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今回から、労務管理その他の労働に関する一般常識(労一)の学習に入ります。労一は、択一式が5問(5点分)、選択式が1問(5点分)出題されます。出題範囲が幅広く対策しにくいため、苦手としている方も多いと思います。基本書等では、学習範囲が無限定に広がりがちですが、配点比率と可処分時間を考慮することも重要です。そこで、まずは労一の中で重要な部分に絞って進めます。
今回は、労働契約法です。労働契約法は、労働契約に関するルールを定めたものです。労働基準法だけでは足りない部分が判例で埋められ、それを明文化したものといえます。
労働契約法は全5章、21条で構成される法律です。労一では、ほぼ毎年、労働契約法から1問出題されているので、条文をおさえていきましょう。
目次
第1章 総則
目的
定義
この法律において「労働者」とは、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者をいう(2条1項)。
この法律において「使用者」とは、その使用する労働者に対して賃金を支払う者をいう(2条2項)。
使用者は、労働基準法と定義が異なるので、注意しましょう。
労働契約の原則
労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする(3条1項)。
労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする(3条2項)。
労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする(3条3項)。
労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない(3条4項)。
労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない(3条5項)。
労働契約の原則は、理解が難しいところはないので、条文の表現などをおさえておきましょう。
労働契約の内容の理解の促進
使用者は、労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにするものとする(4条1項)。
労働者及び使用者は、労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。)について、できる限り書面により確認するものとする(4条2項)。
労働契約の締結前において使用者が提示した労働条件について説明等をする場面や、労働契約が締結又は変更されて継続している間の各場面が広く含まれるものであること(平24.8.10基発0810第2号)。
労働者の安全への配慮
「必要な配慮」とは、一律に定まるものではなく、使用者に特定の措置を求めるものではないが、労働者の職種、労務内容、労務提供場所等の具体的な状況に応じて、必要な配慮をすることが求められるものであること(平24.8.10基発0810第2号)。
第2章 労働契約の成立及び変更
労働契約の成立
労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する(6条)。
労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、第12条に該当する場合を除き、この限りでない(7条)。
法第7条は労働契約の成立場面について適用されるものであり、既に労働者と使用者との間で労働契約が締結されているが就業規則は存在しない事業場において新たに就業規則を制定した場合については適用されないものであること(平24.8.10基発0810第2号)。
労働契約は、労働契約の締結当事者である労働者及び使用者の合意のみにより成立するものであること。したがって、労働契約の成立の要件としては、契約内容について書面を交付することまでは求められないものであること(平24.8.10基発0810第2号)。
労働基準法第106条に基づく就業規則の「周知」は、常時各作業場の見やすい場所へ掲示する等の方法のいずれかによるべきこととされているが、労働契約法第7条の「周知」は、それらの方法に限定されるものではなく、実質的に判断される。(平24.8.10基発0810第2号)。
7条が少し読みにくいと思います。まず、原則として、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は就業規則で定める労働条件になります。
ただし、労働者と使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分、つまり、他の労働者とは別に異なる労働条件を合意していた部分については、12条に該当する場合を除き、この限りない、つまり、就業規則で定める労働条件ではなく、「異なる労働条件」になります。
もっとも、12条に該当する場合を除きとなっています。詳しくはあとで見ますが、12条は「就業規則違反の労働契約」について定めています。つまり、12条に該当する場合は、原則通り就業規則で定める労働条件になります。
採用内定の法的性質について、判例は次のように述べています。
