行政手続法における「理由の提示」について解説しています。
理由の提示が必要になる場面
まず、理由の提示が必要になる場面をおさえておきましょう。理由の提示が必要になるのは、「申請に対する処分」のうちの拒否する処分と「不利益処分」の2つです。
前提として、申請に対する処分や不利益処分がわからない方は、下の記事をご参照ください。
申請に対する処分
申請に対する処分は、「承諾する処分」と「拒否する処分(申請拒否処分)」の2つがあります。
申請は、「法令に基づき、行政庁の許認可等を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているもの」(行政手続法2条3号)のことで、この「諾(承諾)」と「否(拒否)」のうちの「否」にあたるものが「拒否する処分」です。
たとえば、飲食店を開業しようと思って、食品営業許可を行政庁に申請をして、承諾された場合、「なんで承諾してくれたんですか!」と理由を聞く必要はありません。一方、拒否された場合、「どうして拒否されたのか」理由を教えてもらう必要があります。
不利益処分
不利益処分とは、「行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分」のことです(2条4号)。
たとえば、飲食店を営業していたところ、営業停止などの処分がされるとき、「どうして営業停止になったのか」理由を教えてもらう必要があります。
判例は、「行政手続法14条1項本文が、不利益処分をする場合に同時にその理由を名宛人に示さなければならないとしているのは、名宛人に直接に義務を課し又はその権利を制限するという不利益処分の性質に鑑み、行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解される」としています(最判平23.6.7)。
理由の提示をする場合
申請拒否処分
申請拒否処分は、「行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない」とされています(8条)。
不利益処分
不利益処分は、「行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない」とされています(14条)。
判例は、「どの程度の理由を提示すべきかは、……①根拠法令の規定内容、②処分基準の存否・内容、公表の有無、③処分の性質・内容、④処分の原因となる事実関係の内容等を総合考慮して決定すべき」としています(最判平23.6.7)。
理由の提示の例外
申請拒否処分
申請拒否処分は、一定の場合(申請が適合しないことが明らかであるとき)は、「申請者の求めがあったときに示せば足りる」としています(8条1項但書)。たとえば、申請書の内容が明らかに間違っていたり、提出期限を過ぎているときなど、「言われなくてもわかるでしょ」ということです。
不利益処分
不利益処分は、「差し迫った必要がある場合は、一定の場合を除き、相当期間内に理由を示す」としています(14条1項但書、2項)。
書面の必要性
申請拒否処分
申請拒否処分は、「処分を書面でするときは、同項の理由は、書面により示さなければならない」とされています(8条2項)。
不利益処分
不利益処分は、「不利益処分を書面でするときは、書面により示さなければならない」とされています(14条3項)。
まとめると
最後に、理由の提示についてまとめます。
申請拒否処分 | 不利益処分 | |
理由の提示 | 処分と同時 (8条1項) |
処分と同時 (14条1項) |
例外 | 申請者の求めがあったとき (8条1項但書) |
処分後相当期間内 (14条1項但書、2項) |
書面の必要性 | 書面 (8条2項) |
書面 (14条3項) |