地方自治法の普通地方公共団体から財務について学習します。
目次
第1節 会計年度及び会計の区分
会計年度及びその独立の原則
普通地方公共団体の会計年度は、毎年4月1日に始まり、翌年3月31日に終わるものとする(208条1項)。
各会計年度における歳出は、その年度の歳入をもって、これに充てなければならない(208条2項)。
会計の区分
普通地方公共団体の会計は、一般会計及び特別会計とする(209条1項)。
特別会計は、普通地方公共団体が特定の事業を行なう場合その他特定の歳入をもって特定の歳出に充て一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合において、条例でこれを設置することができる(209条2項)。
普通地方公共団体の会計は一般会計と特別会計にわけられることがわかりました。
第2節 予算
総計予算主義の原則
予算の調製及び議決
これまで何度も出てきたように、予算の調製は、普通地方公共団体の長の権限になります。
第3節 収入
地方税
分担金
使用料
手数料
分担金等に関する規制及び罰則
地方債
第4節 支出
経費の支弁等
支出の方法
第5節 決算
決算
会計管理者は、毎会計年度、政令で定めるところにより、決算を調製し、出納の閉鎖後3箇月以内に、証書類その他政令で定める書類と併せて、普通地方公共団体の長に提出しなければならない(233条1項)。
普通地方公共団体の長は、決算及び前項の書類を監査委員の審査に付さなければならない(233条2項)。
第6節 契約
契約の締結
売買、貸借、請負その他の契約は、一般競争入札、指名競争入札、随意契約又はせり売りの方法により締結するものとする(234条1項)。
前項の指名競争入札、随意契約又はせり売りは、政令で定める場合に該当するときに限り、これによることができる(234条2項)。
地方公共団体がする契約は、透明性や競争性の観点から一般競争入札によって行われるのが原則です。もっとも、調達に多くの時間がかかったり、地域活性化の観点から地元企業が受注し地域経済に貢献することも求められるため、政令で定める場合に該当するときは、指名競争入札、随意契約、せり売りの方法を行うことができます。
指名競争入札について判例を確認しておきましょう。
村の発注する公共工事の指名競争入札に長年指名を受けて継続的に参加していた建設業者を特定年度以降全く指名せず入札に参加させなかった村の措置につき、国家賠償請求訴訟を提起した事案について、判例は、次のように述べています。
地方公共団体が,指名競争入札に参加させようとする者を指名するに当たり,① 工事現場等への距離が近く現場に関する知識等を有していることから契約の確実な履行が期待できることや,② 地元の経済の活性化にも寄与することなどを考慮し,地元企業を優先する指名を行うことについては,その合理性を肯定することができるものの,①又は②の観点からは村内業者と同様の条件を満たす村外業者もあり得るのであり,価格の有利性確保(競争性の低下防止)の観点を考慮すれば,考慮すべき他の諸事情にかかわらず,およそ村内業者では対応できない工事以外の工事は村内業者のみを指名するという運用について,常に合理性があり裁量権の範囲内であるということはできない。(中略)
上記のような法令の趣旨に反する運用基準の下で,主たる営業所が村内にないなどの事情から形式的に村外業者に当たると判断し,そのことのみを理由として,他の条件いかんにかかわらず,およそ一切の工事につき平成12年度以降全く上告人を指名せず指名競争入札に参加させない措置を採ったとすれば,それは,考慮すべき事項を十分考慮することなく,一つの考慮要素にとどまる村外業者であることのみを重視している点において,極めて不合理であり,社会通念上著しく妥当性を欠くものといわざるを得ず,そのような措置に裁量権の逸脱又は濫用があったとまではいえないと判断することはできない(最判平18.10.26)。
最後の「裁量権の逸脱又は濫用があったとまではいえないと判断することはできない」は、「いえないと判断することはできない」なので、裁量権の逸脱又は濫用があったということです。
また、特定の相手方と契約を締結する随意契約について、判例は、「当該契約が仮に随意契約の制限に関する法令に違反して締結された点において違法であるとしても、それが私法上当然無効とはいえない場合には、普通地方公共団体は契約の相手方に対して当該契約に基づく債務を履行すべき義務を負う」としています(最判昭62.5.19)。つまり、法令に違反して随意契約が締結されても、私法上、当然に無効になるわけではないということです。もし、無効だとすると、契約の相手方が不測の損害を被ることになるからです。
