社会保険に関する一般常識から児童手当法について学習します。児童手当法は全4章で構成される小さな法律です。本試験対策として、児童手当の額、費用の負担を中心におさえましょう。
目次
第1章 総則
目的
児童手当法は、児童を養育している者に児童手当を支給することについて、定めています。
定義
児童は、18歳年度末までという点をおさえましょう。
第2章 児童手当の支給
支給要件
児童手当は、次の各号のいずれかに該当する者に支給する(4条1項)。【改正】
① 施設入所等児童以外の児童を監護し、かつ、これと生計を同じくする父母等であつて、日本国内に住所を有するもの
② 日本国内に住所を有しない父母等がその生計を維持している支給要件児童と同居し、これを監護し、かつ、これと生計を同じくする者のうち、当該支給要件児童の生計を維持している父母指定者
③ 父母等又は父母指定者のいずれにも監護されず又はこれらと生計を同じくしない支給要件児童を監護し、かつ、その生計を維持する者であつて、日本国内に住所を有するもの
④ 障害児入所施設等の設置者
細かく覚える必要はないので、児童手当は、父母等に支給するという点をおさえておきましょう。また、改正により、所得制限がなくなったことに注意しましょう。
児童手当の額
児童手当は、月を単位として支給するものとし、その額は、一月につき、次の各号に掲げる児童手当の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める額とする(6条1項)。
児童手当の額は、条文だと理解しにくいので、試験対策上必要な範囲でまとめます。
① 子の数は、22歳年度末までの者を数えます。
② 児童手当の対象となる「児童」は、18歳年度末までの者です(3条1項)。
③ 児童手当の額は、3歳未満が1人あたり月額15,000円、3歳以上が1人あたり月額10,000円です。
④ 第3子以降は、1人あたり月額30,000円です。
いくつか例をみてみましょう。
20歳、12歳、6歳の場合
→0円(第1子20歳)、1万円(第2子12歳)、3万円(第3子以降6歳)=4万円
20歳は子の数に入れますが(22歳未満)、18歳未満ではないので児童手当の対象にはなりません。12歳は3歳以上なので1万円になります。6歳は第3子なので年齢にかかわらず3万円になります。
17歳、9歳、1歳の場合
→1万円(第1子17歳)、1万円(第2子9歳)、3万円(第3子以降1歳)=5万円
17歳は3歳以上なので1万円になります。9歳も3歳以上なので1万円になります。1歳は第3子なので年齢にかかわらず3万円になります。
25歳、20歳、15歳の場合
→0円(第1子20歳)、1万円(第2子15歳)=1万円
25歳は22歳未満ではないので子の数に入れません。20歳は子の数に入れますが(22歳未満)、18歳未満ではないので児童手当の対象にはなりません。15歳は3歳以上なので1万円になります。25歳が子に入らないため、2人目として計算される点に注意しましょう。
認定
支給及び支払
市町村長は、認定をした受給資格者に対し、児童手当を支給する(8条1項)。
児童手当の支給は、受給資格者が認定の請求をした日の属する月の翌月から始め、児童手当を支給すべき事由が消滅した日の属する月で終わる(8条2項)。
児童手当は、毎年2月、4月、6月、8月、10月及び12月の6期に、それぞれの前月までの分を支払う。ただし、前支払期月に支払うべきであった児童手当又は支給すべき事由が消滅した場合におけるその期の児童手当は、その支払期月でない月であっても、支払うものとする(8条4項)。【改正】
児童手当の額の改定
児童手当の支給を受けている者につき、児童手当の額が増額することとなるに至った場合における児童手当の額の改定は、その者がその改定後の額につき認定の請求をした日の属する月の翌月から行う(9条1項)。
児童手当の支給を受けている者につき、児童手当の額が減額することとなるに至った場合における児童手当の額の改定は、その事由が生じた日の属する月の翌月から行う(9条3項)。
基本的に年金と同じように考えることができます。
