行政法の行政契約について学習します。ここでは、行政契約とはどのようなものか、具体的な例と判例をおさえましょう。
行政契約とは
行政契約とは、行政主体が行政目的を達成するための締結する契約をいいます(櫻井=橋本121頁)。
行政作用法のうち、行政行為は、行政庁が私人に対して、一方的になされる行為であったのに対し、行政契約は対等の立場においてなされるというイメージをもつと、全体像がつかみやすくなります。このことから、たとえば、行政契約は、当事者の意思の合致によって成立するため、法律の根拠が不要になります。また、行政契約は、原則として民法の契約に関する規定が適用されます。
行政契約は、大きく①調達行政における契約、②侵害行政における契約、③給付行政における契約に分けられます。
①調達(準備)行政における契約
調達行政における契約とは、行政を遂行するにあたって必要な物的手段の調達・準備についての契約をいいます。たとえば、市役所で使う文房具やパソコンを購入することを考えるとわかりやすいと思います。なお、基本書によって、「調達行政」や「準備行政」と表記されますが、どちらも同じものだと考えて問題ありません。
②侵害行政における契約
侵害行政とは、主として市民の権利・自由を制約するような活動をいいます。たとえば、公害防止協定などが侵害行政における契約にあたります。企業が公害を発生させないように協定を結ぶことで、企業は権利・自由が制約されるということを考えるとわかりやすいと思います。
侵害行政における契約について、判例を確認しましょう。
X市は、産業廃棄物処分業者であるYとの間で締結した公害防止協定が定める使用期限が経過したとして、処分場の使用を差止める訴えを提起しました。
前提として、公害防止協定とは、地方公共団体と公害の発生原因となり得る事業を営む事業者とのあいだで交わされる取決めをいいます。公害防止協定は、法整備が十分にできていなかった1970年代に多くみられるもので、法の不備を補うものと考えるとわかりやすいと思います。もっとも、個人の自由を制限するには法律の根拠が必要であることから、協定には法的拘束力を持たないという考え方がありました。これを紳士協定説といいます。
そこで、このような期限条項を定める公害防止協定に法的拘束力が認められるかが争われました。
判例は、「処分業者が,公害防止協定において,協定の相手方に対し,その事業や処理施設を将来廃止する旨を約束することは,処分業者自身の自由な判断で行えることであり,その結果,許可が効力を有する期間内に事業や処理施設が廃止されることがあったとしても,同法[廃棄物処理法]に何ら抵触するものではない。したがって,旧期限条項が同法の趣旨に反するということはできないし,同法の上記のような趣旨,内容は,その後の改正によっても,変更されていないので,本件期限条項が本件協定が締結された当時の廃棄物処理法の趣旨に反するということもできない」として、公害防止協定の法的拘束力を認めました(最判平21.7.10)。
③給付行政における契約
給付行政とは、国民に便益を供与する活動をいいます。たとえば、道路や公園を作ったり、学校を建設するなどに際してされる契約が給付行政における契約にあたります。
