【社一】高齢者の医療の確保に関する法律について、後期高齢者医療制度などのまとめ

社会保険に関する一般常識
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社会保険に関する一般常識(社一)から高齢者の医療の確保に関する法律について学習します。高齢者の医療の確保に関する法律は、全8章で構成されています。このうち、中心となるのは、第4章「後期高齢者医療制度」です。なお、試験対策の点から、第5章以降は省略します。

第1章 総則

目的

この法律は、国民の高齢期における適切な医療の確保を図るため、医療費の適正化を推進するための計画の作成及び保険者による健康診査等の実施に関する措置を講ずるとともに、高齢者の医療について、国民の共同連帯の理念等に基づき、前期高齢者に係る保険者間の費用負担の調整後期高齢者に対する適切な医療の給付等を行うために必要な制度を設け、もって国民保健の向上及び高齢者の福祉の増進を図ることを目的とする(1条)。

高齢者の医療の確保に関する法律は、前期高齢者、後期高齢者について定めているということをおさえておきましょう。

基本的理念

国民は、自助と連帯の精神に基づき、自ら加齢に伴って生ずる心身の変化を自覚して常に健康の保持増進に努めるとともに、高齢者の医療に要する費用を公平に負担するものとする(2条1項)。

国民は、年齢、心身の状況等に応じ、職域若しくは地域又は家庭において、高齢期における健康の保持を図るための適切な保健サービスを受ける機会を与えられるものとする(2条2項)。

高齢者の医療の確保に関する法律は、自ら常に健康の保持増進に務めること、高齢者の医療に要する費用を公平に負担することを基本的理念としています。

国の責務

は、国民の高齢期における医療に要する費用の適正化を図るための取組が円滑に実施され、高齢者医療制度の運営が健全に行われるよう必要な各般の措置を講ずるとともに、目的の達成に資するため、医療、公衆衛生、社会福祉その他の関連施策を積極的に推進しなければならない(3条)。

国は、「必要な各般の措置」を講じます。国民健康保険法のところでも出てきたキーワードなので、おさえておきましょう。

地方公共団体の責務

地方公共団体は、この法律の趣旨を尊重し、住民の高齢期における医療に要する費用の適正化を図るための取組及び高齢者医療制度の運営が適切かつ円滑に行われるよう所要の施策を実施しなければならない(4条1項)。

住民の高齢期における医療に要する費用の適正化を図るための取組においては、都道府県は、当該都道府県における医療提供体制の確保並びに当該都道府県及び当該都道府県内の市町村の国民健康保険事業の健全な運営を担う責務を有することに鑑み、保険者、後期高齢者医療広域連合、医療関係者その他の関係者の協力を得つつ、中心的な役割を果たすものとする(4条2項)。

前条を受けて、地方公共団体は、「所要の施策」を実施します。都道府県が、「中心的な役割」を果たすという点をおさえておきましょう。この言い回しも国民健康保険法と同じです。

保険者の責務

保険者は、加入者の高齢期における健康の保持のために必要な事業を積極的に推進するよう努めるとともに、高齢者医療制度の運営が健全かつ円滑に実施されるよう協力しなければならない(5条)。

第2章 医療費適正化の推進

医療費適正化基本方針及び全国医療費適正化計画

厚生労働大臣は、国民の高齢期における適切な医療の確保を図る観点から、医療費適正化を総合的かつ計画的に推進するため、医療費適正化に関する施策についての基本的な方針(医療費適正化基本方針)を定めるとともに、6年ごとに、6年を1期として、医療費適正化を推進するための計画(全国医療費適正化計画)を定めるものとする。(8条1項)。

都道府県医療費適正化計画

都道府県は、医療費適正化基本方針に即して、6年ごとに、6年を1期として、当該都道府県における医療費適正化を推進するための計画(都道府県医療費適正化計画)を定めるものとする(9条1項)。

都道府県は、都道府県医療費適正化計画を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表するよう努めるとともに、厚生労働大臣に提出するものとする(同条8項)。

厚生労働大臣が、「医療費適正化基本方針」を定め、6年ごとに「全国医療費適正化計画」を定めます。そして、これを受けて、都道府県は、6年ごとに「都道府県医療費適正化計画」を定めます。

