地方自治法の普通地方公共団体から執行機関について学習します。
目次
第1節 通則
普通地方公共団体にその執行機関として普通地方公共団体の長の外、法律の定めるところにより、委員会又は委員を置く(138条の4第1項)。
普通地方公共団体の委員会は、法律の定めるところにより、法令又は普通地方公共団体の条例若しくは規則に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務に関し、規則その他の規程を定めることができる(138条の4第2項)。
普通地方公共団体は、執行機関として、普通地方公共団体の長、委員会または委員を置くことがわかりました。また、委員会は、規則を定めることができます。条例が法令に違反しない限りにおいて定めることができたのに対し、規則は地方公共団体の中で定められるものなので、さらに地方公共団体が定める条例、地方公共団体の長が定める規則に違反しない限りとなっているのがポイントです。
第2節 普通地方公共団体の長
第1款 地位
都道府県に知事を置く(139条1項)。
市町村に市町村長を置く(139条2項)。
普通地方公共団体の長の任期は、4年とする(140条1項)。
任期などは、普段の選挙などから理解記憶できると思います。
第2款 権限
普通地方公共団体の長は、当該普通地方公共団体を統轄し、これを代表する(147条)。
普通地方公共団体の長は、当該普通地方公共団体の事務を管理し及びこれを執行する(148条)。
普通地方公共団体の長は、概ね左に掲げる事務を担任する(149条)。
① 普通地方公共団体の議会の議決を経べき事件につきその議案を提出すること。
② 予算を調製し、及びこれを執行すること。
③ 地方税を賦課徴収し、分担金、使用料、加入金又は手数料を徴収し、及び過料を科すること。
④ 決算を普通地方公共団体の議会の認定に付すること。
⑤ 会計を監督すること。
⑥ 財産を取得し、管理し、及び処分すること。
⑦ 公の施設を設置し、管理し、及び廃止すること。
⑧ 証書及び公文書類を保管すること。
⑨ 前各号に定めるものを除く外、当該普通地方公共団体の事務を執行すること。
この中でも特に予算を調製することは普通地方公共団体の長の権限のひとつである点をおさえておきましょう。これによって、前回学んだ「議会」において、予算については、「普通地方公共団体の長の予算の提出の権限を侵すことはできない」といった内容が理解できるようになります。なお、議案を提出することは議員もすることができます。
第3款 補助機関
都道府県に副知事を、市町村に副市町村長を置く。ただし、条例で置かないことができる(161条1項)。
副知事及び副市町村長の定数は、条例で定める(161条2項)。
副知事及び副市町村長は、普通地方公共団体の長が議会の同意を得てこれを選任する(162条)。
補助機関として、副知事、副市町村長を置きます。
普通地方公共団体に会計管理者1人を置く(168条1項)。
会計管理者は、普通地方公共団体の長の補助機関である職員のうちから、普通地方公共団体の長が命ずる(168条2項)。
普通地方公共団体に会計管理者1人を置きます。先ほどの副知事等は条例で置かないことができたのと比較しておきましょう。また、副知事等は、普通地方公共団体の長が議会の同意を得て選任するのに対して、会計管理者は、普通地方公共団体の長の補助機関である職員のうちから、普通地方公共団体の長が命じます。
第4款 議会との関係
普通地方公共団体の議会の議決について異議があるときは、当該普通地方公共団体の長は、この法律に特別の定めがあるものを除くほか、その議決の日から10日以内に理由を示してこれを再議に付することができる(176条1項)。
前項の規定による議会の議決が再議に付された議決と同じ議決であるときは、その議決は、確定する(176条2項)。
前項の規定による議決のうち条例の制定若しくは改廃又は予算に関するものについては、出席議員の3分の2以上の者の同意がなければならない(176条3項)。
普通地方公共団体の長は、議決について異議があるとき、再議に付することができます。これを長の拒否権といいます。国政は、私たち住民が国会議員を選び、その中から内閣が組織されるため、一般的に協力関係がある一方、地方公共団体は、議員も長も住民が直接選挙するため、互いに牽制し合う関係にあるというのを考えると、理解しやすいと思います。もっとも、議決が再議に付された議決と同じ議決であるときは、確定します。
普通地方公共団体の議会の議決又は選挙がその権限を超え又は法令若しくは会議規則に違反すると認めるときは、当該普通地方公共団体の長は、理由を示してこれを再議に付し又は再選挙を行わせなければならない(176条4項)。
普通地方公共団体の議会において次に掲げる経費を削除し又は減額する議決をしたときは、その経費及びこれに伴う収入について、当該普通地方公共団体の長は、理由を示してこれを再議に付さなければならない(177条1項)。
① 法令により負担する経費、法律の規定に基づき当該行政庁の職権により命ずる経費その他の普通地方公共団体の義務に属する経費
② 非常の災害による応急若しくは復旧の施設のために必要な経費又は感染症予防のために必要な経費
先ほどは、異議があるときは、「再議に付することができる」という任意のものでしたが、今回は、「再議に付さなければならない」という義務のものです。ひとつめは、議決等が法令または会議規則に違反すると認めるときです。ふたつめは、法令により負担する経費や非常の災害による応急などの経費を削減または減額する議決をしたときです。
普通地方公共団体の議会において、当該普通地方公共団体の長の不信任の議決をしたときは、直ちに議長からその旨を当該普通地方公共団体の長に通知しなければならない。この場合においては、普通地方公共団体の長は、その通知を受けた日から10日以内に議会を解散することができる(178条1項)。
議会において当該普通地方公共団体の長の不信任の議決をした場合において、前項の期間内に議会を解散しないとき、又はその解散後初めて招集された議会において再び不信任の議決があり、議長から当該普通地方公共団体の長に対しその旨の通知があったときは、普通地方公共団体の長は、同項の期間が経過した日又は議長から通知があった日においてその職を失う(178条2項)。
