ここでは,民法の危険負担について解説します。
まずは,条文を見てみましょう。
当事者双方の責めに帰することができない事由
当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは,債権者は,反対給付の履行を拒むことができます(536条1項)。
たとえば,建物の売買において,引渡をする前に落雷によって消失するなど当事者双方の責めに帰することができない事由,つまりどちらも悪くない理由によって債務を履行することができなくなったときは,債権者,この場合は建物を買った人は反対給付の履行,代金の支払いを拒むことができます。
条文だけだと難しく感じますが,普通に考えてみると,わかりやすいと思います。
また,当事者双方の責めに帰することができない事由であっても,それが履行遅滞の間に起きたことなら,債務者の責めに帰すべき事由によるものとみなされます(413条の2第1項)。元々,遅滞したのは債務者に非があるためと考えるとわかりやすいと思います。同様に,それが受領遅滞の間に起きたことなら,債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなされます(413条の2第2項)。受け取らなかった債権者に非があるということです。
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債権者の責めに帰すべき事由
債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは,債権者は,反対給付の履行を拒むことができません。(536条2項前段)。
一方,債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったとき,たとえば,先ほどの建物を債権者が燃やしてしまったなどの場合は,債権者は反対給付の履行を拒むことはできません。自分が悪いのだからきちんとお金を払わないといけないということです。
債務者の責めに帰すべき事由
536条には規定されていませんが,債務者の責めに帰すべき事由のときはどうなるのでしょうか。たとえば,債務者が建物を燃やしてしまって,建物の引渡しができなかった場合などです。この場合は,通常通り,債権者は債務者に対し,債務不履行による損害賠償請求や解除などをすることができます。
つまり,危険負担とは,債務者の責めに帰すべき事由以外のときについて定めたものであることがわかります。債務者の責めに帰すべき事由のときは,普通の債務不履行です。そうではない事由,当事者双方の責めに帰することができない事由や債権者の責めに帰すべき事由のときに,危険負担に従うことになります。
本試験では,どちらの責めに帰すべき事由によるかの問題が出題されます。債務者なのか,債権者なのか,当事者双方の責めに帰することができないのかの3パターンにわけて考えるようにしましょう。
動産甲が本件契約締結後引渡しまでの間にA・B双方責めに帰すことができない事由によって滅失したときは,Aの引渡し債務は不能により消滅するが,Bの代金債務は消滅しないから,Bは,Aからの代金支払請求に応じなければならない。
令4-問30-4
正解:✕