不動産登記法の登記手続の権利に関する登記の用益権に関する登記から地役権について学習します。
地役権の登記の登記事項
承役地についてする地役権の登記の登記事項は、第59条各号[権利に関する登記の登記事項]に掲げるもののほか、次のとおりとする(80条1項)。
① 要役地
② 地役権設定の目的及び範囲
③ 民法第281条第1項ただし書若しくは第285条第1項ただし書の別段の定め又は同法第286条の定めがあるときは、その定め
前項の登記においては、第59条第4号の規定にかかわらず、地役権者の氏名又は名称及び住所を登記することを要しない(80条2項)。
要役地に所有権の登記がないときは、承役地に地役権の設定の登記をすることができない(80条3項)。
登記官は、承役地に地役権の設定の登記をしたときは、要役地について、職権で、法務省令で定める事項を登記しなければならない(80条4項)。
まず、用語を整理しましょう。
要役地(ようえきち)とは、地役権者の土地であって、他人の土地から便益を受けるものをいいます(民法281条1項括弧書)。
承役地(しょうえきち)とは、地役権者以外の者の土地であって、要役地の便益に供されるものをいいます(民法285条1項括弧書)。
地役権は、承役地、つまり使われる側の土地に登記をします。たとえば、「この土地(承役地)は、要役地のために、通行のために、全部の範囲において使われます」ということを公示します。
これを前提にすると、何を登記するかが理解しやすいと思います。
1号:要役地
1号について、要役地を登記します。
2号:目的、範囲
2号について、地役権の目的と範囲を登記します。目的は「通行」などと記載します。範囲は、地役権設定の範囲が承役地の一部であるときは、地役権図面を提供します(政令別表35)。範囲が全部のときはひと通りしかありませんが、一部のときは、どの部分が使われるかを明確にする必要があるからです。
【申請書の例】
範囲 全部
3号:民法第281条第1項ただし書等
3号について、民法を確認しましょう。
地役権は、所有権とともに移転します。たとえば、要役地の日照を確保するために地役権を設定したとき、要役地の所有者が変わったら日照を確保する必要がないかというとそうではありません。このことから、地役権は、人のための権利ではなく、土地のための権利と言われることがあります。もっとも、地役権設定時に別段の定めがあるときは、移転しないといった定めをすることもできます。
285条、286条については、ひととおり条文を確認しておけば問題ありません。これらについて、定めがあるときは、その定めについて登記をします。
2項
地役権の登記では、地役権者の氏名等は登記しません。前述のように誰が地役権者かということより、どの土地のためにどのように使われるかということがわかればよいからです。これで、土地のための権利ということがより理解できたと思います。