【民法】行為能力について、未成年者や成年被後見人、被保佐人などのまとめ

民法
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民法の総則の人から行為能力について学習します。行為能力とは、法律行為を単独で有効に行うことができる能力です。ここでは、判断能力が十分でないために、単独では法律行為を行うことができない未成年者や成年被後見人などの制限行為能力者がどのように保護されるか見ていきましょう。

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成年

年齢18歳をもって、成年とする(4条)。

未成年者の法律行為

未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない(5条1項)。

前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる(5条2項)。

第1項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする(5条3項)。

未成年者の法律行為について定めています。

未成年者が法律行為をするには、法定代理人の同意を得なければなりません。法定代理人とは、文字通り、「法」で「定」められた代理人(本人に代わって法律行為を行う者)のことです。たとえば、「親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。」(824条本文)として、親権を行う者の代理権を定めています。そして、「成年に達しない子は、父母の親権に服する。」(818条1項)として、父母が親権を持つことが定められています。つまり、未成年者の法定代理人は父母ということになります(父母がいない場合などについては別の機会に学習します)。

以上のことから、未成年者は契約などの法律行為をするには、法定代理人の同意を得なければならないということになります。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない、つまり、法定代理人の同意を得なくてもよいということです。

単に利益を得るとは、たとえば、贈与を受けるなどです。ただ、弁済を受けるのは、金銭債権がなくなるのであてはまりません。義務を免れるとは、免除などです。このような法律行為は、未成年者に不利益があるわけではないので、法定代理人の同意がなくても行えるようになっています。

前項の規定に反する法律行為(法定代理人の同意を得ないでされた行為)は、取り消すことができます。未成年者が勝手に契約をしてしまったときは、取消すことができます。そのため、たとえば、未成年者がゲームなどを売るときは、同意書などが必要になります。

第1項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産、たとえば、「このお金で勉強に使う本を買ってきなさい」とされたお金は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができます。また、目的を定めないで処分を許した財産、「今月のお小遣いは500円ね」とされたお金を処分するときも、同様とする、つまり、未成年者が自由に処分することができます。

後見開始の審判

精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる(7条)。

成年被後見人及び成年後見人

後見開始の審判を受けた者は、成年被後見人とし、これに成年後見人を付する(8条)。

成年被後見人の法律行為

成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない(9条)。

精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者は、本人や配偶者、4親等内の親族などの請求により、後見開始の審判をすることできます。後見開始の審判を受けると、成年被後見人とし、成年後見人を付けます。この成年後見人が、成年被後見人のお世話をします。

成年被後見人の法律行為は、取り消すことができます。事理を弁識する能力を欠く常況にあるため、本人を保護する必要があるからです。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない、つまり、取り消すことができないということです。日用品の購入まで取り消すことができると相手方であるお店側の負担が大きく、その結果、成年被後見人には日用品の販売をしないことになると、成年被後見人が生活できなくなってしまうことを考えるとわかりやすいと思います。

保佐開始の審判

精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判をすることができる(11条本文)。

被保佐人及び保佐人

保佐開始の審判を受けた者は、被保佐人とし、これに保佐人を付する(12条)。

保佐人の同意を要する行為等

被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第9条ただし書に規定する行為については、この限りでない(13条1項)。
① 元本を領収し、又は利用すること。
② 借財又は保証をすること。
③ 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
④ 訴訟行為をすること。
⑤ 贈与、和解又は仲裁合意をすること。
⑥ 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
⑦ 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
⑧ 新築、改築、増築又は大修繕をすること。
⑨ 第602条[短期賃貸借]に定める期間を超える賃貸借をすること。
⑩ 前各号に掲げる行為を制限行為能力者の法定代理人としてすること。

家庭裁判所は、第11条本文に規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求により、被保佐人が前項各号に掲げる行為以外の行為をする場合であってもその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、第9条ただし書に規定する行為については、この限りでない(13条2項)。

保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる(13条4項)。

成年被後見人よりひとつ軽く、精神上の障害が事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、本人や配偶者、4親等内の親族などの請求により、保佐開始の審判をすることができます。保佐開始の審判を受けると、被保佐人とし、保佐人を付けます。先ほどの成年被後見人と同じように考えることができます。このとき、成年被後見人より障害の程度が少し軽いと考えるのがポイントです。

