2020年12月実施分の宅地建物取引士(宅建士)資格試験に合格しました。そこで、どのような教材を使ってどのように勉強をしたのか、宅建士試験に合格したときの記録として書きたいと思います。
※この記事は、2021年に書いたものを修正追記したものです。
目次
宅建士試験に独学で合格するために必要な時間
300時間が目安(といわれている)
まず、宅建士試験に合格するために必要な勉強時間は約300時間といわれています。
もちろん人それぞれスタート地点が違うので一概には言えませんが、私のように「不動産」や「法律」初学者の人は、このくらい時間が必要だと思うと良いでしょう。
なかには「◯か月」「◯時間」で短期合格といった派手なコピーのものもあります。ただ、私は自分が特別な能力を持っている人間だとは思えないので、愚直にコツコツと進める方法を選びました。
自分の生活スタイルに合わせよう
およその勉強時間がわかったら、あとは自分の生活スタイルに合わせましょう。
私の場合は、1月から勉強をはじめて10月に試験を受ける予定だったので、1日1時間勉強して、10か月で300時間確保する計算にしました。このあたりは生活スタイルや好みなどの個人差もあるので、本試験までの日数から「週◯日」「1日あたり◯時間」のように計算してみましょう。
宅建士試験の学習は独学か予備校か
独学で勉強しました
実際に勉強をはじめるときに悩むのが独学か予備校かだそうです。
「だそうです」と書いたのは、私が勉強をはじめたときは「予備校」という選択肢が頭になかったからです。ただ、あとで周囲に聞くと、「独学と予備校で迷っている」「独学という選択肢がない」という意見もありました。一般的には「どちらにするか迷う」というのが多いようです。
端的に、独学は安上がりだけれど理解するのが大変、予備校はお金はかかるけれど理解しやすいというメリット・デメリットがあります。これは宅建士試験でも司法試験でも同じです。
結局、私は宅建士試験に関しては、最後まで独学でした。
これからはじめるなら予備校を使う
ただ、これから宅建士の学習をはじめるなら予備校を使います。
というのも、私は宅建士の勉強をしている終盤、TACさんから発売されている『直前予想問題集』の付録である「プレミアムレクチャー」(購入者特典の限定動画)を自宅トレーニング中などに繰り返し見ていて、これがとても記憶に残りやすいということに気づいたからです。
実際、インプットはテキストを読む(視覚)だけでなく、講義を見る/聞く(聴覚)ことで効果が上がるそうです。子どもの頃、何度も見聞きしたアニメや音楽を覚えているのと同じですね。
それからというもの、私は独学を基本としながらも「予備校の講義」は見る(聴く)ようにしています(この記事を書いている現在は司法書士試験の学習でLECさんを活用しています)。
なので、「これから宅建士の勉強をはじめるよ」という方には、予備校の講義を取り入れるのを超おすすめします(理解しやすさ、記憶しやすさが雲泥の差です)。
宅建士試験の学習に使う教材の選び方
テキスト&過去問が基本
とはいうものの、メインとなる教材はきちんと選びたいところです(予備校はすがるものではなく、あくまでサブとして理解を助けてくれるものとして活用するのが良いでしょう)。
試験勉強は、テキスト(インプット)と過去問(アウトプット)が基本です。
これに加えて、補助教材として、要点がまとめて記載されている「まとめテキスト」(インプット)や「模試」(アウトプット)などを加えていくと良いでしょう。ただ、あまり手を広げると逆に理解しにくくなるので、要所で取り入れるのがおすすめです。
シリーズ統一がおすすめ
そこで、おすすめするのはシリーズを統一する方法です。宅建士試験向けの市販教材はシリーズ化されており、テキストによる基礎インプットから過去問によるアウトプット、直前期の模試などひととおりの対策ができるようになっています(私もこの通り学習しました)。
宅建士試験向けの市販教材には、主に以下のシリーズがあります。
- みんなが欲しかった!宅建士シリーズ(TAC)
- 出る順宅建士シリーズ(LEC)
この他にもいくつかありますが、この2シリーズのどちらかを選べば間違いはないでしょう。ちなみに私は「みんなが欲しかった!」シリーズを使いました。「みん欲し」の方が法律初学者でもとっつきやすい表現が多いように感じたからです(今だったらLECさん選ぶかも/笑)。
人それぞれテキストやレイアウトの好みもあるので、書店で確認してから購入しましょう。
宅建士試験に向けての独学スケジュール記録
1〜4月:テキストの読み込み
ここから、私が実際にどのように学習を進めていったか紹介します。
私が宅建士試験の勉強をはじめたのは、2020年の1月からです。まずは大型書店でどのようなシリーズがあるのかを確認して、Amazonで注文しました(シリーズで買うと重いので…)。