企業が大学の新規卒業者を採用するについて、早期に採用試験を実施して採用を内定する、いわゆる採用内定の制度は、従来わが国において広く行われているところであるが、その実態は多様であるため、採用内定の法的性質について一義的に論断することは困難というべきである。したがつて、具体的事案につき、採用内定の法的性質を判断するにあたつては、当該企業の当該年度における採用内定の事実関係に即してこれを検討する必要がある(最判昭54.7.20 大日本印刷事件)。
労働契約の成立について、選択式で出題された判例をみてみましょう。
最高裁判所は、会社から採用内定を受けていた大学卒業予定者に対し、会社が行った採用内定取消は解約権の濫用に当たるか否かが問題となった事件において、次のように判示した。
大学卒業予定者(被上告人)が、企業(上告人)の求人募集に応募し、その入社試験に合格して採用内定の通知(以下「本件採用内定通知」という。)を受け、企業からの求めに応じて、大学卒業のうえは間違いなく入社する旨及び一定の取消事由があるときは採用内定を取り消されても異存がない旨を記載した誓約書(以下「本件誓約書」という。)を提出し、その後、企業から会社の近況報告その他のパンフレットの送付を受けたり、企業からの指示により近況報告書を送付したなどのことがあり、他方、企業において、「本件採用内定通知のほかには労働契約締結のための特段の意思表示をすることが予定されていなかつたことを考慮するとき、上告人からの募集(申込みの誘引)に対し、被上告人が応募したのは、労働契約の申込みであり、これに対する上告人からの採用内定通知は、右申込みに対する承諾であつて、被上告人の本件誓約書の提出とあいまつて、これにより、被上告人と上告人との間に、被上告人の就労の始期を昭和44年大学卒業直後とし、それまでの間、本件誓約書記載の5項目の採用内定取消事由に基づく解約権を留保した労働契約が成立したと解するのを相当とした原審の判断は正当であつて、原判決に所論の違法はない。」企業の留保解約権に基づく大学卒業予定者の「採用内定の取消事由は、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であつて、これを理由として採用内定を取消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られると解するのが相当である。」(最判昭54.7.20 第日本印刷事件)
労働契約の内容の変更
契約自由の原則から、労働者と使用者は、合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができます。
労働契約の不利益変更について、判例は次のように述べています。
労働契約の内容である労働条件は、労動者と使用者の個別の合意によって変更することができるものであり、このことは就業規則に定められている労働条件を労動者の不利益に変更する場合であっても、その合意に際して就業規則の変更が必要とされることを除き、異なるものではないと解される(最判平28.2.19 山梨県民信用組合事件)
就業規則による労働契約の内容の変更
使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない(9条)。
使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第12条に該当する場合を除き、この限りでない(10条)。
労働契約法の山場となる部分です。
まず、原則として、使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできません。
おさらいになりますが、使用者は、就業規則を変更することができます。
条文を見るとわかるように、労働組合等の「意見を聴かなければならない」とあるだけで、同意が求められているわけではありません。だからといって、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできないとしています。
「ただし、次条の場合は、この限りでない」、ここで例外が規定されています。「労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない」といっても、使用者側にも事情があります。自分の権利を主張することは大切ですが、濫用することは認められません。また、法律は、両者の利益を衡量することで、社会全体の調和を目指します。そこで、次条(10条)を見てみましょう。
使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、変更後の就業規則に定めるところによります。まず、手続き上の要件として、変更後の就業規則を労働者に周知させることが必要です。
そして、「かつ」と続き、就業規則の変更が、不利益の程度、変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性など就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、変更後の就業規則に定めるところによる、つまり、使用者側の事情を優先させます。
ただし、さらに例外が設けられており、「労働契約において、労働者と使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第12条に該当する場合を除き、この限りでない、つまり変更後の就業規則にならないということです。たとえば、他の人はお給料が下がるけれど、個別の労働条件として合意していた人は下がらないなどです。
就業規則の変更に係る手続
おさらいのため、労働基準法も見ておきましょう。
