令和元年に改正された会社法のうち、令和5年度(2023年度)の各試験から出題範囲となる「電子提供措置」(令和4年9月1日施行)についてまとめます。電子提供措置は、定款で定める、株主総会の招集通知の発出期限が2週間前までになることを押さえておきましょう。
電子提供措置をとる旨の定款の定め
株式会社は、次の内容について電子提供措置をとる旨を定款で定めることができます(325条の2)。
①株主総会参考資料
②議決権行使書面
③計算書類及び事業報告
④連結計算書類
電子提供措置
電子提供措置をとる旨の定款の定めがある株式会社の取締役は、株主総会の招集通知を書面でしなければならない場合には、株主総会の日の3週間前の日または招集通知を発した日のいずれか早い日から株主総会の日後3箇月を経過する日までの間、電子提供措置をとらなければなりません(325条の3第1項)。
株主総会の招集通知を書面でしなければならない場合とは、以下の2つの場合です(299条2項各号)。
①書面・電磁的方法によって議決権を行使することができる旨を定めたとき
②取締役会設置会社である場合
ただし、議決権行使書面を交付するときは、議決権行使書面に記載すべき事項に係る情報については、電子提供措置をとる必要はありません(325条の3第2項)。株主には議決権行使書面を交付しているので、合わせて電子提供措置をする必要はないと考えると理解しやすいと思います。
株主総会の招集の通知等の特則
電子提供措置をとる場合の招集通知の発出期限は、非公開会社であっても、非取締役会設置会社であっても2週間となります(325条の4第1項)。
株主総会の招集通知についておさらいしておきましょう。
公開会社 | 非公開会社 | |
取締役会設置会社 | 2週間 | 2週間 |
取締役会非設置会社 | – | 2週間 |
まず、公開会社の場合、必ず取締役会設置会社なので、取締役会非設置会社であることはありません。そのため、左下は「-」になっています。
次に、非公開会社の場合、取締役会設置会社は1週間前までに株主に対して株主総会の招集通知を発しなければなりません。そして、取締役会非設置会社の場合は、定款で定めた期間(つまり、さらに短縮可能ということです)前までに株主総会の招集通知を発しなければなりません(299条1項)。
ただし、どちらも電子提供措置を場合の招集通知は、2週間となります。
書面交付請求
電子提供措置をとる旨の定款の定めがある株式会社の株主は、株式会社に対し、電子提供措置事項を記載した書面の交付を請求することができます(325条の5第1項)。
取締役は、書面交付請求をした株主に対し、当該株主総会に係る電子提供措置事項を記載した書面を交付しなければなりません(325条の5第2項)。