【民法】無権代理について、追認、催告権、取消権、責任、相続のまとめ

民法
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民法の総則の法律行為から無権代理について学習します。これまでどのようなときに無権代理になるかについて学習してきました。ここでは、無権代理になったらどうなるかについてみていきます。

民法>総則>法律行為>代理>無権代理


無権代理

代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない(113条1項)。

無権代理は、本人が追認をしなければ、本人に対して効力を生じません。本人にとって、自分が関係していないところで契約がされているので、本人に対して効力を生じないということです。反対に言うと、本人が「わかりました、いいですよ」と追認をすれば、本人に対して効力を生じます。

無権代理の相手方の催告権

前条の場合において、相手方は、本人に対し相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなす(114条)。

無権代理の場合、相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、追認をするかどうか催告をすることができます。この場合において、本人が期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなします。本人にとっては、自分の知らないところで契約されているのですから、返事をしなくても当然と考えることができます。結論を迷ってしまうときは、どちらが合理的か考えてみましょう。

無権代理の相手方の取消権

代理権を有しない者がした契約は、本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことができる。ただし、契約の時において代理権を有しないことを相手方が知っていたときは、この限りでない(115条)。

このあたりから利益衡量の視点が出てきます。まず、無権代理による契約は、本人が追認をしない間は、相手方は取り消すことができます。ただし、契約の時において代理権を有しないことを相手方が知っていたときは、この限りでない、つまり取り消すことができないということです。

無権代理人の責任

他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う(117条1項)。

前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない(117条2項)。
① 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき。
② 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が過失によって知らなかったとき。ただし、他人の代理人として契約をした者が自己に代理権がないことを知っていたときは、この限りでない。
③ 他人の代理人として契約をした者が行為能力の制限を受けていたとき。

無権代理人の責任は、無権代理の山場となります。ひとつずつ整理しましょう。

無権代理をした者は、代理権があることを証明したとき、または本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、履行または損害賠償の責任を負います。これが原則です。

もっとも、責任を負わなくてもよい場合が、2項に規定されています。

1号について、代理権を有しないことを相手方が知っていたとき、相手方も無権代理であることを知って契約しているので、相手方を保護する必要はないからです。

2号について、相手方が過失によって知らなかったとき、ちょっと調べればわかるのにそれをしなかったなど、相手方に過失があるときも相手方を保護する必要性は低くなります。ただし、悪意のときよりは帰責性が低くなるので、無権代理をした者が自己に代理権がないことを知っていたときは、この限りでない、つまり相手方は責任を問えるということです。ここでは、無権代理をした者と相手方との利益がち密に衡量されていることがわかります。

3号について、 無権代理をした者が行為能力の制限を受けていたとき、制限行為能力者を保護する必要性が高いため、相手方は責任を問うことはできないとされています。

まとめ

無権代理は、本人ができること、相手方ができることをおさえましょう。

  • 本人ができること :追認(113条)
  • 相手方ができること:催告(114条)、取消(115条)、責任追及(117条)

そして、責任追及については、無権代理の責任追及の山場になるので、整理しておきましょう。

善意 悪意
催告権
取消権
責任追及
(有過失△※)

※原則責任追及できない。ただし、無権代理人が自己に代理権がないことを知っているときは、責任追及することができる。

まず、無権代理をした者は、責任を負うのが原則です。そして、2項では、責任を負わない場合が規定されています。1号は、相手方が悪意であったときです。相手方を保護する必要はないので、相手方は無権代理の責任を問うことはできません。2号は、相手方が善意有過失であったときです。相手方を保護する必要性は低いですが、無権代理をした者が、自己に代理権がないことを知っていたときは、相手方は責任を問うことができます。3号の、制限行為能力者の場合はわかりやすいと思います。

無権代理と相続

本人と無権代理人との間で相続が生じたとき、どのようになるのか、判例が処理をしています。

①無権代理人が本人を相続

まず、無権代理人が本人を相続した場合です。判例は、「無権代理人が本人を相続し本人と代理人との資格が同一人に帰するにいたった場合においては、本人が自ら法律行為をしたのと同様な法律上の地位を生じたものと解する」、つまり、無権代理が有効になるとしています(最判昭40.6.18)。

本人が無権代理行為の追認を拒絶した後に無権代理人が本人を相続した場合、判例は、「本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合には、その後無権代理人が本人を相続したとしても、無権代理行為が有効になるものではない。」としています(最判平10.7.17)。

無権代理人が共同相続をした場合、判例は、「無権代理人が本人を共同相続した場合には、共同相続人全員が共同して無権代理行為を追認しない限り、無権代理人の相続分に相当する部分においても、無権代理行為が当然に有効となるものではない。」としています(最判平5.1.21)。

②本人が無権代理人を相続

次に、本人が無権代理人を相続した場合です。判例は、「本人が無権代理人の家督を相続した場合、被相続人の無権代理行為は、右相続により当然には有効となるものではない。」としています(最判昭37.4.20)。本人は帰責性がないということを考えれば理解しやすいと思います。

もっとも、相続をすると、相続放棄をしない限り、相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します(896条本文)。この点について、判例は、「無権代理人を相続した本人は、無権代理人が民法117条により相手方に債務を負担していたときには、無権代理行為について追認を拒絶できる地位にあったことを理由として、右債務を免れることができない。」としています(最判昭48.7.3)。

③第三者が無権代理人と本人の双方を相続

最後に、第三者が無権代理人と本人の双方を相続した場合です。判例は、「無権代理人を本人とともに相続した者がその後更に本人を相続した場合においては、本人が自ら法律行為をしたと同様の法律上の地位ないし効果を生ずるものと解するのが相当である。」、つまり、追認を拒絶することができないとしています(最判昭63.3.1)。

SOMEYA, M.

東京都生まれ。沖縄県在住。主に行政書士試験対策について発信しているブログです。【好き】沖縄料理・ちゅらさん・Cocco・龍が如く3

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