第7節 現金及び有価証券
※省略
第8節 時効
金銭債権の消滅時効
金銭の給付を目的とする普通地方公共団体の権利は、時効に関し他の法律に定めがあるものを除くほか、これを行使することができる時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する。普通地方公共団体に対する権利で、金銭の給付を目的とするものについても、また同様とする(236条1項)。
金銭の給付を目的とする普通地方公共団体の権利の時効による消滅については、法律に特別の定めがある場合を除くほか、時効の援用を要せず、また、その利益を放棄することができないものとする。普通地方公共団体に対する権利で、金銭の給付を目的とするものについても、また同様とする(236条2項)。
消滅時効は5年、時効の援用は不要、利益を放棄することができない点をおさえておきましょう。
第9節 財産
財産の管理及び処分
この法律において「財産」とは、公有財産、物品及び債権並びに基金をいう(237条1項)。
第238条の4第1項[行政財産の管理及び処分]の規定の適用がある場合を除き、普通地方公共団体の財産は、条例又は議会の議決による場合でなければ、これを交換し、出資の目的とし、若しくは支払手段として使用し、又は適正な対価なくしてこれを譲渡し、若しくは貸し付けてはならない(237条2項)。
第10節 住民による監査請求及び訴訟
住民監査請求
これが住民監査請求です。直接請求のところでは、選挙権を有する者は、事務監査請求ができるとなっていたのと比較しておきましょう。
住民訴訟
普通地方公共団体の住民は、前条第1項の規定による請求をした場合において、監査委員の監査の結果若しくは勧告若しくは普通地方公共団体の議会、長その他の執行機関若しくは職員の措置に不服があるとき、又は監査委員が監査若しくは勧告を期間内[請求があった日から60日以内]に行わないとき、若しくは議会、長その他の執行機関若しくは職員が措置を講じないときは、裁判所に対し、同条第1項の請求に係る違法な行為又は怠る事実につき、訴えをもって次に掲げる請求をすることができる(242条の2第1項)。
① 当該執行機関又は職員に対する当該行為の全部又は一部の差止めの請求
② 行政処分たる当該行為の取消し又は無効確認の請求
③ 当該執行機関又は職員に対する当該怠る事実の違法確認の請求
④ 当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方に損害賠償又は不当利得返還の請求をすることを当該普通地方公共団体の執行機関又は職員に対して求める請求。
前項の規定による訴訟は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める期間内に提起しなければならない(242条の2第2項)。
① 監査委員の監査の結果又は勧告に不服がある場合 当該監査の結果又は当該勧告の内容の通知があった日から30日以内
② 監査委員の勧告を受けた議会、長その他の執行機関又は職員の措置に不服がある場合 当該措置に係る監査委員の通知があった日から30日以内
③ 監査委員が請求をした日から60日を経過しても監査又は勧告を行わない場合 当該60日を経過した日から30日以内
④ 監査委員の勧告を受けた議会、長その他の執行機関又は職員が措置を講じない場合 当該勧告に示された期間を経過した日から30日以内
前項の期間は、不変期間とする(242条の2第3項)。
第1項の規定による訴訟は、当該普通地方公共団体の事務所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に専属する(242条の2第5項)。
住民監査請求をした場合において、監査の結果等に不服があるとき、監査を行わないときは、訴訟を提起することができます。本試験対策として、住民監査請求をした場合というのがポイントです。これを、住民監査請求前置といいます。審査請求のときもそうでしたが、住民監査請求をせずに裁判を起こせるとすると、裁判所の貴重な資源を浪費してしまうことになると考えると理解しやすいと思います。
住民訴訟は、一定の起算点から30日以内というのをおさえておきましょう。
憲法の政教分離に出てくる裁判例(公金を支出しているもの)は、この住民監査請求を経て、住民訴訟が提起されたものです。このつながりを考えると、憲法と行政法の関係が理解しやすいと思います。
第11節 雑則
※省略