テキストに使ったのは『みんなが欲しかった! 宅建士の教科書』です。「宅建業法」「権利関係」「法令上の制限・その他」の分野別に3分冊できるようになっていて、それをひたすら読んでいきました。本書は約600ページなので、1日20ページずつ読んで、1か月で1周できる計算です。
ただ、初学者ということもあり、1周目はほとんど頭に入ってきませんでした。
とはいうものの、そんなことはわかりきっていることなので気にせず、2周目、3周目、4周目と読み進めていきます。2周目で「わからない部分がわかる」という段階になったので、3周目以降はわかる部分はサラッと読んで、わからない部分(民法!)の理解に努めるようにしました。
試験勉強対策として、「いきなり過去問をやる」という人も少なくありません。もちろん出題形式を知る上で過去問に触れることは大切ですが、私はまず基礎を学んでからそれから問題を解きはじめるという方法をしました。どちらが良い悪いというわけではないので、思想に合わせて選んでみましょう。
※本シリーズには、『みんなが欲しかった! 宅建士 合格へのはじめの一歩』(9月頃発売)という入門書がありますが、これは宅建試験の全体像を軽く把握するためのものなので、特に読まなくても良いと思います。試験日まで1年以上あり、まだ新年度のテキスト(10月頃発売)が発売されていないという方は読んでみても良いでしょう。
5〜6月:問題集を解きはじめる
4月から、いよいよ『宅建士の問題集』を使って問題を解きはじめます。
後になって気づいたのですが、この問題集はインプットと同時に使うようです…(汗)。勉強はインプットをするだけだと忘れるので、ドリルとしてアウトプットすると記憶に残るというわけです。
結果はというと、まったくわからない…。
恐ろしいくらい頭に入っていないことがわかりました。序盤に学習する「宅建業法」についても「わかった」ような気がしていただけで、選択肢を並べられて「どれが正しいか/誤っているか?」を問われると途端にわからなくなります(理解が浅い証拠です/苦笑)。
ここで、まったく理解していない自分に気づいたので、問題集を進めるのとは別に、夜寝る前にテキストを10ページずつ読むというのをはじめました。
この習慣は試験終了までずっと続けていて、理解が進むにつれて20ページ、40ページと1日あたりのページ数増やしていき、直前期には1日1冊のように流し読みできるようになりました。
余談ですが、問題集の下に「学習日」が書いてあって、全然やっていないように感じますが、最初は何周することになるのか見当がつかず、最初の何周かは学習日を書かないでやっていました。
そして、5月には宅建士試験の願書提出がありました。世間はというと、2020年の新型コロナウイルスの感染拡大による1回目の「緊急事態宣言」の頃だったと思います。願書を取りに書店に行ったときのピリついた雰囲気を覚えています。
7〜8月:過去問題
7月からは、いよいよ「過去問」です。前述の問題集は過去問を中心にテキストの論点別に並べて構成ものですが、『12年過去問題集』は直近12年分の過去問が出題順に収録されています。
つまり、本試験と同じ環境(問題構成)で学習できます。
私は、1日あたり半分の25問ずつ問いて、2日で1年分解くようにしていました。これで24日間で12年分の過去問ができます。月末まで残った日(約1週間)は、テキストを読んだりする復習にあてました。これを7月と8月で1周ずつ繰り返しました。
結果はというと、最初の6年間くらいはまったくできていませんでした。
ただ、解き終わってわからなかったところを中心に復習してを繰り返したことで少しずつ力が付いてきたのか、1回目の7年目くらいからは安定して合格点に達するようになりました。
また、本書は、「統計資料」がダウンロードできる特典が付いています。宅建士試験は、48問目に「統計問題」(土地取引の動向など)があり、そのPDFが見られます。
私は、PDFをカラーコピーでプリントアウトして、参考書の一部として使っていました(白黒コピーでも良いですが、150円ほどで合格が近づくと思ったら安いものです)
スプレッドシートに回答、正誤、得点、正解率、所要時間などを記録してました。
とにかく最初は「わからなくて当たり前」なので、できていない部分を埋めるように学習を続けることが大切です。これは宅建士試験にかぎらず、どの勉強(や仕事)でも同じかもと思っています。
さて、7月が終わる頃(ちょうど過去問が1周終わる頃)、学習時間が210時間を超えたあたりで宅建士試験の合格が見えてきました。というのも過去問で合格になる年が出てきたからです。
これで、「あと100時間くらい勉強して精度を高めていけたら」と思えるようになりました。
しかし、ここで問題が発生します…。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、10月に行われるはずの宅建士試験が2回に分けられることになり、私は12月組になりました(2か月勉強期間が増えるのが吉と出るか凶と出るか)。
9月:直前予想問題集
