民事訴訟法の口頭弁論及びその準備から口頭弁論について解説します。
第3章「口頭弁論及びその準備」は、口頭弁論、準備書面等、争点及び証拠の整理手続等の3節に分かれており、さらに争点及び証拠の整理手続等は、準備的口頭弁論など3つに分かれています。そこで、全体像を明確にするため、本章は3つに分けて解説します。
裁判長の訴訟指揮権
口頭弁論は、裁判長が指揮する(148条1項)。
裁判長は、発言を許し、又はその命令に従わない者の発言を禁ずることができる(148条2項)。
釈明処分
裁判所は、訴訟関係を明瞭にするため、次に掲げる処分をすることができる(151条1項)。
① 当事者本人又はその法定代理人に対し、口頭弁論の期日に出頭することを命ずること。
② 口頭弁論の期日において、当事者のため事務を処理し、又は補助する者で裁判所が相当と認めるものに陳述をさせること。
③ 訴訟書類又は訴訟において引用した文書その他の物件で当事者の所持するものを提出させること。
④ 当事者又は第三者の提出した文書その他の物件を裁判所に留め置くこと。
⑤ 検証をし、又は鑑定を命ずること。
⑥ 調査を嘱託すること。
口頭弁論の再開
訴状等の陳述の擬制
原則として、判決をするには、口頭弁論をすることが必要でした。しかし、この原則を貫くと、訴訟を進めることができなくなります。そこで、最初にすべき口頭弁論の期日だけは、当事者の一方が欠席した場合、訴状又は答弁書その他の準備書面に記載した事項を陳述したものとみなします。これを陳述擬制といいます。なお、口頭主義が骨抜きになってしまうため、2回目以降の陳述擬制は認められません。
準備書面については、次の「第2節 準備書面等」で見てみましょう。ここでは、最初にすべき口頭弁論の期日では、陳述擬制が認められるということを押さえておきましょう。
自白の擬制
当事者が口頭弁論において相手方の主張した事実を争うことを明らかにしない場合には、その事実を自白したものとみなす。ただし、弁論の全趣旨により、その事実を争ったものと認めるべきときは、この限りでない(159条1項)。
相手方の主張した事実を知らない旨の陳述をした者は、その事実を争ったものと推定する(159条2項)。
第1項の規定は、当事者が口頭弁論の期日に出頭しない場合について準用する。ただし、その当事者が公示送達による呼出しを受けたものであるときは、この限りでない(159条3項)。
自白とは、相手方の主張する自己に不利益な事実を認めて争わない旨の陳述のことをいいます。相手方の主張した事実を争うことを明らかにしない場合には、その事実を自白したものとみなします。
弁論の全趣旨とは、弁論の内容だけでなく、当事者の態度など、口頭弁論に現れたいっさいの資料のことをいいます。弁論の全趣旨により事実を争ったものと認めるときは、自白とはみなされません。
相手方の主張した事実を知らない旨の陳述をした者は、その事実を争ったものと推定されます。1項の沈黙が自白したものとみなされるのに対し、2項の不知が争ったものと推定されることを押さえておきましょう。
そして、陳述擬制に続き、2回目以降の口頭弁論の期日に当事者の一方が欠席した場合についての規定が定められています。第1項の規定は、当事者が口頭弁論の期日に出頭しない場合について準用する、つまり、2回目以降の欠席の場合は、自白したものとみなされます。
ただし、公示送達の場合は、自白したものとみなされません。公示送達は、裁判所の掲示板にするものでした。公示送達では、相手方が口頭弁論期日を知る可能性は限りなく低いので、自白とはみなさないようになっています。
口頭弁論調書
裁判所書記官は、裁判手続に関する記録等の作成・保管,民事訴訟法や刑事訴訟法といった手続法で定められた事務及び裁判官の行う法令や判例の調査の補助といった仕事をします(裁判所法60条)。裁判所書記官が、口頭弁論について、調書を作成します。
参考:裁判所書記官 | 裁判所
口頭弁論の方式に関する規定の遵守、たとえば、当事者が出頭したなどは、調書によってのみ証明されます。