行政書士試験の択一式問題では、基礎法学から2題(問題1〜2)出題されます。おそらく多くの方にとって、基礎知識と並んで対策しにくい科目といえます。私も受験生時代、基礎法学はなんとも言えない不安を覚えていました。どのような対策をすればいいかわからなかったからです。
なお、基礎法学は、試験が開始して最初の2問なので、見たこともない問題に不安を感じて、悪影響が出ないように、後回しにしてしまうのもひとつの手です。
ここで、直近の出題状況を確認してみましょう。
令和5年度
- 問題1:法学書からの引用
- 問題2:法人等
問題1は、法学書からの引用です。大学の「法学(概論)」の授業で習うような範囲なので、ちょっと難しく感じる方もいるかもしれません。この問題は落としても仕方ないと思います。
問題2は、法人等についての問題です。「権利能力なき社団」や「(非)営利法人」、「一般社団(財団)法人」の違いについて問われました。すべての選択肢を切ることは難しいですが、権利能力なき社団については民法の知識、一般社団法人については会社法の知識から予測できる範囲といえます。
令和4年度
- 問題1:法学書からの引用
- 問題2:法律用語
問題1は、法学書からの引用です。文脈から選択肢を切っていくと正解の肢にたどり着けるようになっています。この問題は答えておきたいところです。
問題2は、法律用語についての問題です。ただ、「法律要件」「法律効果」「立法事実」から答えを導けるようになっています。「構成要件」や「要件事実」は行政書士試験の範囲外といえます。
令和3年度
- 問題1:法学書からの引用
- 問題2:法令の効力
問題1は、法学書からの引用です。内容は、刑法についてのことなので、行政書士試験でこの難易度は難しいと思います。落としても仕方ない問題といえます。
問題2は、法令の効力に関する問題です。一般法と特別法などの理解が問われます。刑法を勉強したことがある方ではないと、少し難しく感じるかもしれません。
令和2年度
- 問題1:法学書からの引用
- 問題2:簡易裁判所
問題1は、法学書からの引用です。内容は、民事訴訟法の中の「和解・仲裁・調停」なので、行政書士試験の問題としては難しいと思います。
問題2は、簡易裁判所についての問題です。これも法学基礎といえば基礎ですが、行政書士試験の範囲を考えると難しいと思います。
令和元年度
- 問題1:法学書からの引用
- 問題2:裁判の審級制度等
問題1は、法学書からの引用です。法律学の歴史について問われますが、行政書士試験の学習範囲を考えると、正解するのは難しいように感じます。
問題2は、裁判の審級制度等についての問題です。民事訴訟と刑事訴訟の審級などの基礎知識が問われています。この問題は中等教育でも学習する内容なので、できれば正解しておきたいところです。
傾向と対策
前述のように、行政書士試験において、基礎法学に苦手意識を持っている方は多いと思います。
直近の出題傾向を見ると、問題1が法学書からの引用(穴埋め問題)、問題2がある科目であったり、総合問題であることがわかります。たとえば、令和3年度だと刑法関連、令和2年度だと民事訴訟法関連といったように出題内容が偏ることもあるようです。基礎法学の作問を担当する先生の専門分野が関係しているのかもしれません。
出題傾向を見てもわかるように、ヤマを張るような対策は得策ではありません。基本書等をひととおり読んでおき、わかる範囲で解答する、年によっては1問程度は答えられる問題がある年もあります。
また、最初に述べたように、基礎法学は試験が始まって最初に目にする問題です。ここで怖気付いてしまうと、あとの解けるはずの問題も解けなくなってしまう可能性があります。行政書士試験は、時間が足りなくなるような試験ではないので、まずは1周解いてみて、2周目以降に基礎法学や基礎知識の残っている問題を解いて、それから多肢選択式や記述式に移るのもひとつの戦略といえます。
試験が近づいてきたら、年度別の過去問を解いてみて、全体の流れを把握しながら、自分だったらこうやって解くという方法を考えておきましょう。