会社法における株式の譲渡についてまとめています。
株式の譲渡
原則譲渡できる
株主は、原則として株式を譲渡することができます(127条)。民法の「債権譲渡」もそうでしたが、原則できるということをおさえておきましょう。その上で、「誰に対抗できるか」という対抗要件、「譲渡できない」という例外についておさえます。
株式譲渡の方法
株式譲渡の方法は、株券不発行会社と株券発行会社で分かれています。
- 株券不発行会社:意思表示
- 株券発行会社 :意思表示+株券の交付
株券不発行会社を先にしているのは、株券は不発行が原則だからです。そして、「株券を発行する旨」を定款で定めることによって、株券を発行することができるようになっています(214条)。
対抗要件
対抗要件は、株券不発行会社かどうか、会社と第三者どちらに対抗するのかを考えます。
まず、株券不発行会社の場合、株式の譲渡は、株主名簿に記載しなければ、会社と第三者に対抗できません(130条1項)。株券が不発行のため、株主名簿だけが頼りになるということです。
次に、株券発行会社の場合、株式の譲渡は、株主名簿に記載しなければ、会社に対抗できません(130条1項)。第三者へは、株券の占有があれば対抗できます。
会社への対抗要件は、どちらも株主名簿の名義書換えである点をおさえましょう。その上で、株券発行会社の場合は、第三者になら株券の占有で対抗できることをおさえます。
まとめ
譲渡方法と対抗要件についてまとめます。
株券不発行会社 | 株券発行会社 | |
譲渡方法 | 意思表示 | 意思表示+株券の交付 |
対会社 | 株主名簿 | 株主名簿 |
対第三者 | 株主名簿 | 株券の占有 |
株式の譲渡制限
会社は、株式の譲渡について、「株式会社の承認を要すること」という譲渡制限を定めることができます(107条1項1号、108条1項4号)。これを「譲渡制限株式」といいます(2条17号)。
株式の譲渡制限は、自分ひとり、または家族経営、友人などと経営しているとき、会社にとって好ましくない者が株主にならないようにするために認められています。
譲渡制限株式の譲渡は、全体の流れをおさえると理解しやすくなります。条文や仕組みをそのまま覚えようとするのではなく、「たしかにそうだ」のように納得すると定着しやすくなります。
承認の請求
譲渡制限株式の株主(譲渡したい人)や株式取得者(譲渡してもらった人)は、会社に承認を求めることができます(136条、137条1項)。このとき、「承認してくれない場合は、会社または指定買取人が買い取ってください」という請求をすることができます。
承認の決定等
会社は、承認をするかどうかの決定をします(139条1項本文)。
- 取締役会非設置会社:株式総会特別決議
- 取締役会設置会社 :取締役会決議
決定方法は、定款で決めることもできます(139条1項但書)。
会社は、決定をしたら、内容を通知します(139条2項)
買い取り
会社が、株式の譲渡を承認をしない決定をしたときは、会社が買い取るか指定買取人を指定する必要があります(147条1項、4項)。会社が買い取るときは、株主総会の特別決議による必要があります(140条2項、309条2項1号)。指定買取人を指定するときは、取締役会非設置会社の場合は株主総会の特別決議、取締役会設置会社の場合は取締役会決議になります(140条5項本文)。
なぜ、会社が買い取るときだけ、株主総会の特別決議が必要なのかというと、会社が(株主の見えないところで)高値で買うことを決めて、他の株主の利益が害されないようにするためです。そう考えると、会社が買い取るときと指定買取人のときで決議方法が異なるのが理解できます。
取締役会非設置会社 | 取締役会設置会社 | |
会社 | 株主総会 | 株主総会 |
指定買取人 | 株主総会 | 取締役会 |
会社が、買い取ることを決定をしたときは、請求者に通知する必要があります(141条)。もし、譲渡を承認しない決定の通知の日(上記「承認の決定等」の部分です)から、40日以内にしない場合は、譲渡を承認したものとみなされます(145条2号)。
指定買取人が指定されたときは、指定買取人から請求者に通知する必要があります(142条1項)。もし、譲渡を承認しない決定の通知の日から、10日以内にしない場合は、譲渡を承認したものとみなされます(145条2号)。
会社が「譲渡を認めません」と言ったにもかかわらず、そのまま請求者を放置していたのなら、譲渡を承認したものとみなしてしまうという会社に対するペナルティとして捉えることができます。
会社と指定買取人で通知期限が異なるのでまとめておきます。
- 会社:40日
- 指定買取人:10日
会社が買い取る場合は、決裁等の手続が要求されることから長く設定されています。