行政法の行政行為について学習します。今回から行政作用法の中心となる行政行為に入ります。行政行為はもっともボリュームがあるので、①行政行為の種類、②行政行為の効力、③行政行為の瑕疵、④取消しと撤回、⑤附款の5回に分けていきます。今回は、行政行為とは何か、その種類など全体像についてみてみましょう。
行政行為とは
行政行為とは、行政庁が私人に対して公権力を行使する場面において、一方的行為としてなされるものをいいます(櫻井=橋本71頁)。行政行為は学問上の概念のため、試験対策としては、行政行為という言葉を抽象的に記憶するより、行政行為にはどのようなものがあるのかを具体的に理解記憶するのを推奨します。
また、基本書によっては、行政行為は「処分」と書かれていることもあります。もっとも、「処分」は判例で定義されているため(行政事件訴訟法で学習します)、ここでは、学問上の概念である「行政行為」を使って進めます。
行政行為の種類
行政行為は、大きく①法律行為的行政行為と②準法律行為的行政行為の2つに分けられます。
①法律行為的行政行為
まず、この「法律行為」という用語がわかりにくいと思います。法律行為は民法で学習するものですが、行政行為を具体的に理解する上で重要になるので、かんたんに解説します。法律行為とは、「法によって行為者が希望したとおりの法律効果が認められる行為」をいいます(有斐閣『法律用語辞典』)。そして、法律効果とは、「法律上の権利義務関係の変動(発生、変更、消滅)を生じさせること」をいいます(有斐閣『法律用語辞典』)。このことから、法律行為的行政行為とは、行政庁が希望したとおりの法律効果が認められる行為であることがわかります。
法律行為的行政行為は、さらに命令的行為と形成的行為に分けられます。
命令的行為
命令的行為とは、私人がもともと持っている自由を制限して、義務を課したり、反対にその義務を解除したりするものをいいます。命令的行為には、下命・禁止・許可・免除の4種類があります。
かんたんにいうと、下命は、「〜しなさい」というものです。課税処分などがあります。禁止は、「〜するな」というものです。営業禁止などがあります。許可は、「〜してもよい」というものです。営業許可などがあります。免除は、「〜しなくてもよい」というものです。納税義務の免除などがあります。
形成的行為
形成的行為とは、私人がもともと持っていない特別な権能を付与するものをいいます。形成的行為には、特許・認可・代理の3種類があります。
特許は、特別の能力を行政庁が私人に付与するものをいいます。外国人の帰化の許可などがあります。
ここで、補足します。行政行為は、法律上、「許可」となっていることが多いですが、学問上は、先ほどの命令的行為に出てきた許可、形成的行為の特許、認可のように異なるので注意しましょう。たとえば、外国人の帰化の許可は、学問上は「特許」に該当します。また、自動車の運転免許は、私人がもともと持っている自由を制限した上で、試験に合格したものが運転「してもよい」とされるので、学問上は「許可」に該当します。
認可は、私人相互間の法律行為を補充して完成させるものをいいます。農地の権利移転の許可などがあてはまります。農地は、国の食糧にかかわることであり、誰がその土地で農業を行うかが重要のため、当事者間で自由に売買契約をすることができません。農地の権利移転の許可を得ることで、売買契約という法律行為が完成します。
代理は、行政主体が代わって行うものです。民法の代理と同じように考えることができます。
②準法律行為的行政行為
次に、準法律行為的行政行為です。法律行為的行政行為は、行政庁が希望したとおりの法律効果が認められる行為でした。準法律行為的行政行為は、「準」という漢字が付いていることからわかるように、正確にはそれではないけれど、それに近いといったイメージを持っておきましょう。もっというと、英検の「準1級」は、1級ではないけれど、それに近い、準じたものと考えるとわかりやすいと思います。
準法律行為的とは、行政庁が希望しているわけではないと考えることができます。基本書だと、「効果意思は存在しない」といった表現がされます。効果意思とは、法律効果を生ずる事項を欲する意思のことをいいます(有斐閣『法律用語辞典』)。つまり、法律上の権利義務関係の変動(発生、変更、消滅)を生じさせることを欲する意思はなく、行政庁が単に判断等をした場合に、一定の効果が発生する行政行為といえます。
準法律行為的行政行為には、確認・公証・通知・受理の4種類があります。
試験対策上、準法律行為的行政行為の詳細については割愛します。
まとめ
行政行為についてみてきました。
まず、行政行為とは、「行政庁が私人に対して公権力を行使する場面において、一方的行為としてなされるもの」という点をおさえましょう。次に、行政行為は、①法律行為的行政行為と②準法律行為的行政行為の2つに分けられます。
法律行為的行政行為は、命令的行為と形成的行為に分けられ、命令的行為は、下命・禁止・許可・免除の4種類があります。形成的行為は、特許・認可・代理の3種類があります。法律行為的行政行為については、それぞれどのようなものかイメージできるようにしておきましょう。また、「許可」といっても、学問上は異なる場合がある点に注意します。
準法律行為的行政行為は、確認・公証・通知・受理の4種類があります。