前2項の規定による不信任の議決については、議員数の3分の2以上の者が出席し、第1項の場合においてはその4分の3以上の者の、前項の場合においてはその過半数の者の同意がなければならない(178条3項)。
長の不信任と議会の解散についてです。議員数の3分の2以上のものが出席し、その4分の3以上の者の同意によって、普通地方公共団体の長の不信任の議決をしたときは、普通地方公共団体の長は、不信任の通知を受けた日から10日以内に議会を解散することができます。議会が間違っているからもう一度、住民の考えを聞こうということです。一方、議会を解散しないときは、職を失います。
議会を解散した場合、解散後初めて招集された議会において、議員数の3分の2以上のものが出席し、過半数以上の者の同意によって、再び不信任の議決があったとき、つまり、新たに選挙された、住民の意思を反映した議員たちによって再び不信任の議決があったときは、職を失います。
普通地方公共団体の議会が成立しないとき、第113条ただし書[除斥等の理由により半数に達しないなど]の場合においてなお会議を開くことができないとき、普通地方公共団体の長において議会の議決すべき事件について特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるとき、又は議会において議決すべき事件を議決しないときは、当該普通地方公共団体の長は、その議決すべき事件を処分することができる(179条1項本文)。
議会の決定すべき事件に関しては、前項の例による(179条2項)。
前2項の規定による処置については、普通地方公共団体の長は、次の会議においてこれを議会に報告し、その承認を求めなければならない(179条3項)。
普通地方公共団体の議会が成立しないときなど一定の場合、普通地方公共団体の長は、議決すべき事件を処分、つまり決めることができます。この場合、次の会議において議会に報告し承認を求めなければなりません。
第5款 他の執行機関との関係
委員会については、次のところで見ていきましょう。
第3節 委員会及び委員
第1款 通則
執行機関として法律の定めるところにより普通地方公共団体に置かなければならない委員会及び委員は、左の通りである(180条の5)。
① 教育委員会
② 選挙管理委員会
③ 人事委員会又は人事委員会を置かない普通地方公共団体にあっては公平委員会
④ 監査委員
これらは、普通地方公共団体に置かなければならない委員会及び委員です。このほか、都道府県に置かなければならないもの、市町村に置かなければならないものなどがありますが、少し細かいので割愛します。まずは、都道府県と市町村のどちらにも置かなければならない委員会をおさえましょう。
この節では、さまざまな委員会及び委員について定められていますが、ここでは試験対策上重要な監査委員を見ていきます。
※第2款「教育委員会」、第3款「公安委員会、第4款「選挙管理委員会」は省略します。
第5款 監査委員
普通地方公共団体に監査委員を置く(195条1項)。
監査委員の定数は、都道府県及び政令で定める市にあっては4人とし、その他の市及び町村にあっては2人とする。ただし、条例でその定数を増加することができる(195条2項)。
普通地方公共団体は、監査委員を置きます。政令で定める市は、このあと出てくる指定都市のことです。総務省のホームページでも指定都市一覧を見ることができます。
監査委員は、普通地方公共団体の長が、議会の同意を得て、選任します。
監査委員は、普通地方公共団体の財務に関する事務の執行及び普通地方公共団体の経営に係る事業の管理を監査する(199条1項)。
監査委員は、前項に定めるもののほか、必要があると認めるときは、普通地方公共団体の事務の執行について監査をすることができる(199条2項前段)。
監査委員は、毎会計年度少なくとも1回以上期日を定めて第1項の規定による監査をしなければならない(199条4項)。
監査委員は、前項に定める場合のほか、必要があると認めるときは、いつでも第1項の規定による監査をすることができる(199条5項)。
監査委員は、当該普通地方公共団体の長から当該普通地方公共団体の事務の執行に関し監査の要求があったときは、その要求に係る事項について監査をしなければならない(199条6項)。
監査委員は、毎会計年度少なくとも1回以上、財務監査を行います。また、必要があると認めるときは、行政監査を行うことができます。ほか、普通地方公共団体の長から監査の要求があったときは、監査をしなければならないとされています。
※第6款「人事委員会等」、第7款「附属機関」は省略します。
第4節 地域自治区
地域自治区の設置
市町村は、市町村長の権限に属する事務を分掌させ、及び地域の住民の意見を反映させつつこれを処理させるため、条例で、その区域を分けて定める区域ごとに地域自治区を設けることができる(202条の4第1項)。
地域自治区に事務所を置くものとし、事務所の位置、名称及び所管区域は、条例で定める(202条の4第2項)。
地域自治区の事務所の長は、当該普通地方公共団体の長の補助機関である職員をもって充てる(202条の4第3項)。
市町村は、地域自治区を設けることができます。現在、市町村の合併が進み、住民の意見が反映されづらくなってきたことから、地域自治区を設けられるようになりました。なお、地域自治区は、指定都市が設置する行政区(252条の20)とは別なので注意しましょう。
地域協議会の設置及び構成員
ひとつの市町村の中にいくつかの地域自治区をつくり、地域自治区ごとに地域協議会を置きます。
地域自治区は、例を見ると理解しやすいと思います。たとえば、愛知県豊田市には298の自治区があり(執筆時点)、さまざまな活動を行っていることがわかります。地域自治区が良いか悪いかは別として、試験対策として、このようなものがあるという点をおさえておきましょう。
※第8章「給与その他の給付」は省略します。