常時10人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない(89条)。
使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない(90条1項)。
就業規則違反の労働契約
先ほどからしばしば出てきた12条です。就業規則で定める基準に達しない労働契約は、その部分については、無効となります。
法令及び労働協約と就業規則との関係
就業規則が、それより上の法令または労働協約に反する場合、反する部分は、7条(就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、就業規則で定める労働条件による)、10条(就業規則の不利益変更)、12条(労働契約が無効となった部分が、就業規則で定める基準による)が適用されない、つまり、就業規則にはならないということです。
労働基準法>労働協約>就業規則>労働契約
第3章 労働契約の継続及び終了
出向
出向とは、労働者が従業員たる地位を保有しつつ、事業所(出向元)から他の事業主の事業所(出向先)において勤務することをいいます(在籍型出向)。出向や懲戒、解雇は、労働者にとって不利益が大きいため、権利濫用が禁止されています。
出向について、判例は次のように述べています。
出向命令の内容が,使用者が一定の業務を協力会社に業務委託することに伴い,委託される業務に従事していた労働者に対していわゆる在籍出向を命ずるものであって,就業規則及び労働協約には業務上の必要によって社外勤務をさせることがある旨の規定があり,労働協約には社外勤務の定義,出向期間,出向中の社員の地位,賃金その他処遇等に関して出向労働者の利益に配慮した詳細な規定があるという事情の下においては,使用者は,当該労働者に対し,個別的同意なしに出向を命ずることができる(最判平15.4.18 新日本製鐵事件)。
参考:出向の概要|厚生労働省
懲戒
「懲戒」とは、労働基準法第89条第9号の「制裁」と同義であり、同条により、当該事業場に懲戒の定めがある場合には、その種類及び程度について就業規則に記載することが義務付けられているものであること(平24.8.10基発0810第2号)。
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⑨ 表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項
懲戒について、判例を確認しておきましょう。
使用者が労働者を懲戒するには,あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことを要する。そして,就業規則が法的規範としての性質を有するものとして,拘束力を生ずるためには,その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていることを要するものというべきである(最判平15.10.10 フジ興産事件)。
従業員が職場で上司に対する暴行事件を起こしたことなどが就業規則所定の懲戒解雇事由に該当するとして、使用者が捜査機関による捜査の結果を待った上で当該事件から7年以上経過した後に諭旨退職処分を行った場合において、当該事件には目撃者が存在しており、捜査の結果を待たずとも使用者において処分を決めることが十分に可能であったこと、当該諭旨退職処分がされた時点で企業秩序維持の観点から重い懲戒処分を行うことを必要とするような状況はなかったことなど判示の事情の下では、当該諭旨退職処分は、権利の濫用として無効である(最判平成18.10.6 ネスレ日本事件)
解雇
第4章 期間の定めのある労働契約
契約期間中の解雇等
使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない(17条1項)。
使用者は、有期労働契約について、その有期労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その有期労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない(17条2項)。
「やむを得ない事由」があるか否かは、個別具体的な事案に応じて判断されるものであるが、契約期間は労働者及び使用者が合意により決定したものであり、遵守されるべきものであることから、「やむを得ない事由」があると認められる場合は、解雇権濫用法理における「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」以外の場合よりも狭いと解されるものであること(平24.8.10基発0810第2号)。
契約期間中であっても一定の事由により解雇することができる旨を労働者及び使用者が合意していた場合であっても、当該事由に該当することをもって法第17条第1項の「やむを得ない事由」があると認められるものではなく、実際に行われた解雇について「やむを得ない事由」があるか否かが個別具体的な事案に応じて判断されるものであること(平24.8.10基発0810第2号)。
参考:労働契約(契約の締結、労働条件の変更、解雇等) |厚生労働省
有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換
