民法の総則の法律行為から無効及び取消しについて学習します。
無効な行為の追認
無効な行為は、無効なので、追認をしても、効力を生じません。ただし、当事者が無効であることを知って追認をしたときは、新たな行為をしたものとみなします。
取消権者
行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる(120条1項)。
錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる(120条2項)。
取消しができる者について規定しています。
取消しの効果
原状回復の義務
無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務を負う(121条1項)。
前項の規定にかかわらず、無効な無償行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、給付を受けた当時その行為が無効であること(給付を受けた後に前条の規定により初めから無効であったものとみなされた行為にあっては、給付を受けた当時その行為が取り消すことができるものであること)を知らなかったときは、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う(121条2項)。
第1項の規定にかかわらず、行為の時に意思能力を有しなかった者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。行為の時に制限行為能力者であった者についても、同様とする(121条3項)。
無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務を負います。先ほど、120条で「取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす」とありました。取り消された行為は、初めから無効であったものとみなすため、原状回復義務を負います。
もっとも、無償行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、給付を受けた当時その行為が無効であることを知らなかったときは、現に利益を受けている限度において、返還の義務を負います。たとえば、お古の洋服をもらい、捨てててしまったときは、現に利益を受けている限度なので、返還の義務を負わないということです。また、行為の時に意思能力を有しなかった者、行為の時に制限行為能力者であった者も、現に利益を受けている限度で返還すればよいとされています。
取り消すことができる行為の追認
追認の要件
取り消すことができることを知った上で追認をする必要があるということです。
法定追認
① 全部又は一部の履行
② 履行の請求
③ 更改
④ 担保の供与
⑤ 取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡
⑥ 強制執行
追認は、取消権者を保護するために取消すことができることを知った上で追認をすることが必要でした。もっとも、全部または一部の履行や履行の請求をしたということは、取り消す意思がないのと同じと考えることができるため、追認をしたものとみなします。これを法定追認といいます。
取消権の期間の制限
取消権は、主観で5年、客観で20年で、時効によって消滅します。