今回のテーマは、イギリスにおける外国生まれの人口です。
それでは、実際に出題された問題を見てみましょう。
次の表1は、イギリスにおける1990年、2005年、2019年の外国生まれの人口について上位5か国を示したものである。表1中のマ〜厶は、アイルランド、インド、ポーランドのいずれかである。国名とマ〜厶との正しい組み合わせを選ぶ問題です。
まず、イギリスの場所を確認しておきましょう。イギリスの正式名称は、「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」です。その名前からわかるように、グレートブリテン島、私たちがイギリスの本体だと思っている島の全部、そして、アイルランド島の北東部などによって構成されています。
このことから、かつては近隣のアイルランドで生まれてイギリスに移動してくる人口が多くいました。もっとも、近年、アイルランドは、積極的に外資を誘致する政策を進め、多国籍企業(特にITや製薬、金融などの分野)のヨーロッパ拠点がアイルランドに集まり、国内の雇用や技術移転、経済全体の活性化が促進されました。また、1990年代から2000年代前半にかけて、アイルランド経済は「ケルトの虎」と呼ばれるほど急速な成長を遂げました。その結果、アイルランドからイギリスへの人口移動は減少しています。
次に、インドは、旧イギリス領のひとつです。18世紀からイギリスの植民地支配を受けていました。イギリスは「東インド会社」という商業会社を通じてインドに進出し、次第にインド全土を支配するようになりました。
20世紀に入ると、ガンディーがインドの独立運動をリードするようになります。彼は「非暴力・不服従」の方針を掲げ、暴力を使わずにイギリスの支配に抵抗しました。
1947年、インドはついにイギリスからの独立を達成します。しかし、インド国内ではヒンドゥー教徒とイスラム教徒の対立が激化していました。これにより、イスラム教徒が多い地域は「パキスタン」としてインドから分離することになり、インドとパキスタンという2つの国が誕生しました。インドとパキスタンからは、高賃金を求めて、イギリスへの移動が増加しています。
最後に、ポーランドは、2004年にEUに加盟しました。これによって、ポーランド人がEU内の他の国々で自由に働く権利を得ました。当時、ポーランド国内では失業率が高く、十分な仕事が見つからない人が多かったため、イギリスでの仕事を求める動きが強まりました。また、ポーランドと比べて、イギリスでは仕事の賃金が高かったため、より良い生活を求めてイギリスに移住する労働者が増加しました。
これらの情報を参考に問題を見てみましょう。
マは、1990年では1位でしたが、その後、下がってきています。つまり、自国にいればよく、イギリスに行く必要がなくなったと考えることができます。このことから、経済成長を遂げたアイルランドであることがわかります。
ミは、旧イギリス領のひとつであるインドがあてはまります。ただ、表を見ると、マが下がってきたり、厶が上がってきていることから、単体で判断するのは少し難しいかもしれません。そこで、実際に問題を解くときは保留してもよいでしょう。
厶は、1990年では圏外、2005年で4位に上昇し、2019年には2位に上昇しています。このことから2005年頃にイギリスに移動してくる要因があったポーランドが当てはまります。