同一の使用者との間で締結された2以上の有期労働契約(契約期間の始期の到来前のものを除く。以下この条において同じ。)の契約期間を通算した期間(次項において「通算契約期間」という。)が5年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。この場合において、当該申込みに係る期間の定めのない労働契約の内容である労働条件は、現に締結している有期労働契約の内容である労働条件(契約期間を除く。)と同一の労働条件(当該労働条件(契約期間を除く。)について別段の定めがある部分を除く。)とする(18条1項)。
当該使用者との間で締結された一の有期労働契約の契約期間が満了した日と当該使用者との間で締結されたその次の有期労働契約の契約期間の初日との間にこれらの契約期間のいずれにも含まれない期間(以下この項において「空白期間」という。)があり、当該空白期間が6月以上であるときは、当該空白期間前に満了した有期労働契約の契約期間は、通算契約期間に算入しない(18条2項)。
2以上の有期労働契約の通算契約期間が5年を超える労働者が、期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなされます。この場合、労働条件は、同一の労働条件とされます(18条1項)。
有期労働契約の更新等
有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす(19条)。
① 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。
② 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。
先ほどは、有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換についてでした。今回は、有期労働契約の更新等についてです。過去に反復して更新されたことがあるもので、労働契約を終了させることと社会通念上同視できるものや有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものについては、労働者が有期労働契約の更新の申込みをした場合、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、従前と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなされます。試験対策として、前条と混ぜて「期間の定めのない労働契約への転換」になるわけではない点に注意しましょう。
選択式で出題された雇止めに関する判例をみてみましょう。
最高裁判所は、期間を定めて雇用される臨時員(上告人)の労働契約期間満了により、使用者(被上告人)が行った雇止めが問題となった事件において、次のように判示した。
「⑴上告人は、昭和45年12月1日から同月20日までの期間を定めて被上告人のP工場に雇用され、同月21日以降、期間2か月の本件労働契約が5回更新されて昭和46年10月20日に至つた臨時員である。⑵P工場の臨時員制度は、景気変動に伴う受注の変動に応じて雇用量の調整を図る目的で設けられたものであり、臨時員の採用に当たつては、学科試験とか技能試験とかは行わず、面接において健康状態、経歴、趣味、家族構成などを尋ねるのみで採用を決定するという簡易な方法をとつている。⑶被上告人が昭和45年8月から12月までの間に採用したP工場の臨時員90名のうち、翌46年10月20日まで雇用関係が継続した者は、本工採用者を除けば、上告人を含む14名である。⑷P工場においては、臨時員に対し、例外はあるものの、一般的には前作業的要素の作業、単純な作業、精度がさほど重要視されていない作業に従事させる方針をとつており、上告人も比較的簡易な作業に従事していた。⑸被上告人は、臨時員の契約更新に当たつては、更新期間の約1週間前に本人の意思を確認し、当初作成の労働契約書の「4雇用期間」欄に順次雇用期間を記入し、臨時員の印を押捺せしめていた(もつとも、上告人が属する機械組においては、本人の意思が確認されたときは、給料の受領のために預かつてある印章を庶務係が本人に代わつて押捺していた。)ものであり、上告人と被上告人との間の5回にわたる本件労働契約の更新は、いずれも期間満了の都度新たな契約を締結する旨を合意することによつてされてきたものである。」「P工場の臨時員は、季節的労務や特定物の製作のような臨時的作業のために雇用されるものではなく、その雇用関係はある程度の継続が期待されていたものであり、上告人との間においても5回にわたり契約が更新されているのであるから、このような労働者を契約期間満了によつて雇止めにするに当たつては、解雇に関する法理が類推され、解雇であれば解雇権の濫用、信義則違反又は不当労働行為などに該当して解雇無効とされるような事実関係の下に使用者が新契約を締結しなかつたとするならば、期間満了後における使用者と労働者間の法律関係は従前の労働契約が更新されたのと同様の法律関係となるものと解せられる。」(最判昭61.12.4 日立メディコ事件)
第5章 雑則
適用除外
この法律は、国家公務員及び地方公務員については、適用しない(21条1項)。
この法律は、使用者が同居の親族のみを使用する場合の労働契約については、適用しない(21条2項)。
一点、労働基準法では、「この法律は、同居の親族のみを使用する事業及び家事使用人については、適用しない。」(労働基準法106条2項)と規定されていますが、労働契約法では、家事使用人は規定されていないので、労働者として適用される点に注意しましょう。