このことから、被保佐人は、13条1項各号で掲げられている行為については、保佐人の同意を得なければならないとされています。これらをひとつひとつ覚える必要はありませんが、借財や保証、不動産などの重要な財産に関する権利の得喪については、保佐人の同意が必要であると考えましょう。また、先ほどの成年被後見人は、同意権がなかったことと比較しておきましょう。成年被後見人は、事理を弁識する能力を欠く常況にあるため、同意をしてもらってもその通りに行動するのは難しいというのを考えると成年後見人に同意権が与えられていないのが理解できると思います。

10号について、「前各号に掲げる行為を制限行為能力者の法定代理人としてすること」というのは、13条1項各号に掲げる行為を自分の未成年の子どもの法定代理人としてする場合が考えられます。被保佐人は重要な権利の得喪などについて、自分で判断するのは難しいので、このようなときも保佐人の同意を得ましょうということです。

被保佐人は、成年被後見人と同じように、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、自分ひとりで行うことができます。

また、本人らの請求により、13条1項各号に掲げる行為以外の行為をする場合であっても保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることができます。人それぞれ障害の程度が異なるため、成年被後見人と被保佐人の間を個別で埋めていくイメージです。ただし、成年被後見人でも単独でできる日用品の購入その他日常生活に関する行為については、同意権を与えることはできません。

もうひとつ、次の被補助人のところにも出てくるので、代理権について補則します。

家庭裁判所は、第11条本文に規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求によって、被保佐人のために特定の法律行為について保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができる(876条の4第1項)。

本人以外の者の請求によって前項の審判をするには、本人の同意がなければならない(876条の4第2項)。

代理権とは、本人に代わって法律行為を行うことができる権利です。これまで見てきた同意権は、本人が法律行為を行うことについて、同意をするものであったことと比較しておきましょう。

そして、被保佐人の場合、本人などの請求によって、保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができます。ただ、代理権を与えると、本人にとって不当な干渉にもなりかねないので、本人以外の者の請求によって審判をするには、本人の同意がなければならないとされています。

保佐人の同意を得なければならない行為であって、同意等を得ないでしたものは、取り消すことができます。成年被後見人と同じように保護されています。

補助開始の審判

精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる(15条1項本文)。

本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない(15条2項)。

補助開始の審判は、第17条第1項の審判[補助人の同意を要する旨の審判等]又は第876条の9第1項の審判[補助人に代理権を付与する旨の審判]とともにしなければならない(15条3項)。

被補助人及び補助人

補助開始の審判を受けた者は、被補助人とし、これに補助人を付する(16条)。

補助人の同意を要する旨の審判等

家庭裁判所は、第15条第1項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求により、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、その審判によりその同意を得なければならないものとすることができる行為は、第13条第1項に規定する行為の一部に限る(17条1項)。

本人以外の者の請求により前項の審判をするには、本人の同意がなければならない(17条2項)。

補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる(17条4項)。

被保佐人よりひとつ軽く、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、本人や配偶者、4親等内の親族などの請求により、補助開始の審判をすることができます。補助開始の審判を受けると、被補助人とし、補助人を付けます。成年被後見人、被保佐人と同じように考えることができます。そして、原則として、被補助人はひとりで自分のことができます。

このことから、本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければなりません。不当な干渉になってしまうからです。

また、被補助人は、原則として自分のことは自分でできるので、必要な程度に合わせて、補助人の同意を要する旨の審判等または補助人に代理権を付与する旨の審判とともにします。

同意権について、「同意を得なければならないものとすることができる行為」は、被保佐人のときに出てきた13条1項に規定する行為の一部に限られます。もし、13条1項のすべてができないのなら、被保佐人としてカバーすべきと考えるとわかりやすいと思います。本試験対策として、13条1項に規定しない行為か迷ったときは、重要な行為は制限されないのに、重要でない行為が制限されるのはおかしいと矛盾に気づけます。

