憲法14条は、法の下の平等について定めています。ここでは、法の下の平等について、試験対策として問われやすいところ、また判例についてまとめています。
※「法の下」とは、一般的に「ほうのもと」と読みます。こういうのは慣れてしまえばどうってことないですが、最初はどう読めばわからないことは多々あります。たとえば、私は、法律を学び始めた頃は「解する」を「げする」と心の中で読んでいました(「かいする」です)。
「法の下」の意味
「法の下」とは、法を執行・適用する行政権・司法権が、法を平等に適用するだけでなく、法の内容そのものも平等でなければならないと考えられています。
「平等」の意味
「平等」とは、絶対的な平等ではなく、同一事情・同一条件のもとでは平等に扱うことが要求されるが、各人の差異(性別・年齢・能力など)を前提にした合理的な区別は許容されます。
尊属殺重罰規定違憲判決
実父に性暴力を受けていたXが、実父を絞殺したという事件です。かんたんに書くとこうですが、14歳から10余年、夫婦同様の生活を強いられており、5人の子供ができていた、結婚をしようとするも実父の反対を受けて、自己の支配下に置かれるようになったという事情があります。
Xは、刑法200条の尊属殺により起訴され、Xは刑法200条の違憲を主張して上告しました。
尊属に対する尊重報恩は、社会生活上の基本的道義というべく、このような自然的情愛ないし普遍的倫理の維持は、刑法上の保護に値するものといわなければならない。しかるに、自己または配偶者の直系尊属を殺害するがごとき行為はかかる結合の破壊であつて、それ自体人倫の大本に反し、かかる行為をあえてした者の背倫理性は特に重い非難に値するということができる。
このような点を考えれば、尊属の殺害は通常の殺人に比して一般に高度の社会的道義的非難を受けて然るべきであるとして、このことをその処罰に反映させても、あながち不合理であるとはいえない。
そこで、被害者が尊属であることを犯情のひとつとして具体的事件の量刑上重視することは許されるものであるのみならず、さらに進んでこのことを類型化し、法律上、刑の加重要件とする規定を設けても、かかる差別的取扱いをもつてただちに合理的な根拠を欠くものと断ずることはできず、したがつてまた、憲法一四条一項に違反するということもできないものと解する。(中略)
加重の程度が極端であつて、前示のごとき立法目的達成の手段として甚だしく均衡を失し、これを正当化しうべき根拠を見出しえないときは、その差別は著しく不合理なものといわなければならず、かかる規定は憲法一四条一項に違反して無効であるとしなければならない。
尊属の殺害は通常の殺人に比して高度の社会的道義的非難を受けて然るべきであるから、そのことを処罰に反映させても、それがただちに合理的な根拠を欠くものと断ずることはできないとしています。
しかし、その加重の程度が極端であって、立法目的達成の手段として甚だしく均衡を失し、これを正当化する根拠を見いだせないときは、その差別は著しく不合理なものといわなければならないとしています。
ここで、刑法200条は、尊属殺の法定刑を死刑または無期懲役刑のみにしています。これは、執行猶予がつかないことを意味します。そのため、刑法200条は、立法目的達成のため必要な限度を遥かに超え、著しく不合理な差別的取扱いをするものと認められ、憲法14条1項に違反して無効であるとしました。
国籍法違憲判決
婚姻関係にない日本国民である父とフィリピン人の母との間に生まれた場合に、「父母の婚姻及びその認知により嫡出子たる身分を取得した子で20歳未満のものは〜日本の国籍を取得できる」とした国籍法が違憲であるかが争われました。
国籍の得喪に関する要件を定めるに当たってはそれぞれの国の歴史的事情、伝統、政治的、社会的及び経済的環境等、種々の要因を考慮する必要があることから、これをどのように定めるかについて、立法府の裁量判断にゆだねる趣旨のものであると解される。
しかしながら、このようにして定められた日本国籍の取得に関する法律の要件によって生じた区別が、合理的理由のない差別的取扱いとなるときは、憲法14条1項違反の問題を生ずることはいうまでもない。すなわち、立法府に与えられた上記のような裁量権を考慮しても、なおそのような区別をすることの立法目的に合理的な根拠が認められない場合、又はその具体的な区別と上記の立法目的との間に合理的関連性が認められない場合には、当該区別は、合理的な理由のない差別として、同項に違反するものと解されることになる。
日本国籍は、我が国の構成員としての資格であるとともに、我が国において基本的人権の保障、公的資格の付与、公的給付等を受ける上で意味を持つ重要な法的地位でもある。一方、父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得するか否かということは、子にとっては自らの意思や努力によっては変えることのできない父母の身分行為に係る事柄である。したがって、このような事柄をもって日本国籍取得の要件に関して区別を生じさせることに合理的な理由があるか否かについては、慎重に検討することが必要である。(中略)
本件区別は合理的な理由のない差別となっていたといわざるを得ず、国籍法3条1項の規定が本件区別を生じさせていることは、憲法14条1項に違反するものであったというべきである。
まず、国籍の得喪に関する要件を定めるにあたっては、立法府の裁量判断にゆだねるとあります。
しかし、定められた日本国籍の取得に関する法律の要件によって生じた区別が、合理的理由のない差別的取扱いとなるときは、合理的な理由のない差別として違反するとしています。
そして、日本国籍は、基本的人権の保障や公的給付等を受ける上で意味を持つ重要な法的地位です。
一方、父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得するか否かということは、子にとっては自らの意思や努力によっては変えることのできない父母の身分行為に係る事柄といえます。したがって、日本国籍取得の要件に関して区別を生じさせることに合理的な理由があるか否かについては、慎重に検討することが必要としています。
