【行政事件訴訟法】取消訴訟の訴訟要件(処分性・原告適格・訴えの利益など)まとめ

行政事件訴訟法
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行政事件訴訟法の取消訴訟における訴訟要件をまとめています。



取消訴訟の訴訟要件まとめ

行政事件訴訟における取消訴訟の訴訟要件は、次の7つあります。

①処分性
②原告適格
③訴えの利益
④被告適格
⑤管轄裁判所
⑥不服申立て前置
⑦出訴期間

このうち、④〜⑦(③〜⑦のときもあります)については、(語弊があるかもしれませんが)かんたんに決まるので、基本書などでは「その他の訴訟要件」のようにまとめられていることもあります。そのため、本来は並列であるにもかかわらず、④〜⑦の印象が薄くなりがちです。

訴訟要件について考えるとき、重要なのが、①処分性、②原告適格、③訴えの利益です(特に①②)。これらについて、「処分性があるか」「原告適格があるか」「訴えの利益があるか」が争点になることが多いため(判例が多い)、行政事件訴訟法の中で学習する比重が大きくなっています。

以下、どういうことを学べばいいのかについて記載します。

①処分性

取消訴訟は、処分(行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為)の取消しを求める訴訟です(行政事件訴訟法3条2項)。判例は、「行政庁の処分」について、「行政庁の法令に基づく行為のすべてを意味するものではなく、公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているもの」としています(最判昭39.10.29)。

処分性については、その行為が「行政庁の処分」なのかを争った判例(病院開設中止の勧告など)が多くあるので、それらの「処分性の有無」と「理由」を学習します。

②原告適格

取消訴訟は、法律上の利益を有する者に限り、提起することができます(9条1項)。判例は、「法律上の利益を有する者」とは、「当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者」をいい、「当該処分を定めた行政法規が、不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には、このような利益もここにいう法律上保護された利益にあたり、当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は、当該処分の取消訴訟における原告適格を有する」としています(最判平17.12.7)。

処分の直接の相手方は、処分の取消しを求める法律上の利益があります。原告適格で問題になるのは、処分の相手方以外の第三者の場合です。

判例(主婦連ジュース訴訟判決)は、「法律上保護された利益」について、「行政法規が私人等権利主体の個人的利益を保護することを目的として行政権の行使に成約を課していることにより保護されている利益であって、それは、行政法規が他の目的、特に公益の実現を目的として行政権の行使に制約を課している結果たまたま一定の者が受けることとなる反射的利益とは区別される」としました(最判昭53.3.14)。

その結果、平成16年(2004年)に9条2項が新設され、処分の相手方以外の者について法律上の利益を有するか判断するための指針が示されました。

9条2項 裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たっては、(①)当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、(②)当該法令の趣旨及び目的並びに(③)当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。(②→)この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たっては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし、(③→)当該利益の内容及び性質を考慮するに当たっては、当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案するものとする。

※太文字、カッコ部()はこちらで編集したものです。

9条2項は、以下の構成になっています。

①処分・裁決の根拠法令の文言のみによることなく判断する

②処分・裁決の根拠法令の趣旨・目的を考慮する
→目的を共通にする関連法令の趣旨・目的をも参酌する

③処分において考慮されるべき利益の内容・性質を考慮する
→処分・裁決が違法にされた場合の侵害利益の内容・性質、これが害される態様・程度をも勘案する

原告適格については、「原告適格」を争った判例(公有水面埋立法の処分など)が多くあるので、それらの「原告適格」と「判旨」(なぜ原告適格がある/ないのか)を学習します。

③訴えの利益

取消訴訟に勝訴しても、原告の具体的な権利利益が回復可能である必要があります。これが「訴えの利益」です。または、「狭義の訴えの利益」とも呼ばれます。

①処分性、②原告適格があっても、期間の経過などによって、③訴えの利益がなくなった場合、訴えは却下されます。もっとも、「処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなった後においてもなお処分又は裁決の取消しによって回復すべき法律上の利益を有する者」(9条1項かっこ書)は、訴えの利益があります。

訴えの利益は、判例(保安林指定の解除、建築確認など)から、「訴え提起後の事情の変更」により「訴えの利益があるか/ないか」について学習します。

④被告適格

取消訴訟の被告は、原則として、処分または裁決をした行政庁が所属する行政主体(国または公共団体)です(11条1項1号)。処分庁・裁決庁が国または公共団体に所属しない場合は、その行政庁が被告になります(11条1項2号)。

行政書士試験では、記述式問題でも、取消訴訟の被告として誰を訴えるのかなどが問われています。

⑤管轄裁判所

取消訴訟の管轄裁判所は、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所、または処分庁・裁決庁の所在地を管轄する裁判所です(12条1項)。

⑥不服申立て前置

行政庁の処分を争う場合、「行政不服申立て」と「取消訴訟」があります。このどちらを選んでもよい「自由選択主義」が原則です(8条1項)。

しかし、個別の法律に、処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消の訴えを提起することができない「審査請求前置」がとられていることもあります(8条1項但書)。処分の結果について争う数が多く、最初から裁判所を使うと、裁判所がパンクしてしまうのを防止するためです。たとえば、労働者災害補償保険法(労災法)の保険給付に関する処分は、審査請求前置がとられています。

もっとも、①審査請求があった日から3か月を経過しても裁決が出ないとき、②処分、処分の執行または手続の続行により生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるとき、③裁決を経ないことにつき正当な理由があるときは、裁決を経ないで処分の取消しの訴えをすることができます(8条2項)。

⑦出訴期間

取消訴訟は、処分・裁決のあったことを知った日から6か月(14条1項)、処分・裁決の日から1年(14条2項)以内に提起しなければなりません。ただし、どちらも「正当な理由」があれば、この限りでありません(14条1項但書、2項但書)。

期間は、行政不服審査法と行政事件訴訟法で異なるので整理しておきましょう。

SOMEYA, M.

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東京都生まれ。沖縄県在住。主に行政書士試験対策について発信しているブログです。【好き】沖縄料理・ちゅらさん・Cocco・龍が如く3

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