書籍

『「静かな人」の戦略書』内向型としてのSNSの利用方法


考えていないわけではないけれど(たぶん),大人数の前で(あえて)発言することは少ない。仕事で接する人たちともグループチャットより個人チャットが好き。

「発言しないのはいないのと同じ」「グループチャットじゃないと風通しが悪い」など,声の大きな人たちがつくった暗黙のルールになじめない人こそ楽しめるのが,ジル・チャン(Jill Chang/張瀞仁)さんの著作『「静かな人」の戦略書』(Quiet Is a Superpower)です。

ただ,間違えてはいけないのは,「内向型がえらい」というわけではないということです。外向型と内向型では得意分野が異なるだけで,内向型の方がすべての点において優れているわけではないということに注意したいところです(内向型関連の書籍の帯などは極端に感じます)。

また,本書の中に,著者が影響を受けた(5日間で3回も読み返したそうです)スーザン・ケイン著『内向型人間のすごい力』(講談社+α文庫)がしばしば登場します。自分の好きな音楽アーティストがかつて影響を受けたアーティストの作品を聴くように(世界が広がります),こちらも併せて読むと「内向型」についてより理解が深まると思います。

YouTubeには, TED「内向的な人が秘めている力」が公開されています。

さて,本書では,内向型の特徴がいくつか紹介されています。

  • 始業30分前には仕事を始める,あるいは30分ほど残業するのが好き。そのほうがオフィスが静かで,仕事がはかどるため。
  • ブログやSNSでは饒舌で面白いことを書けるののに,リアルでいろんな人との集まりに出ると,にっこり笑って,おとなしく聞き役に徹する。まわりの人が気づかないうちに,さっさと姿を消してしまうことも。

読んでいて「そうそう!」という箇所が多いほど,本書にのめり込んでいくはずです。

そして,私がもっとも興味深かったのがSNSの使い方です。

いまのところ,私の人柄を伝える上でもっとも効果的な方法のひとつは,フェイスブックやリンクトイン,ツイッターなどのSNSを利用することだ。

職場でもプライバシーを重視したい内向型としては,さまざまなソーシャルメディアを使い分けるのもいいだろう。

私の場合,友人とのコミュニケーションにはフェイスブックを使っている。家族の写真を載せたり,新しいアクティビティや旅行の様子を投稿したりして,個人的な情報を発信するのだ。

いっぽう,リンクトインは,仕事上の目的や,同僚とのコミュニケーションに限定して利用している。私がリンクトインでシェアするのは,業界の動向や,業界関連の活動や,イベントに関する情報だ。海外の仕事仲間には,もはや名刺を使っていない人たちもいる。名刺のやりとりを省いて,すぐにリンクトインでつながるのだ。

これはあくまで一例です。アジアの一部では,「リンクトイン」の普及率はそれほど高くないなどにも言及しているので,その場合は別の方法を使うなどが考えられます。また,面白いのは,著者がSNSの利点について述べているのに対して,「膨大な時間の無駄」になりうるという反対の人の意見も紹介しているところです。こういった視点の柔軟さは見習いたいものです。

本書は,著者であるジル・チャンさんが,ハワイ大学でのスピーチを終え,ウーバーのタクシーを呼ぶところから始まります。ドライバーさんと話しているうちに両者とも内向型だった(仕事終わりはのんびり過ごしたい)という素敵なエピソードなのですが,あれ,私はタクシーでドライバーに「お薦めの場所とかあります?」なんて訊くことできない…(内向型)。

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