行政法の行政行為の瑕疵について学習します。行政行為の瑕疵とは、行政行為に法令違反がある場合(違法)や、公益目的に反する場合(不当)のことです。行政行為の瑕疵があった場合、どうなるかみていきましょう。
行政行為の瑕疵
行政行為は、大きく瑕疵があるものと瑕疵がないものに分けられます。そして、瑕疵があるものは、①重大かつ明白な瑕疵があるものと②重大かつ明白な瑕疵がないものに分けられます。判例は、重大かつ明白な瑕疵がある場合に、行政行為は当然に無効となるとしています(最大判昭31.7.18)。反対にいうと、重大かつ明白な瑕疵がない場合は、行政行為には公定力があるので、取り消されるまでは一応有効となります。ここは、行政行為の効力と結びつけて理解・記憶するようにしましょう。
違法性の承継
違法性の承継とは、先行の行政行為の瑕疵が、後行の行政行為の違法事由となることをいいます。一般には、行政行為の間では違法性が承継されないのが原則ですが、目的・効果の点で一連の過程として行われる行政行為の間では、違法性の承継が認められると考えられています。
たとえば、先行の行政行為の出訴期間(※行政事件訴訟法で学習します)が過ぎると、不可争力が発生するので、先行の行政行為を取消訴訟によって争うことができなくなりますが、後行の行政行為に違法性が承継されると原告が救済されることになります。
判例は、建物の建築について争われた事案において、「安全認定があっても,これを申請者以外の者に通知することは予定されておらず,建築確認があるまでは工事が行われることもないから,周辺住民等これを争おうとする者がその存在を速やかに知ることができるとは限らない。そうすると,安全認定について,その適否を争うための手続的保障がこれを争おうとする者に十分に与えられているというのは困難である。」として、後行行為の取消訴訟において、先行行為の瑕疵を争うことを認めました(最判平21.12.17)。
試験対策として、安全認定や建築確認について深追いすると大変なので、目的・効果の点で一連の過程として行われる行政行為の間では、違法性が承継されるという点をおさえておくにとどめておきましょう。
瑕疵の治癒・違法行為の転換
行政行為の瑕疵がある場合、原則として取り消されるべきですが、例外として瑕疵の治癒・違法行為の転換があります。行政行為を維持した方が効率的であり、私人側にも利益がある場合に認められます。
瑕疵の治癒とは、瑕疵ある行政行為がなされたが、事後的に瑕疵が追完される場合をいいます。もっとも、判例は、租税の更正処分の理由付記に不備があった場合、後日、審査請求のときに理由を明らかにしても、瑕疵は治癒されないとしています。理由として、「処分庁の判断の慎重,合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を相手方に知らせて不服申立の便宜を与えることを目的として更正に附記理由の記載を命じた前記法人税法の規定の趣旨にかんがみ,更正の付記理由には不備の違法があるものというべきである」ことをあげています(最判昭47.12.5)。
違法行為の転換とは、瑕疵ある行政行為を別の行政行為として見直すことで適法な行政行為となる場合をいいます。
瑕疵の治癒・違法行為の転換については、瑕疵のある行政行為は、原則として取り消されるべきである。例外として瑕疵の治癒・違法行為の転換という概念がある。もっとも、無制限に許されるものではないということについて、判例の理由をおさえておきましょう。
