会社法の持分会社について学習します。本試験対策として、合名会社、合資会社、合同会社の違いをおさられるようにしましょう。
目次
第1章 設立
定款の作成
会社法では、株式会社のほかに、合名会社、合資会社、合同会社という持分会社を設立することができます。各持分会社の違いについては、条文を読み進めていきましょう。
定款の記載又は記録事項
① 目的
② 商号
③ 本店の所在地
④ 社員の氏名又は名称及び住所
⑤ 社員が無限責任社員又は有限責任社員のいずれであるかの別
⑥ 社員の出資の目的(有限責任社員にあっては、金銭等に限る。)及びその価額又は評価の標準
目的、商号、本店の所在地までは株式会社と同じです。もっとも、株式会社と異なり、社員の氏名または名称と住所を定款に記載します。「名称」というのは、社員が法人の場合もあるからです。
また、社員が無限責任社員または有限責任社員のいずれかであるかも記載します。これについては、3つの持分会社によって無限責任と有限責任が異なります。社員の出資の目的は、金銭や現物出資のほか、無限責任社員は、信用や労務も設定することができます。
合名会社の場合、全員が無限責任社員となります。
合資会社の場合、一部が無限責任社員、その他が有限責任社員となります。つまり、合資会社は、最低でも2人の社員が必要ということになります。
合同会社の場合、全員が有限責任社員となります。このことから、合同会社は、株式会社に近いことがわかります。もっとも、株式会社は、建前として会社の所有と経営が分離しているのに対して、合同会社などの持分会社は、所有と経営が分離していないのが特徴です。
合同会社の設立時の出資の履行
合同会社は、社員全員が有限責任のため、設立の登記をする時までに、出資に係る金銭の全額を払い込み、または現物出資の場合は全部を給付する必要があります。一方、合名会社や合資会社は、無限責任社員がいるため、事前に出資を払い込む必要がありません。何かあったときは、無限責任社員の財産を差し押さえるなどができるからです。
持分会社の成立
設立の登記をすることによって成立するのは、株式会社と同じです。
第2章 社員
社員の責任
① 当該持分会社の財産をもってその債務を完済することができない場合
② 当該持分会社の財産に対する強制執行がその効を奏しなかった場合(社員が、当該持分会社に弁済をする資力があり、かつ、強制執行が容易であることを証明した場合を除く。)有限責任社員は、その出資の価額(既に持分会社に対し履行した出資の価額を除く。)を限度として、持分会社の債務を弁済する責任を負う(580条2項)。
社員は、持分会社の債務を弁済する責任を負います。これが無限責任です。もっとも、有限責任社員は、出資の価額を限度として、持分会社の債務を弁済する責任を負います。株式会社の株主が、出資した価額の限度で責任を負うのと同じです。
持分の譲渡
社員は、他の社員の全員の承諾がなければ、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができない(585条1項)。
業務を執行しない有限責任社員は、業務を執行する社員の全員の承諾があるときは、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができる(585条2項)。
持分会社は、誰が社員であるかが大切なので、他の社員の全員の承諾がなければ、持分の全部または一部を他人に譲渡することができません。もっとも、業務を執行しない有限責任社員は、言ってみれば出資をしているだけに近いため、業務を執行する社員の全員の承諾があるときは、持分の全部または一部を他人に譲渡することができます。
第3章 管理
業務の執行
社員は、定款に別段の定めがある場合を除き、持分会社の業務を執行する(590条1項)。
社員が2人以上ある場合には、持分会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、社員の過半数をもって決定する(590条2項)。
このあたりは、取締役の業務の執行と同じように考えることができます。
持分会社の代表
これも、取締役と代表取締役の関係と同じように考えることができます。
第4章 社員の加入及び退社
社員の加入
持分会社は、新たに社員を加入させることができる(604条1項)。
持分会社の社員の加入は、当該社員に係る定款の変更をした時に、その効力を生ずる(604条2項)。
前項の規定にかかわらず、合同会社が新たに社員を加入させる場合において、新たに社員となろうとする者が同項の定款の変更をした時にその出資に係る払込み又は給付の全部又は一部を履行していないときは、その者は、当該払込み又は給付を完了した時に、合同会社の社員となる(604条3項)。
社員の加入は、持分会社の成立のときと同じように考えることができます。持分会社は、定款の変更をした時に、効力を生じる、つまり社員が加入します。また、合同会社の場合は、事前に出資をする必要があるので、払込や給付を完了した時に、合同会社の社員となります。
任意退社
持分会社の存続期間を定款で定めなかった場合又はある社員の終身の間持分会社が存続することを定款で定めた場合には、各社員は、事業年度の終了の時において退社をすることができる。この場合においては、各社員は、6箇月前までに持分会社に退社の予告をしなければならない(606条1項)。
前項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない(606条2項)。
前2項の規定にかかわらず、各社員は、やむを得ない事由があるときは、いつでも退社することができる(606条3項)。
原則は、事業年度の終了の時に退社をする、定款で別段の定めができる、やむを得ない事由があるときは、いつでも退社できるといった点をおさえておきましょう。
退社に伴う持分の払戻し
持分会社は、所有と経営が一致しているのが原則のため、退社した社員は、持分の払戻しを受けることができます。
退社した社員の責任
退社した社員は、その登記をする前に生じた持分会社の債務について、従前の責任の範囲内でこれを弁済する責任を負う(612条1項)。
前項の責任は、同項の登記後2年以内に請求又は請求の予告をしない持分会社の債権者に対しては、当該登記後2年を経過した時に消滅する(612条2項)。
従前の責任の範囲内なので、無限責任社員は無限責任を、有限責任社員は出資の価額の限度で、持分会社の債務について、弁済する責任を負います。責任は、退社の登記後、2年を経過した時に消滅します。
持分会社については、会社の所有と経営が分離していない、合名会社、合資会社、合同会社ごとに無限責任社員と有限責任社員の構成が違うことを中心におさえておきましょう。