結論として、本件区別は合理的な理由のない差別となっていたといわざるを得ず、国籍法3条1項の規定は、憲法14条1項に違反するものであったというべきであるとしています。
非嫡出子に対する法定相続分差別
死亡した被相続人Aの遺産について、嫡出である子と嫡出でない子で法定相続分に差があるのが違憲であると争われたものです。
相続制度は、被相続人の財産を誰に、どのように承継させるかを定めるものであるが、相続制度を定めるに当たっては、それぞれの国の伝統、社会事情、国民感情なども考慮されなければならない。さらに、現在の相続制度は、家族というものをどのように考えるかということと密接に関係しているのであって、その国における婚姻ないし親子関係に対する規律、国民の意識等を離れてこれを定めることはできない。これらを総合的に考慮した上で、相続制度をどのように定めるかは、立法府の合理的な裁量判断に委ねられているものというべきである。
この事件で問われているのは、このようにして定められた相続制度全体のうち、本件規定により嫡出子と嫡出でない子との間で生ずる法定相続分に関する区別が、合理的理由のない差別的取扱いに当たるか否かということであり、立法府に与えられた上記のような裁量権を考慮しても、そのような区別をすることに合理的な根拠が認められない場合には、当該区別は、憲法14条1項に違反するものと解するのが相当である。(中略)
嫡出子と嫡出でない子の法定相続分をどのように定めるかということについては、総合的に考慮して決せられるべきものであり、また、これらの事柄は時代と共に変遷するものでもあるから、その定めの合理性については、個人の尊厳と法の下の平等を定める憲法に照らして不断に検討され、吟味されなければならない。(中略)
昭和22年民法改正時から現在に至るまでの間の社会の動向、我が国における家族形態の多様化やこれに伴う国民の意識の変化、諸外国の立法のすう勢及び我が国が批准した条約の内容とこれに基づき設置された委員会からの指摘、嫡出子と嫡出でない子の区別に関わる法制等の変化、更にはこれまでの当審判例における度重なる問題の指摘等を総合的に考察すれば、家族という共同体の中における個人の尊重がより明確に認識されてきたことは明らかであるといえる。そして、法律婚という制度自体は我が国に定着しているとしても、上記のような認識の変化に伴い、上記制度の下で父母が婚姻関係になかったという、子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、その権利を保障すべきであるという考えが確立されてきているものということができる。
したがって、本件規定は、遅くとも平成13年7月当時において、憲法14条1項に違反していたものというべきである。
ここでも、相続制度をどのように定めるかは、立法府の合理的な裁量判断に委ねられているというべきであるとしています。そして、立法府に与えられた裁量権を考慮しても、そのような区別をすることに合理的な根拠が認められない場合には、憲法14条1項に違反するとしています。
また、ここでも、法律婚という制度自体は我が国に定着しているとしても、父母が婚姻関係になかったという、子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、その権利を保障すべきであるとしています。
結論として、遅くとも平成13年7月当時において、憲法14条1項に違反していたものというべきであるとされました。
再婚禁止期間違憲訴訟
女性のみ6か月の再婚禁止期間を定める民法733条1項の規定が、憲法14条1項、24条2項に違反するとされたものです。
なお、憲法24条2項は「配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。」と規定しています。
憲法24条2項は、このような観点から、婚姻及び家族に関する事項について、具体的な制度の構築を第一次的には国会の合理的な立法裁量に委ねるとともに、その立法に当たっては、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚すべきであるとする要請、指針を示すことによって、その裁量の限界を画したものといえる。(中略)
婚姻制度に関わる立法として、婚姻に対する直接的な制約を課すことが内容となっている本件規定については、その合理的な根拠の有無について以上のような事柄の性質を十分考慮に入れた上で検討をすることが必要である。(中略)
夫婦間の子が嫡出子となることは婚姻による重要な効果であるところ、嫡出子について出産の時期を起点とする明確で画一的な基準から父性を推定し、父子関係を早期に定めて子の身分関係の法的安定を図る仕組みが設けられた趣旨に鑑みれば、父性の推定の重複を避けるため上記の100日について一律に女性の再婚を制約することは、婚姻及び家族に関する事項について国会に認められる合理的な立法裁量の範囲を超えるものではなく、上記立法目的との関連において合理性を有するものということができる。
よって、本件規定のうち100日の再婚禁止期間を設ける部分は、憲法14条1項にも、憲法24条2項にも違反するものではない。
これに対し、本件規定のうち100日超過部分については、民法772条の定める父性の推定の重複を回避するために必要な期間ということはできない。
本件規定のうち100日超過部分が憲法24条2項にいう両性の本質的平等に立脚したものでなくなっていたことも明らかであり、上記当時において、同部分は、憲法14条1項に違反するとともに、憲法24条2項にも違反するに至っていたというべきである。
判例は、婚姻及び家族に関する事項について、第一次的には国会の合理的な立法裁量に委ねるとしています。
そして、父性の推定の重複を避けるために100日について一律に女性の再婚を制約することは、合理的な立法裁量の範囲を超えるものではないとしています。これに対し、100日超過部分については、父性の推定の重複を回避するために必要な期間ということはできないとされました。
結論として、100日超過部分は、憲法14条1項に違反するとともに、憲法24条2項にも違反するとしました。