民法における工作物責任についてまとめています。工作物責任(717条)は、不法行為(709条以降)のひとつです。条文がひとつしかなく、またそれほど難易度が高いわけでもなく、各試験に出題されることがあるので、押さえておくのをおすすめします。
工作物責任とは
土地の工作物の設置または保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負います(717条1項本文)。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者が損害を賠償します(717条1項但書)。
第1次的に占有者が責任を負い、占有者が必要な注意をしたときは、第2次的に所有者が責任を負う構造になっています。占有者は必要な注意をしたときは免責されるのに対して、所有者は無過失責任であることをおさえておきましょう。
「工作物」とは、土地に接着している物だけでなく、土地の工作物としての機能を有するものをいいます。たとえば、建物のエレベータなども工作物に該当します。
「瑕疵」とは、「工作物が、その種類に応じて、通常予想される危険に対し、通常備えているべき安全性を欠いていること」をいいます(最判昭45.8.20)。
工作物責任を題材にした問題
行政書士試験では、「工作物責任」について、記述式問題でも出題されています。
Aが所有する甲家屋につき、Bが賃借人として居住していたところ、甲家屋の 2
階部分の外壁が突然崩落して、付近を通行していたCが負傷した。甲家屋の外壁の
設置または管理に瑕疵があった場合、民法の規定に照らし、誰がCに対して損害賠
償責任を負うことになるか。必要に応じて場合分けをしながら、40 字程度で記述
しなさい。
※太文字はこちらで編集したものです。
「甲の占有者Bが責任を負い、Bが損害発生防止のために必要な注意をしたときは所有者Aが責任を負う」といった内容のことを答えます。第1次的には「占有者」、場合分けとして「必要な注意をしたときは」、第2次的に「所有者」あたりがキーワードになります。