特定健康診査等基本指針

厚生労働大臣は、特定健康診査(糖尿病その他の政令で定める生活習慣病に関する健康診査をいう。以下同じ。)及び特定保健指導(特定健康診査の結果により健康の保持に努める必要がある者として厚生労働省令で定めるものに対し、保健指導に関する専門的知識及び技術を有する者として厚生労働省令で定めるものが行う保健指導をいう。以下同じ。)の適切かつ有効な実施を図るための基本的な指針(特定健康診査等基本指針)を定めるものとする(18条1項)。

特定健康診査等実施計画

保険者は、特定健康診査等基本指針に即して、6年ごとに、6年を1期として、特定健康診査等の実施に関する計画(特定健康診査等実施計画)を定めるものとする(19条1項)。

厚生労働大臣が「特定健康診査等基本指針」を定め、保険者が6年ごとに「特定健康診査等実施計画」を定めます。

特定健康診査

保険者は、特定健康診査等実施計画に基づき、40歳以上の加入者に対し、特定健康診査を行うものとする。ただし、加入者が特定健康診査に相当する健康診査を受け、その結果を証明する書面の提出を受けたとき、又は特定健康診査に関する記録の送付を受けたときは、この限りでない(20条)。

第3章 前期高齢者に係る保険者間の費用負担の調整

前期高齢者交付金

支払基金は、各保険者に係る加入者の数に占める前期高齢者である加入者(65歳に達する日の属する月の翌月以後である加入者であって、75歳に達する日の属する月以前であるものその他厚生労働省令で定めるものをいう。以下同じ。)の数の割合に係る負担の不均衡を調整するため、保険者に対して、前期高齢者交付金を交付する(32条)。

支払基金社会保険診療報酬支払基金)とは、診療担当者に対して診療報酬の迅速適正な支払を行い、また、診療担当者から提出された診療報酬請求書の審査などを行うことを目的とする法人です。

前期高齢者とは、「65歳に達する日の属する月の翌月以後である加入者であって、75歳に達する日の属する月以前であるもの」という点をおさえておきましょう。

支払基金は、保険者に対して、前期高齢者交付金を交付します。

前期高齢者納付金等の徴収及び納付義務

支払基金は、業務及び当該業務に関する事務の処理に要する費用に充てるため、年度ごとに、保険者から前期高齢者納付金及び前期高齢者関係事務費拠出金(前期高齢者納付金等)を徴収する。(36条1項)。

保険者は、前期高齢者納付金等を納付する義務を負う(36条2項)。

国民健康保険法でも、市町村から国民健康保険事業費納付金を徴収し、市町村に対し、国民健康保険保険給付費等交付金を交付する仕組みがあった点をおさらいしましょう。

第4章 後期高齢者医療制度

後期高齢者医療

後期高齢者医療は、高齢者の疾病負傷又は死亡に関して必要な給付を行うものとする(47条)。

広域連合の設立

市町村は、後期高齢者医療の事務を処理するため、都道府県の区域ごとに当該区域内のすべての市町村が加入する広域連合(後期高齢者医療広域連合)を設けるものとする(48条)。

被保険者

次の各号のいずれかに該当する者は、後期高齢者医療広域連合が行う後期高齢者医療の被保険者とする(50条各号)。

① 後期高齢者医療広域連合の区域内に住所を有する75歳以上の者
② 後期高齢者医療広域連合の区域内に住所を有する65歳以上75歳未満の者であって、政令で定める程度の障害の状態にある旨の当該後期高齢者医療広域連合の認定を受けたもの

前期高齢者が65歳以上、後期高齢者が75歳以上と整理しておきましょう。また、65歳以上でも、一定の障害の状態にある旨の当該後期高齢者医療広域連合の認定を受けたものは後期高齢者となります。

適用除外

次の各号のいずれかに該当する者は、後期高齢者医療広域連合が行う後期高齢者医療の被保険者としない(51条)。
① 生活保護法による保護を受けている世帯(その保護を停止されている世帯を除く。)に属する者
② 前号に掲げるもののほか、後期高齢者医療の適用除外とすべき特別の理由がある者で厚生労働省令で定めるもの