本来、10月に本試験があると思っていたため、9月に模試、10月は総まとめを予定していのですが、2か月ずれ込むことになりました…。
ただ、勉強は10月に完成させるつもりで当初の予定どおり粛々と続けることにして、模試をしました。私は宅建士試験は独学だったので、「みん欲し」シリーズの『直前予想問題集』を使いました。
結果は惨敗…。
過去問を2か月間繰り返し、点数が安定してきたところで、まったく合格に手が届きません。当時、「宅建ブルー」という言葉を使っていました(笑)。
模試は、本試験以上に難しいというのを知って少し安心しましたが(実際学習していない論点が平気で出てきます)、知らない自分というのが怖くて、復習に力を入れるようになりました。
本書は、過去問と同じように2日で1回分(50問)を解くようにして、それが3回分収録されているので6日間で1周が終わりました。そして、4日間で復習をして10日で1セットのようにしていました。これを3セットすると、1か月(30日)で3回解くことができます。
本書は、3回分の模試、そしてAランク知識完全おさらいブックが付いています。これは、基本テキストから本当に必要な部分だけをまとめて抜粋したものです。ただ、テキストを使い込んでいたということもあり、結局あまり使うことはありませんでした(短期間で勉強する人には良いかもです)。
それはそうと、本書でもっとも大きな気付きは「プレミアムレクチャー」という付録の講義です。前述のとおり、私はこれで動画や音声など文字以外の方法でインプットをする効果に目覚めました。
「プレミアムレクチャー」は、宅建業法、民法、法令上の制限などテキストと同じ構成で、要点や法律の改正点について5〜20分程度の動画になっています。本動画は、TACさんの村田講師が担当しているのですが、これがとにかくわかりやすかったです。
些細なことではあるのですが、「これまでは縦(防火壁)にしか区切れなかったものが、カステラを切るように横(防火床)にも区切れるようになりました」といった具合に、カステラの喩えだったりそのときのジェスチャーがきちんと記憶として頭に残るのです(今も諳んじて書いています)。
プレミアムレクチャーは繰り返し見ていて(全部で1時間分くらい)、本試験が終わるまでにおそらく10回以上は見ていたと思います(12月のまとめ期は毎日何かしらのテーマを見ていました)。
10〜11月:まとめ!?
10月は、本来ならまとめ期です。
ただ、私は12月組になったので、2か月空くことになりました。そこで、復習として、「問題集」と「過去問」を使うことにしました。この時点ではほとんど理解しているつもりでしたが、理解が怪しいところなどをあぶり出すために、1か月で1冊ずつ終わるように学習しました。
また、10月に実施された本試験の問題をインターネットで探して問いていました。
12月:まとめ期
いよいよ本当のまとめ期です。12月試験組の本試験は12月27日でした。10月試験組の本試験日は10月18日だったので、実際は2週間くらいを目処にスケジュールを立てるようにしましょう。
私は以下のようにまとめ期を過ごしました。
(↓実際にメモアプリに書いていたものをコピペしました)
- 1〜12日:「過去問」間違え分の書き出し
- 13〜15日:「模擬試験」間違え分の書き出し
- 16〜19日:「問題集」間違え分の書き出し
- 20日:「令和2年」間違え分の書き出し
- 21〜26日:総まとめ
1〜12日、1日1年分過去問を見て、自分が最後まで間違えていたところを見直しました。同じように、13〜15日は模擬試験、16〜19日は問題集、20日は10月実施分の本試験問題を見直します。
そして、最後の1週間は「総まとめ」として、1日1分野ずつ(宅建業法・権利関係・法令上の制限・その他)を学習して本試験に臨みました。この期間までも寝る前のテキストの通読は続けていました。
実際は、約2週間ちょっとだと思うので、「過去問」に1週間、「模擬試験」と「問題集」に1週間、あとは「総まとめ」のように割振るのが良いでしょう。
私は昔から徹夜が苦手なので(学生時代もしたことはないはず)、本試験前も1日1時間くらいしか勉強はしていません。その分、勉強期間は長くとっていました(約1年間≒365時間です)。
まとめ
おかげさまで、試験は無事に合格することができました。
試験日が2か月延びたことで勉強時間は確保できたようにも思いますが、その分、精神的には辛かったのを覚えています(これは2020年に実施された多くの国家試験がそうだったと思います)。
宅地建物取引士の試験は、合格率が約15%の国家試験です(2020年12月実施分は13%でした)。初学者の方が少しだけ勉強して受かるほど易しいものではありませんが、ひとつずつ着実に歩を進めれば、必ず受かることができます。
この記事を読んだ方が、こうやって勉強を進めればいいんだ、地道に勉強を進めれば時間がかかっても合格できるんだということがわかれば本望です。