行政法の行政行為の効力について学習します。行政行為の効力には、①公定力、②不可争力、③執行力、④不可変更力の4つがあります。それぞれどのようなものか確認しましょう。
①公定力
公定力とは、行政行為が違法であっても、直ちには無効とならず、それが取り消されない限り有効なものとして扱われる効力をいいます。判例は、「行政処分は、たとえ違法であっても、その違法が重大かつ明白で当該処分を当然無効とならしめるものと認むべき場合を除いては、適法に取り消されない限り完全にその効力を有する」としています(最判昭30.12.26)。処分に何らかの違法があるときは、取消訴訟を使うというイメージを持っておきましょう。
②不可争力
不可争力とは、一定期間を経過すると、私人の側から行政行為の効力を争うことができなくなる効力をいいます。行政行為の効力を早期に安定させる必要性から認められています。不可争力は、あくまで私人の側から効力を争うことができなくなるだけで、行政庁側が行政行為を取り消すことはできます。
③執行力
執行力とは、行政庁は行政行為の内容を自力で実現することのできる効力をいいます。行政目的の早期実現のために認められています。もっとも、自力執行力は強力のため、法律の根拠がある場合にのみ認められています。たとえば、行政代執行法、国税徴収法などがあります。
④不可変更力
不可変更力とは、行政庁は一度行った行政行為を自ら変更できない効力をいいます。これは審査請求の裁決などの行政行為にのみ認められており、紛争の蒸し返しを防止する機能を有します。たとえば、Xさんの言い分を聞いてXさんに有利な裁決をしたあと、Yさんの言い分を聞いてYさんに有利な裁決をしてしまうと両者が困ってしまうのを考えるとわかりやすいと思います。
先ほどの不可争力と混同してしまう方が多いと思います。基本的に、行政行為をした行政庁は、行政行為を取り消すことができます。そして、審査請求の裁決など紛争を解決する行政行為のみ不可変更力が認められます。
不可変更力について判例をみてみましょう。
ある村のA農地委員会が、X(原告)所有の農地の農地買収計画を決定しました。これに対し、Xは県のY(被告)農地委員会に訴願(現在でいうところの「審査請求」)したところ、YはXの訴願を認容しました。しかし、数ヶ月後、Aの再審議の陳情を受けたYが、裁決を取り消しました。そこで、Xが裁決の取消しを求めて訴えました。
判例は、「本件裁決のごときは、行政機関である上告人が実質的には裁判を行っているのであるが、行政機関がするのであるから行政処分に属するわけである。かかる性質を有する裁決は、他の一般行政処分とは異り、特別の規定がない限り、原判決のいうように裁決庁自らにおいて取消すことはできないと解するを相当とする」としました(最判昭29.1.21)。
X側からすると、農地買収されることになったので訴願をしてせっかく認容してもらったのに、また行政庁に意見を変えられたのでは困るといったものです。
それでは、実際に本試験ではどのように問われるかを確認しましょう。
旧自作農創設特別措置法に基づく農地買収計画の決定に対してなされた訴願を認容する裁決は、これを実質的に見れば、その本質は法律上の争訟を裁判するものであるが、それが処分である以上、他の一般的な処分と同様、裁決庁自らの判断で取り消すことを妨げない。(令2-問9-5)
正誤:☓
法律上の争訟を裁判するものでも「取り消すことを妨げない」というところが誤りです。出題者側も、ただ「できるか・できないか」の語尾を変えて問うのではなく、「どのようなときに不可変更力が認められるかわかっていますか?」という知識を聞いているのがわかります。
