民法の総則の法律行為から条件及び期限について学習します。
条件が成就した場合の効果
停止条件付法律行為は、停止条件が成就した時からその効力を生ずる(127条1項)。
停止条件とは、法律行為の効力の発生を、将来発生するかどうか不確実な事実に係らしめるものをいいます。たとえば、「大学の試験に合格したらプレゼントする」などがあげられます。条件が成就するまで法律行為の効力の発生が停止されていると考えると理解しやすいと思います。
もっとも、これは建前で、初学の段階においては、停止条件と次の解除条件については、「こういう法律用語なのだ」と割り切って暗記してしまうのもひとつの手です。
解除条件付法律行為は、解除条件が成就した時からその効力を失う(同条2項)。
解除条件とは、条件が成就することによって法律行為の効力が消滅することになるものをいいます。たとえば、「成績が一定の基準を下回ったら奨学金を打ち切る」などがあげられます。条件が成就したら、法律行為の効力が解除されると考えると理解しやすいと思います。
当事者が条件が成就した場合の効果をその成就した時以前にさかのぼらせる意思を表示したときは、その意思に従う(同条3項)。
条件は、原則として、成就してから効果が発生します。もっとも、当事者が成就した時以前にさかのぼらせる意思を表示したときは、さかのぼって効果を発生します。
条件の成否未定の間における相手方の利益の侵害の禁止
条件の成否未定の間における権利の処分等
条件の成就の妨害等
条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方は、その条件が成就したものとみなすことができる(130条1項)。
条件が成就することによって利益を受ける当事者が不正にその条件を成就させたときは、相手方は、その条件が成就しなかったものとみなすことができる(同条2項)。
1項について、判例は、「農地の売主が故意に知事の許可を得ることを妨げたとしても、買主は条件を成就したものとみなすことはできない。」としています(最判昭36.5.26)。
農地売買は、許可が必要になります。もし、売主が故意に許可を得ることを妨げたとしても、この条件は法律上要求されているものなので、130条1項は適用されません。
本試験では、判例の知識が問われています。
本件契約が農地の売買契約であり、所有権移転に必要な行政の許可を得られたときに効力を生じる旨の条項が定められている場合において、売主Aが当該許可を得ることを故意に妨げたときであっても、条件が成就したとみなされることはない。(平30-28-エ)
正誤:◯
期限の到来の効果
法律行為に始期を付したときは、その法律行為の履行は、期限が到来するまで、これを請求することができない(135条1項)。
法律行為に終期を付したときは、その法律行為の効力は、期限が到来した時に消滅する(同条2項)。
期限とは、法律行為の効力の発生等が、将来発生することの確実な一定の日時の到来にかかっている場合の、その一定の日時のことをいいます。条件が不確実であったことと比較しましょう。
期限の利益及びその放棄
期限は、債務者の利益のために定めたものと推定する(136条1項)。
期限があれば、たとえば、債務者は期限が到来するまである物を返済しなくてもよくなります。
期限の利益は、放棄することができる。ただし、これによって相手方の利益を害することはできない(同条2項)。
たとえば、お金を借りて早く返すからといって、当初約束した利息を払わなくてよいということにはならないということです。
期限の利益の喪失
① 債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。
② 債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。
③ 債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。
期限の利益は、債務者に信用があるから認められるものです。そのため、債務者が破産手続開始の決定を受けた、担保を滅失させたなどのときは、期限の利益は喪失します。