※現在リライト中です
雇用保険法の失業等給付から教育訓練給付について解説します。
教育訓練給付金
教育訓練給付金は、次の各号のいずれかに該当する者(以下「教育訓練給付対象者」という。)が、厚生労働省令で定めるところにより、雇用の安定及び就職の促進を図るために必要な職業に関する教育訓練として厚生労働大臣が指定する教育訓練を受け、当該教育訓練を修了した場合において、支給要件期間が3年以上であるときに、支給する(60条の2第1項各号、規則101条の2の5、規則附則24条)。
① 当該教育訓練を開始した日(以下この条において「基準日」という。)に一般被保険者又は高年齢被保険者である者
② 基準日が当該基準日の直前の一般被保険者又は高年齢被保険者でなくなった日から厚生労働省令で定める期間内にあるもの
教育訓練給付金は、60条の2と60条の3において定められていますが、法律のほかに多くのことが規則で定められています。そこで、ひとつずつ確認していきましょう。
まず、教育訓練給付金は、教育訓練給付対象者が、①教育訓練を受け、修了し、②支給要件期間が3年以上であるときに支給されます。
次に、教育訓練給付対象者は、①教育訓練を開始した日(基準日)に一般被保険者または高年齢被保険者であるものが対象です。現在は、高年齢(65歳以上)あっても新しいことを学ぶのに遅すぎることはないため、高年齢被保険者も対象となっている点をおさえましょう。また、②基準日の直前に一般被保険者または高年齢被保険者でなくなった日から一定の期間内にあるものも対象となります。今は被保険者ではないけれど、前に被保険者であったものも対象となるということです。
それでは、「厚生労働省令で定める期間内」について見てみましょう。
厚生労働省令で定める期間は、原則として1年です。一般被保険者と高年齢被保険者でなくなった日から1年の期間内にあるものも教育訓練給付金の対象になります。
括弧書きについて見てみましょう。妊娠等やむを得ないと認める理由により引き続き30日以上教育訓練を開始することができない者が、妊娠等に至った日の翌日(例:令和6年4月1日)から、被保険者でなくなった日(例:令和10年9月1日)から起算して20年を経過する日(例:令和30年8月31日)までの間に管轄公共職業安定所の長にその旨を申し出た場合には、教育訓練を開始することができない日数を加算します。
20年と長い期間が設定されているのは、たとえば、妊娠をした場合、妊娠が終わった、つまり、出産をしたからといってすぐに働けるわけではないからです。また、出産をしても育児がある期間も教育訓練を受けるのは困難であることが考慮されています。ようやく子どもが親の手を離れた頃、教育訓練給付金の支給対象外となってしまっては、雇用の安定や就職の促進を図ることができなくなってしまいます。そこで、20年という長い期間が設定されています。
ただ、この加算された期間、妊娠等に該当する至った日の翌日から、被保険者でなくなった日から起算して20年を経過するまでの間が20年に満たない場合は、その満たない期間となります。不必要に20年まで伸ばす理由はないと考えると理解できると思います。反対に、20年を超えるときは、20年とします。つまり、最大で20年までということです。
一点、社労士の試験において、条文の読み方が複雑な部分があるので補則します。おそらく、初めて条文を読むとき、「から」が2つあって、読みにくいと思います。まず、最初の「から」が起算点です。ここでは、「当該者に該当するに至った日の翌日『から』」が起算点になります。そして、期間の終わりは、「被保険者でなくなった日から起算して20年を経過する日まで」です。
ここまでで、「教育訓練給付対象者」が整理できました。
次に、厚生労働大臣が指定する教育訓練は、特に覚える必要はありませんが、厚生労働省の「教育訓練給付」のページで確認することができるので、どのようなものがあるか見ておくのもよいでしょう。
そして、この教育訓練を修了した場合において、支給要件期間が3年以上であるときに、支給されます。ただ、ここは規則で、「初めて教育訓練給付金の支給をうけることとなるものについては、支給要件が1年(専門実践教育訓練に係る教育訓練給付金にあっては、2年)以上であるときに、支給される。」と、支給要件が緩和されています。
特定一般教育訓練期間中に被保険者資格を喪失した場合であっても、対象特定一般教育訓練開始日において支給要件期間を満たす者については、対象特定一般教育訓練に係る修了の要件を満たす限り、特定一般教育訓練給付金の支給対象となる(行政手引58151)。
