【会社法】株式の併合・分割・無償割当て・単元株についてのまとめ

商法・会社法
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会社法における株式の併合・分割・無償割当て・単元株について整理します。これらは、「株主にとって良いことなのか?」を考えると、決議方法が理解しやすくなります。



株式の併合

株式の併合

株式会社は、株式の併合をすることができます(180条)。株式の併合をすることで、管理コストを抑えるなどの目的があります。株式の併合は株主総会の特別決議が必要になります(180条2項、309条2項4号)。たとえば10株を1株にする場合、9株持っている株主は0.9の端数になってしまい、株主ではなくなってしまいます。そのため、特別決議が必要になっているのです。

※「株式の併合」と「株式併合」は同じ意味です(条文は「株式の併合」を使っています)。

株式の分割

株式の分割

株式会社は、株式の分割をすることができます(183条)。先ほどとは反対に、株式を細分化することで株価を下げ、流通性を高めることができます。株式の分割は、取締役会非設置会社では株主総会の普通決議、取締役会設置会社では取締役会決議が必要になります(183条2項)。

  • 取締役会非設置会社:株主総会の普通決議
  • 取締役会設置会社 :取締役会決議

株式の分割がされても、株主の持ち株比率は変わりません。たとえば、みんなが10株が20株になります(自己株式も分割されます)。そのため、決議方法が株式の併合と比べてゆるくなっています。

株式の分割は、発行済株式数は増えますが、払込みがないので、資本金は増加しません。

※「株式の分割」と「株式分割」は同じ意味です(条文は「株式の分割」を使っています)。

株式無償割当て

株式無償割当て

株式会社は、株主に株式無償割当てをすることができます(185条)。無償割当てとは、新たに払込みをさせることなく株式を割り当てることです(文字通り)。株式の無償割当ては、取締役会非設置会社では株主総会の普通決議、取締役会設置会社では取締役会決議が必要になります(186条3項本文)。また、定款で別段の定めをすることもできます(186条3項但書)。

  • 取締役会非設置会社:株主総会の普通決議
  • 取締役会設置会社 :取締役会決議

株式の併合は、発行済株式数は増えますが、払込みがないので、資本金は増加しません。

「株式の分割」と「株式無償割当て」を混同してしまいやすいと思うので補足します。

株式の分割は、株式が細胞分裂するようなものなので、同一の株式が増えます。そして、会社が保有している株式(自己株式)も同じ割合で増えます。一方、株式無償割当ては、同一株式を割当てるだけでなく、A株にB株を割当てるなど異なる種類の株式を割当てることもできます。そして、自己株式には割り当てられません。また、会社は自己株式を交付することもできます。

以下、まとめておきます。表を丸暗記するのではなく、「株式の分割はクローンが作られる」イメージを持っておくと良いでしょう。

株式の分割 株式無償割当て
異なる株式 できない できる
自己株式 増加する 増加しない
自己株式の交付 できない できる

単元株式数

単元株式数

株式会社は、一定の数の株式をもって株主が株主総会または種類株主総会にといて1個の議決権を行使することができる1単元の株式とする旨を定款で定めることができます(188条1項)。

たとえば、10株を1単元とした場合、9株を持っている株主には議決権を与えないことができます。単元株制度をとると、株主総会の管理費用を下げることができます(招集通知を送らなくてよいなど)。

単元株式数の設定・増加、廃止・減少

単元株式数を設定し、または単元株式数を増加する場合、定款の変更が必要になるため、株主総会の特別決議が必要になります(188条1項、466条、309条2項11号)。

単元株式数を廃止し、または単元株式数を減少する場合、取締役の決定(取締役会設置会社では取締役会決議)によって定款を変更することができます(195条1項)。本来、定款を変更するときは、株主総会の特別決議が必要になりますが、単元株式数の廃止と減少は株主にとって有利のため、例外的な取扱いになっています(「株主にとってどうだろう」というのを考えるのがポイントです)。

  • 設定・増加:株主総会の特別決議
  • 廃止・減少:取締役の決定(取締役会設置会社は取締役会決議)

※決議方法が例外なのであって、定款の変更自体は必要です。

「株式の分割」や「株式無償割当て」は、取締役会設置会社は取締役会決議、取締役会非設置会社は株主総会の普通決議だったので、混同しないようにしましょう。単元株式数の廃止・減少は、定款の変更が必要(株主総会の特別決議が必要)だけれど、株主にとって不利に働くことはないから、例外的に業務の執行(取締役が行うもの)としてできると考えると理解しやすくなります。

単元未満株主の権利の制限等

単元未満株主は、株主総会や種類株主総会の議決権はありません(189条1項)。

単元未満株主の権利は、定款で排除することができます(189条2項)。ただし、以下の権利は、株主にとって重要な権利のため、排除することはできません(189条2項各号)。

  • 全部取得条項付種類株式の取得対価の交付を受ける権利
  • 取得条項付株式の取得と引換えに金銭等の交付を受ける権利
  • 株式無償割当てを受ける権利
  • 単元未満株式を買い取ることを請求する権利
  • 残余財産の分配を受ける権利

単元未満株主は、会社に単元未満株式を買い取るよう請求することができます。この権利は、上の通り株主にとって重要な権利のため、定款で排除することはできません。

また、株式会社は、単元未満株主が会社に対して単元未満株式売渡請求をすることができる旨を定款で定めることができます。たとえば、10株を1単元とした場合、8株を持っている株主は、会社に8株を買い取ってもらうことも請求できるし、2株を売り渡すことを請求できるということです。

ただし、売渡請求権は、定款で定めている場合のみ請求できる点に注意が必要です。

  • 買取請求:できる
  • 売渡請求:(定款に定めがあれば)できる
SOMEYA, M.

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東京都生まれ。沖縄県在住。主に行政書士試験対策について発信しているブログです。【好き】沖縄料理・ちゅらさん・Cocco・龍が如く3

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