行政不服申立てにおける審査請求、再調査の請求、再審請求の違いについてまとめています。
行政不服申立てと行政事件訴訟
行政処分に不服がある者は、「行政不服申立て」と「行政事件訴訟」の2つの方法をとることができます。一般法はそれぞれ「行政不服審査法」と「行政事件訴訟法」で、他の法律に特別な定めがなければ、それぞれの一般法が適用されます(行政不服審査法1条2項、行政事件訴訟法1条)。
「行政不服申立て」と「取消訴訟」はどちらを選んでもよいのが原則です(行訴法8条1項本文)。しかし、個別の法律に、処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消の訴えを提起することができない「審査請求前置」がとられていることもあります(行訴法8条1項但書)。
たくさんの事件を裁判所に持ってこられると裁判所はパンクしてしまうので、不服がある人にまず審査請求をしてもらって、それでも解決しないものを裁判所に持ってきてもらおうということです。
ここまでで、行政不服申立てと行政事件訴訟の交通整理ができました。
審査請求
行政不服申立ては、①審査請求、②再調査の請求、③再審査請求の3つがあります。このうち、原則となるのは審査請求です。まず、行政不服申立ての原則は「審査請求」であることをおさえましょう。
審査請求は、原則として処分庁・不作為庁の最上級行政庁に対してします。上級行政庁がない場合は当該処分庁・不作為庁に対してします。「処分に不服があるから、上の者に審査してもらいたい」という感じです(「店長を出せ」に近いと思います)。
行政書士試験では、最上級行政庁に対してするというのがわかっていればよく、細かいところまでは問われていません(行審法4条各号はややこしいです)。
審査請求人は、国の機関が行う処分について処分庁に上級行政庁が存在しない場合、特別の定めがない限り、行政不服審査会に審査請求をすることができる。
正解は「✕」。行政不服審査会には審査請求できません。
再調査の請求
「再調査の請求」は、法律に再調査の請求をすることができる旨の定めがあるときは、処分庁に対してすることができます(行審法5条1項)。先ほどの「審査請求前置」と同じように、処分が大量に行われるような場合は、行政側の負担軽減になるメリットがあります。
再調査の請求は、最上級行政庁ではなく、処分庁に対してするのがポイントです。上の者に審査をしてもらうのではなく、「もう一度きちんと見てほしい」という感じです。
審査請求前置(先に審査請求しなければならない)とは異なり、「再調査の請求」は、審査請求と再調査の請求のどちらを利用するかは、自由に選べます。たとえば、課税処分がなされた場合、①国税不服審判所長に対する審査請求、②税務署長等に対する再調査の請求ができます。
再調査の請求をしたときは、再調査の請求の決定を経た後でなければ、審査請求をすることができません(行審法5条2項本文)。ただし、①再調査の請求をした日の翌日から起算して3月を経過しても、再調査の請求につき決定をしない場合、②再調査の請求の決定を経ないことにつき正当な理由がある場合は、審査請求をすることができます(行審法5条2項但書)。
なお、不作為については、再調査の請求の対象にはなりません。不作為ということは処分されていないということなので、「再」調査にはならないからです(不作為について審査請求をします)。
再審査請求
「再審査請求」は、法律に再審査請求をすることができる旨の定めがあるときは、審査請求の裁決に不服がある者はすることができます(行審法6条1項)。
このとき、①再審査請求をするか、②行政事件訴訟を提起するかは、自由に選べます。たとえば、労働者災害補償保険法(労災法)において、保険給付に関する処分に不服がある場合、審査請求(←特別法で労働者災害補償保険審査官に対して審査請求します)をしたあと、労働保険審査会に再審査請求するか処分取消しの訴えを提起する方法が選べます。
再審査請求は、「審査請求」の裁決に不服があるときにできるもので、「再調査の請求」に不服があるときにはできません。再調査の請求は処分庁に再度調査してもらっているだけで、審査はしていないからです。「再」審査というとおり、審査をしていない以上、再審査請求はあり得ないのです。
審査請求、再調査の請求、再審査請求の期間のまとめ
審査請求 | 再調査の請求 | 再審査請求 | |
主観 | 3か月 (18条1項) |
3か月 (54条1項) |
1か月 (62条1項) |
客観 | 1年 (18条2項) |
1年 (54条2項) |
1年 (62条2項) |
最後に、審査請求、再調査の請求、再審査請求の請求期間をまとめます。
- 主観:処分があったことを知った日の翌日から起算
- 客観:処分があった日の翌日から起算
再審査請求だけ、主観の請求期間が1か月になっている点に注意しましょう。審査請求と再調査の請求は初めて処分されたあとなので、知らないのも無理はなく、主観は3か月になっています。しかし、再審査請求は一度審査請求をして自分事になっているため、1か月となっています。
どれも、「正当な理由があるとき」は、この限りではありません(18条、54条、62条)。
不作為についての審査請求には、請求期間の制限はないので、不作為状態が続いている限り、審査請求ができます。なお、前述のように、再調査の請求については、不作為はありません。