生活保護を受けている世帯は、生活保護の方で支援が受けられるため、後期高齢者としては適用除外となります。

資格取得の時期

後期高齢者医療広域連合が行う後期高齢者医療の被保険者は、次の各号のいずれかに該当するに至った日又は前条各号のいずれにも該当しなくなった日から、その資格を取得する(52条)。
① 当該後期高齢者医療広域連合の区域内に住所を有する者が75歳に達したとき。
② 75歳以上の者が当該後期高齢者医療広域連合の区域内に住所を有するに至ったとき。
③ 当該後期高齢者医療広域連合の区域内に住所を有する65歳以上75歳未満の者が、第50条第2号の認定[後期高齢者医療広域連合の認定]を受けたとき。

資格喪失の時期

後期高齢者医療広域連合が行う後期高齢者医療の被保険者は、当該後期高齢者医療広域連合の区域内に住所を有しなくなった日若しくは第50条第2号の状態に該当しなくなった日又は第51条第2号に掲げる者に該当するに至った日の翌日から、その資格を喪失する。ただし、当該後期高齢者医療広域連合の区域内に住所を有しなくなった日に他の後期高齢者医療広域連合の区域内に住所を有するに至ったときは、その日から、その資格を喪失する(53条1項)。

資格取得や資格喪失の時期は難しく感じますが、いつも通り、被保険者の要件をおさえて、要件に該当するときに資格取得をして、該当しなくなったときに資格喪失するといったように考えましょう。

届出等

被保険者は、被保険者の資格の取得及び喪失に関する事項その他必要な事項を後期高齢者医療広域連合に届け出なければならない(54条1項)。

被保険者の属する世帯の世帯主は、その世帯に属する被保険者に代わって、当該被保険者に係る届出をすることができる(54条2項)。

被保険者は、資格の得喪等に関して、届出をします。また、後期高齢者は自身で届出をすることが困難であることも考えられるため、世帯主が届出をすることもできるようになっています。

後期高齢者医療給付の種類

被保険者に係る後期高齢者医療給付は、次のとおりとする(56条)。

① 療養の給付並びに入院時食事療養費入院時生活療養費保険外併用療養費療養費訪問看護療養費特別療養費及び移送費の支給
② 高額療養費及び高額介護合算療養費の支給
③ 前2号に掲げるもののほか、後期高齢者医療広域連合の条例で定めるところにより行う給付

健康保険とほとんど同じであることがわかります。

不正利得の徴収等

偽りその他不正の行為によつて後期高齢者医療給付を受けた者があるときは、後期高齢者医療広域連合は、その者からその後期高齢者医療給付の価額の全部又は一部を徴収することができる(59条1項)。

一部負担金

保険医療機関等について療養の給付を受ける者は、その給付を受ける際、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該給付につき療養の給付に要する費用の額の算定に関する基準により算定した額に当該各号に定める割合を乗じて得た額を、一部負担金として、当該保険医療機関等に支払わなければならない(67条1項、政令67条2項、同条4項)。

① 次号及び第3号に掲げる場合以外の場合 100分の10
② 当該療養の給付を受ける者又はその属する世帯の他の世帯員である被保険者その他政令で定める者について所得の額が政令で定める額[28万円]以上である場合(次号に掲げる場合を除く。) 100分の20
③ 当該療養の給付を受ける者又はその属する世帯の他の世帯員である被保険者その他政令で定める者について政令で定めるところにより算定した所得の額が前号の政令で定める額を超える政令で定める額[145万円]以上である場合 100分の30

一部負担金は、原則100分の10です。健康保険では、原則100分の30、70歳以上は原則100分の20でした。一方、後期高齢者は、原則100分の10、所得の額が28万円以上が100分の20、145万円以上が100分の30になります。政令の額までおさえる必要性は低いですが、原則が100分の10で、所得に応じて上がるという点をおさえておきましょう。

その他の後期高齢者医療給付

後期高齢者医療広域連合は、被保険者の死亡に関しては、条例の定めるところにより、葬祭費の支給又は葬祭の給付を行うものとする。ただし、特別の理由があるときは、その全部又は一部を行わないことができる(86条1項)。