支給要件期間は、教育訓練給付対象者が基準日までの間に同一の事業主の適用事業に引き続いて被保険者として雇用された期間とする。ただし、当該期間に次の各号に掲げる期間が含まれているときは、当該各号に掲げる期間に該当する全ての期間を除いて算定した期間とする(60条の2第2項各号)。
① 当該雇用された期間又は当該被保険者であった期間に係る被保険者となった日の直前の被保険者でなくなった日が当該被保険者となった日前1年の期間内にないときは、当該直前の被保険者でなくなった日前の被保険者であった期間
② 当該基準日前に教育訓練給付金の支給を受けたことがあるときは、当該給付金に係る基準日前の被保険者であった期間
ここは、一般被保険者の基本手当の算定基礎期間と同じように考えることができます。①1年の期間内にないとき、②教育訓練給付金の支給を受けたことがあるときは、その期間は除きます。
教育訓練給付金の額は、規則で細かく規定されていますが、ここでは割愛します。それぞれの訓練ごとに覚えられる余力がある方は、基本書等で確認してみましょう。
厚生労働省令で定める費用の範囲は、次の各号に掲げるものとする(101条の2の6)。
① 入学料及び受講料
② 一般教育訓練の受講開始日前1年以内にキャリアコンサルタントが行うキャリアコンサルティングを受けた場合は、その費用(その額が2万円を超えるときは、2万円)
教育訓練の受講のために支払った費用について、本試験対策としては、交通費やパソコン代などは対象外である点をおさえておきましょう。
教育訓練給付金の額が4,000円を超えないとき、3年内に教育訓練給付金の支給を受けたことがあるときは、教育訓練給付金は支給しません。新たに3年分被保険者期間をつくる必要があります。
教育訓練給付金の支給申請手続
規則で定められているところですが、教育訓練給付金の支給申請手続について、本試験で頻出なので、整理しておきます。
まず、教育訓練給付金の対象となる教育訓練には3つの種類があります。
一般教育訓練:雇用の安定及び就職の促進を図るために必要な職業に関する教育訓練として厚生労働大臣が指定する教育訓練(例:TOEICや簿記などの資格の取得を目標とする講座)
特定一般教育訓練:雇用の安定及び就職の促進を図るために必要な職業に関する教育訓練のうち速やかな再就職及び早期のキャリア形成に資する教育訓練として厚生労働大臣が指定する教育訓練(例:第二種免許など業務独占資格などの取得を目標とする講座)
専門実践教育訓練:雇用の安定及び就職の促進を図るために必要な職業に関する教育訓練のうち中長期的なキャリア形成に資する専門的かつ実践的な教育訓練として厚生労働大臣が指定する教育訓練(例:看護師、美容師などの業務独占資格を目標とする講座、情報通信技術関係資格などデジタル関係の講座)
一般→特定一般→専門実践となるにつれて、専門性が上がっていくのがわかります。そして、この教育訓練ごとに手続が異なっています。
一般教育訓練は、一般教育訓練を修了した日の翌日から起算して1箇月以内に、申請書等を管轄公共職業安定所の長に提出しなければなりません。なお、添付書類は覚える必要はありません。
支給申請は、本人自身が安定所に出頭して行うほか、代理人(提出代行を行う社会保険労務士を含む。)、郵送又は電子申請により行うこととしても差し支えない(代理人による申請の場合は委任状を必要とする。)(行政手引58015)。
特定一般教育訓練は、特定一般教育訓練を開始する日の14日前までにキャリアコンサルティングを踏まえて記載した職務経歴等記録書等を提出しなければなりません。特定一般教育訓練は、一般教育訓練より多くの給付金が支給されるため、事前になっています。
専門実践教育訓練の場合も、専門実践教育訓練を開始する日の14日前までに書類を提出しなければなりません。
教育訓練給付金の支給申請手続についてまとめます。
- 一般教育訓練:一般教育訓練を修了した日の翌日から起算して1箇月以内
- 特定一般教育訓練:特定一般教育訓練を開始する日の14日前まで
- 専門実践教育訓練:専門実践教育訓練を開始する日の14日前まで
一般教育訓練は事後、特定一般教育訓練と専門実践教育訓練は事前という部分が本試験では頻出なので、この点だけおさえておきましょう。
※専門附則確認
給付制限
偽りその他不正の行為により教育訓練給付金の支給を受け、又は受けようとした者には、当該給付金の支給を受け、又は受けようとした日以後、教育訓練給付金を支給しない。ただし、やむを得ない理由がある場合には、教育訓練給付金の全部又は一部を支給することができる(60条の3第1項)。
教育訓練給付金の支給を受けることができない者とされたものが、新たに教育訓練給付金の支給を受けることができる者となった場合には、教育訓練給付金を支給する(60条の3第2項)。
給付制限については、求職者給付と同じ規定がされています。