民法における「弁済による代位」(499条〜502条)を整理してまとめています。弁済による代位(代位弁済)は、わかるようなわからないような感じがする部分です。しかし、時間をかけていると、他に解ける問題が解けなくなってしまうため、あらかじめ理解を促進させておく必要があります。
弁済による代位の要件
まずは、弁済におけるそれぞれの場面を整理しておきましょう。弁済は、誰が誰に何を弁済したかによって論点が変わってきます。「誰が弁済したか」では「代位弁済」などが論点になり、そのあとに本記事のテーマである「弁済による代位」が論点になります。一方、「誰に弁済したか」では、「受領権者以外の者に対する弁済」、「何を弁済したか」では「代物弁済」などが論点になります。
債務者のために弁済をした者は、債権者に代位します(499条)。
代位するとは、「その地位になる」といった意味で捉えるとよいでしょう。つまり、債務者のために弁済をした人は、債権者の地位になると考えられます。
続いて、具体的に何ができるようになるか、弁済による代位の効果を見てみましょう。
弁済による代位の効果
債権者に代位した者は、債権者が有していた一切の権利を行使することができます(501条1項)。
- Aさん:債権者
- Bさん:債務者
- Cさん:債務者のために弁済をした者
ここでは、CさんがBさんのためにAさんに弁済をしました。すると(代位弁済があると)、弁済したCさんは債権者に代位し、債務者であるBさんに求償できるようになります。かんたんに言うと、Cさんは「自分がお金を立て替えて返したんだから、私に返して」とBさんに言えるということです。
501条3項では、第三取得者、保証人、物上保証人について、規定しています。
第三取得者は、保証人・物上保証人に対して債権者に代位しません(501条3項1号)。第三取得者は、債権者に弁済していますが、債務者から担保の目的となっている財産を譲り受けているため、保証人や物上保証人にこれ以上求める必要はありません。
第三取得者の1人は、各財産の価格に応じて、他の第三取得者に対して債権者に代位します(501条3項2号)。
物上保証人の1人は、各財産の価格に応じて、他の物上保証人に対して債権者に代位します(501条3項3号)。
保証人は、保証人の数に応じて、債権者に代位します(501条2項括弧書)。各保証人は、同じ債務を保証しているので、保証人の数に応じて代位します。一方、第三取得者(財産を取得した者)や物上保証人(自身の財産を担保にした者)は、財産が基準になるので、各財産の価格に応じて代位します。
保証人と物上保証人との間においては、その数に応じて、債権者に代位します(501条3項4号本文)。ただし、物上保証人が数人あるときは、保証人の負担部分を除いた残額について、各財産の価格に応じて、債権者に代位します(501条4項但書)。
【本文】
- 債権額:1,000万円
- 保証人:3人
- 物上保証人:1人
この場合、数に応じて代位するので、250万円ずつ代位できることになります。
【但書】
- 債権額:1,000万円
- 保証人:3人
- 物上保証人:2人(Dさん:800万円、Eさん:400万円)
まず、保証人分は、1000万円÷5人(全員)×2人(保証人)=400万円になります。保証人は保証人の数に応じて、債権者に代位するので、1人あたり200万円になります。
次に、物上保証人間は、保証人の負担部分を除いた残額である600万円を財産の価格に応じて、債権者に代位するので、Dさんが400万円、Eさんが200万円代位することになります。
保証人は同じ債務を保証するのに対して、物上保証人は担保に差し出す財産の価格が異なるので、財産の価格に応じる(頭数ではない)と考えると、丸暗記せずに理解できます。
一部弁済による代位
債権の一部について代位弁済があったときは、代位者は、債権者の同意を得て、弁済をした価額に応じて、債権者とともに権利を行使することができます(502条1項)。
債権者は、単独で権利を行使できます(502条2項)。債権者が行使する権利は、権利の行使によって得られる金銭について、代位者が行使する権利に優先します(502条3項)。
一部だけを弁済した場合は、「債権者の方が力関係が強い」というイメージで捉えましょう。代位者は、債権者の同意を得なければ権利を行使できず、一方、債権者は単独で権利を行使できます。また、権利の行使によって得られる金銭も、債権者が優先します。