支給の制限
児童手当は、受給資格者が、正当な理由がなくて、命令に従わず、又は職員の質問に応じなかったときは、その額の全部又は一部を支給しないことができる(10条)。
児童手当の支給を受けている者が、正当な理由がなくて、届出をせず、又は書類を提出しないときは、児童手当の支払を一時差しとめることができる(11条)。
未支払の児童手当
支払の調整
不正利得の徴収
偽りその他不正の手段により児童手当の支給を受けた者があるときは、市町村長は、地方税の滞納処分の例により、受給額に相当する金額の全部又は一部をその者から徴収することができる(14条1項)。
徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする(14条2項)。
受給権の保護
公課の禁止
このあたりは他の法律と同じように考えることができます。
第3章 費用
児童手当に要する費用の負担
被用者(保険料を負担し、又は納付する義務を負う被保険者であって公務員でない者をいう。以下同じ。)に対する3歳未満児童手当の支給に要する費用は、その全額につき国からの交付金をもって充てる。(18条1項)。
被用者等でない者(被用者又は公務員でない者をいう。以下同じ。)に対する3歳未満児童手当の支給に要する費用は、その15分の13に相当する額につき国からの交付金を、15分の1に相当する額につき都道府県からの交付金をもって充てるものとし、費用の15分の1に相当する額を市町村が負担する。(18条2項)。
被用者及び被用者等でない者に対する3歳以上児童手当の支給に要する費用は、その9分の7に相当する額につき国からの交付金を、9分の1に相当する額につき都道府県からの交付金をもって充てるものとし、費用の9分の1に相当する額につき市町村が負担する(18条3項)。
次に掲げる児童手当の支給に要する費用は、それぞれ当該各号に定める者が負担する(18条4項)。
① 各省各庁の長が認定をした国家公務員に対する児童手当の支給に要する費用 国
② 都道府県知事が認定をした地方公務員に対する児童手当の支給に要する費用 当該都道府県
③ 市町村長が認定をした地方公務員に対する児童手当の支給に要する費用 当該市町村
国庫は、毎年度、予算の範囲内で、児童手当に関する事務の執行に要する費用を負担する(18条5項)。
費用負担について、まとめます。
1項について、被用者に対する3歳未満児童手当の支給に要する費用は、国からの交付金をもって充てます。(18条1項)。児童手当は市町村長が支給するため(8条1項)、交付金は市町村に交付します。
2項について、被用者等でない者に対する3歳未満児童手当の支給に要する費用は、15分の13が国からの交付金、15分の1が都道府県からの交付金、15分の1を市町村が負担します。(18条2項)。
1項と2項は、3歳未満児童手当の費用負担について定めており、被用者(1項)と被用者等でないもの(2項)で分かれています。
3項について、3歳以上児童手当の支給に要する費用は、9分の7が国からの交付金、9分の1が都道府県からの交付金、9分の1を市町村が負担します。
4項について、公務員の児童手当は、それぞれ認定をした国、都道府県、市町村が負担します。
第4章 雑則
児童手当に係る寄附
受給資格者が、次代の社会を担う児童の健やかな成長を支援するため、当該受給資格者に児童手当を支給する市町村に対し、当該児童手当の支払を受ける前に、当該児童手当の額の全部又は一部を当該市町村に寄附する旨を申し出たときは、当該市町村は、当該寄附を受けるため、当該受給資格者が支払を受けるべき児童手当の額のうち当該寄附に係る部分を、当該受給資格者に代わって受けることができる(20条1項)。
市町村は、前項の規定により受けた寄附を、次代の社会を担う児童の健やかな成長を支援するために使用しなければならない(20条2項)。
受給権者は、児童手当を寄附することができます。
時効
児童手当の支給を受ける権利及び徴収金を徴収する権利は、これらを行使することができる時から2年を経過したときは、時効によって消滅する(23条1項)。