地方自治法の普通地方公共団体から大都市等に関する特例について学習します。
第1節 大都市に関する特例
指定都市の権能
政令で指定する人口50万以上の市(以下「指定都市」という。)は、次に掲げる事務のうち都道府県が法律又はこれに基づく政令の定めるところにより処理することとされているものの全部又は一部で政令で定めるものを、政令で定めるところにより、処理することができる(252条の19第1項)。
① 児童福祉に関する事務
② 民生委員に関する事務
③ 身体障害者の福祉に関する事務
以下省略
政令で指定する人口50万以上の市を指定都市といいます。政令で指定されていることから、基本書等では、「政令指定都市」となっていることが多いと思います。指定都市は、都道府県が処理することとされているものの全部または一部を処理することができるようになっています。わかりやすくいうと、都道府県に近い権限を与えられているということです。
「政令で指定する〜」の政令を見てみましょう。
地方自治法第252条の19第1項の指定都市を次のとおり指定する。
大阪市 名古屋市 京都市 横浜市 神戸市 北九州市 札幌市 川崎市 福岡市 広島市 仙台市 千葉市 さいたま市 静岡市 堺市 新潟市 浜松市 岡山市 相模原市 熊本市
全部で20の都市が指定されていることがわかります。
区の設置
指定都市は、市長の権限に属する事務を分掌させるため、条例で、その区域を分けて区を設け、区の事務所又は必要があると認めるときはその出張所を置くものとする(252条の20第1項)。
区の事務所又はその出張所の位置、名称及び所管区域並びに区の事務所が分掌する事務は、条例でこれを定めなければならない(252条の20第2項)。
区にその事務所の長として区長を置く(252条の20第3項)。
区長又は区の事務所の出張所の長は、当該普通地方公共団体の長の補助機関である職員をもって充てる(252条の20第4項)。
指定都市は、人口が多いので、区を設けます。この区が「行政区」です。
ここで気をつけたいのが、特別地方公共団体の特別区(いわゆる東京23区)です。
特別区は、特別地方公共団体で学習しますが、市町村に準ずるものです。一方、行政区は、市を区切ったものです。
- 東京都>立川市、武蔵野市、港区、渋谷区など(並列関係)
- 大阪府>大阪市>淀川区、住吉区、西成区など(包括関係)
特別区は、それぞれ選挙によって選出された区長さんがいますが、行政区は、指定都市の市長さんが職員の中から区長を選出します(例:大阪市の市長が選出する)。
東京に住んでいる方は、東京のイメージで大阪や福岡の区を誤解してしまうことがあり、反対に大阪や福岡に住んでいる方は東京の区のイメージを誤解してしまうことがあります。
第2節 中都市に関する特例
中核市の権能
中核市の指定に係る手続
政令で指定する人口20万以上の市を中核市といいます。この中核市は、市からの申出に基づき、政令の立案をします。指定都市とは異なり、中核市は、市からの申出が必要であるのが特徴です。
権能について、読みにくいので補則します。都道府県がその区域にわたり一体的に処理することが中核市が処理することに比して効率的な事務、つまり、都道府県が処理した方がよい事務や、その他の中核市において処理することが適当でない事務は都道府県が処理します。そして、それら以外の事務で政令で定めたものを中核市が行うことができます。
中核市は指定都市より人口規模が小さいため、指定都市より狭い範囲で処理できる事務が定められているイメージを持っておくと理解しやすいと思います。
中核市一覧は、「総務省」のホームページで確認できます。中核市に住んでいるという方も多いと思います(私がいる那覇市も中核市です)。
まとめ
最後に、指定都市と中核市を整理しておきましょう。
指定都市 | 中核市 | |
人口 | 50万以上 | 20万以上 |
市の申出 | 不要 | 必要 |
政令で指定 | 必要 | 必要 |
行政区 | 可能 | 不可 |