本人以外の者の請求により補助人の同意を要する旨の審判をするには、本人の同意がなければなりません。

もうひとつ、補助開始の審判は、同意権または代理権を付与する旨の審判とともにしなければならないとあります。親族のところで規定されている条文を見てみましょう。

家庭裁判所は、第15条第1項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求によって、被補助人のために特定の法律行為について補助人に代理権を付与する旨の審判をすることができる(876条の9第1項)。

第876条の4第2項及び第3項[保佐人に代理権を付与する旨の審判]の規定は、前項の審判について準用する(876条の9第2項)。

本人などの請求によって、補助人に代理権を付与する旨の審判をすることができます。この場合、本人以外の者の請求によって審判をするには、本人の同意がなければなりません。先ほど、イレギュラーで被保佐人のところで代理権について言及したのは、被補助人のところで出てくるからです。

補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意等を得ないでしたものは、取り消すことができます。

審判相互の関係

後見開始の審判をする場合において、本人が被保佐人又は被補助人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る保佐開始又は補助開始の審判を取り消さなければならない(19条1項)。

前項の規定は、保佐開始の審判をする場合において本人が成年被後見人若しくは被補助人であるとき、又は補助開始の審判をする場合において本人が成年被後見人若しくは被保佐人であるときについて準用する(19条2項)。

後見、保佐、補助の制度が重複しないように、たとえば後見開始の審判をする場合、本人が被保佐人や被補助人であるときは、被保佐人や被補助人の審判を取り消します。

制限行為能力者の相手方の催告権

制限行為能力者の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者(行為能力の制限を受けない者をいう。以下同じ。)となった後、その者に対し、1箇月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす(20条1項)。

制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者とならない間に、その法定代理人、保佐人又は補助人に対し、その権限内の行為について前項に規定する催告をした場合において、これらの者が同項の期間内に確答を発しないときも、同項後段と同様とする(20条2項)。

制限行為能力者の相手方は、被保佐人又は第17条第1項の審判を受けた被補助人に対しては、第1項の期間内にその保佐人又は補助人の追認を得るべき旨の催告をすることができる。この場合において、その被保佐人又は被補助人がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす(20条4項)。

法律関係が不安定になってしまうことを避けるため、制限行為能力者の相手方は、制限行為能力者が、行為能力者となった後、1箇月以上の期間を定めて、取り消すことができる行為を追認するかどうか催告することができます。その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなします。返事をしない人より相手方を保護する必要性が高くなるからです。

また、制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者とならない間に、法定代理人等に対し、追認するか催告をした場合において、同じ期間内に確答を発しないときも、追認したものとみなします。判断すべき者が返事をしないので、相手方を保護しましょうということです。

一方、制限行為能力者の相手方は、被保佐人又は同意権の審判を受けた被補助人に対して、保佐人または補助人の追認を得るべき旨の催告をすることができます。成年被後見人は、事理を弁識する能力を欠く常況にあるため、催告の対象となっていないことをおさえておきましょう。この場合において、被保佐人または被補助人がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなします。被保佐人と同意権の審判を受けた被補助人は、保護性が高いからです。

制限行為能力者の相手方の催告権は、誰に催告したかによって、返事がなかったとき、追認したものとみなされるか、取り消したものとみなされるかが山場となります。

制限行為能力者の詐術

制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない(21条)。

未成年者や成年被後見人などの制限行為能力者が一定の法律行為を行ったときは、取り消せるのが原則でした。しかし、制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、取り消すことができなくなります。制限行為能力者を保護する必要性が低くなるからです。

判例は、「無能力者の他の言動などと相俟って、相手方を誤信させ、または誤信を強めたものと認められるときは、なお詐術に当たるというべきであるが、単に無能力者であることを黙秘していたことの一事をもって、右にいう詐術に当たるとするのは相当ではない」としています(最判昭44.2.13)。つまり、黙秘していただけでは詐術にあたらないということです。

※第4節「住所」は省略します。

SOMEYA, M.

東京都生まれ。沖縄県在住。主に行政書士試験対策について発信しているブログです。【好き】沖縄料理・ちゅらさん・Cocco・龍が如く3

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東京都生まれ。沖縄県在住。主に行政書士試験対策について発信しているブログです。【好きなもの】沖縄料理・ちゅらさん・Cocco・龍が如く3

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