員で懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から3年を経過しない者
- 行政書士登録の取消しの処分を受け、当該処分の日から3年を経過しない者
- 行政書士業務の禁止の処分を受け、当該処分の日から3年を経過しない者
- 弁護士、公認会計士、弁理士、税理士、司法書士、土地家屋調査士、社会保険労務士の一定の懲戒処分を受けた者で、これらの処分を受けた日から3年を経過しない者
- 税理士法に掲げる処分を受けるべきであったことについて決定を受けた者で、当該決定を受けた日から3年を経過しない者
行政書士試験に合格した者でも、未成年者は行政書士になることはできません。
公務員、行政書士、弁護士などの士業で資格を取り消された者は、処分を受けた日から3年を経過しない者は行政書士になることはできません。この3年という期間は押さえておきましょう。
また、行政書士に関しては、登録の取消しの処分だけでなく、業務の禁止の処分でも3年間は行政書士になることができません。当該資格なので、他より厳しくなっていると考えるとよいでしょう。実際、毎月けっこうな数の行政書士が処分を受けていることに驚きます…。
登録
行政書士となるには、日本行政書士会連合会に備える行政書士名簿に住所、氏名、生年月日、事務所の名称及び所在地等の事項を登録することが必要です(6条1項)。
登録を受けようとする者は、日本行政書士会連合会に対し、その事務所の所在地の属する都道府県にある行政書士会を経由して、登録の申請をしなければなりません(6条の2第1項)。
行政書士会を経由して、日本行政書士会連合会に登録するという点を押さえましょう。
日本行政書士会連合会は、申請者が行政書士となる資格を有していない、または「心身の故障により行政書士の業務を行うことができない者」「行政書士の信用または品位を害するおそれがある者その他行政書士の職責に照らし行政書士としての適格性を欠く者」と認めたときは登録を拒否します(6条の2第2項)。
登録を拒否された者は、処分に不服があるときは、総務大臣に対して審査請求をすることができます(6条の3第1項)。申請をした日から3月を経過しても申請に対して何らの処分がされない場合には、登録を拒否されたものとして、総務大臣に対して審査請求をすることができます(6条の3第2項)。
行政書士の義務
行政書士は、業務を行うための事務所を設けなければなりません(8条1項)。
行政書士は、事務所を2以上設けてはいけません(8条2項)。
業務をするには事務所が必要であり、また事務所には士業の人が必ずいなくてはならないということから、2以上の事務所を設けることはできないようになっています。
行政書士は、帳簿を備え、帳簿閉鎖の時から2年間保存しなければなりません(9条)。
行政書士は、誠実にその業務を行なうとともに、行政書士の信用または品位を害するような行為をしてはなりません(10条)。
行政書士は、その事務所の見やすい場所に、その業務に関し受ける報酬の額を掲示しなければなりません(10条の2)。
行政書士は、正当な事由がある場合でなければ、依頼を拒むことができません(11条)。
このあたりの条文は、ひととおり目を通しておけば間違えることはないと思います。
行政書士法人
行政書士は、行政書士法人を設立することができます(13条の3)。
行政書士法人の社員は、行政書士でなければなりません(13条の5)。
行政書士法人は、主たる事務所の所在地において設立の登記をすることによって成立します(13条の9)。
罰則
懲戒
行政書士が、行政書士法等に違反したときまたは行政書士たるにふさわしくない重大な非行があったときは、都道府県知事は、当該行政書士に対し、次に掲げる処分をすることができます(14条)。
- 戒告
- 2年以内の業務の停止
- 業務の禁止
業務の停止期間が2年以内ということは押さえておきましょう。