後期高齢者医療広域連合は、前項の給付のほか、後期高齢者医療広域連合の条例の定めるところにより、傷病手当金の支給その他の後期高齢者医療給付を行うことができる(86条2項)。

国民健康保険法と同じように、前述の療養の給付等は必ず行い、葬祭費の支給又は葬祭の給付は原則行いますが、特別の理由があるときは、全部又は一部を行わないことができます。また、傷病手当金の支給などは、任意で行うことができます。国民健康保険法では、出産育児一時金の支給がありましたが、後期高齢者は出産が関係することは考えにくいため、含まれていません。

国の負担

国は、後期高齢者医療広域連合に対し、負担対象総額の12分の3に相当する額を負担する(93条1項)。

調整交付金

国は、後期高齢者医療の財政を調整するため、後期高齢者医療広域連合に対して調整交付金を交付する(95条1項)。

調整交付金の総額は、負担対象総額の見込額の総額の12分の1に相当する額とする(95条2項)。

国は、後期高齢者医療広域連合に対し、合計で12分の4を負担しているとおさえましょう。

都道府県の負担

都道府県は、後期高齢者医療広域連合に対し、負担対象総額の12分の1に相当する額を負担する(96条1項)。

市町村の一般会計における負担

市町村は、後期高齢者医療広域連合に対し、その一般会計において、負担対象総額の12分の1に相当する額を負担する(98条)。

都道府県、市町村は、それぞれ12分の1に相当する額を負担します。これで、国(12分の4)、都道府県(12分の1)、市町村(12分の1)を合わせて、半分(12分の6)を公費で負担していることがわかりました。

保険料

市町村は、後期高齢者医療に要する費用に充てるため、保険料を徴収しなければならない(104条1項)。

保険料率は、療養の給付等に要する費用の額の予想額、財政安定化基金拠出金、拠出金及び出産育児支援金並びに流行初期医療確保拠出金等の納付に要する費用の予想額、都道府県からの借入金の償還に要する費用の予定額、高齢者保健事業及び事業に要する費用の予定額、被保険者の所得の分布状況及びその見通し、国庫負担並びに後期高齢者交付金等の額等に照らし、おおむね2年を通じ財政の均衡を保つことができるものでなければならない(104条3項)。

保険料等の徴収の方法

市町村による保険料の徴収については、特別徴収(市町村が老齢等年金給付を受ける被保険者から年金保険者に保険料を徴収させ、かつ、その徴収すべき保険料を納入させることをいう。以下同じ。)の方法による場合を除くほか、普通徴収(市町村が、保険料を課せられた被保険者又は当該被保険者の属する世帯の世帯主若しくは当該被保険者の配偶者に対し、納入の通知をすることによって保険料を徴収することをいう。以下同じ。)の方法によらなければならない(107条1項)。

普通徴収に係る保険料の納付義務

被保険者は、市町村がその者の保険料を普通徴収の方法によって徴収しようとする場合においては、当該保険料を納付しなければならない(108条1項)。

世帯主は、市町村が当該世帯に属する被保険者の保険料を普通徴収の方法によって徴収しようとする場合において、当該保険料を連帯して納付する義務を負う(同条2項)。

配偶者の一方は、市町村が被保険者たる他方の保険料を普通徴収の方法によって徴収しようとする場合において、当該保険料を連帯して納付する義務を負う(同条3項)。

他の法律と同じように考えることができます。

審査請求

後期高齢者医療給付に関する処分(被保険者証の交付の請求又は返還に関する処分を含む。)又は保険料その他徴収金に関する処分に不服がある者は、後期高齢者医療審査会審査請求をすることができる(128条)。

このあたりは、国民健康保険法と同じように考えることができます。

第5章 社会保険診療報酬支払基金の高齢者医療制度関係業務

※省略

第6章 国民健康保険団体連合会の高齢者医療関係業務

※省略

第7章 雑則

※省略

第8章 罰則

※省略

SOMEYA, M.

東京都生まれ。沖縄県在住。社会保険労務士試験対策について発信しているブログです。【好きなもの】沖縄料理・ちゅらさん・Cocco・龍が如く3

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