【行政事件訴訟法】形式的当事者訴訟と実質的当事者訴訟のまとめ

行政事件訴訟法
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行政事件訴訟は、抗告訴訟、当事者訴訟、民衆訴訟、機関訴訟に分けられます(2条)。

そして、当事者訴訟は、形式的当事者訴訟実質的当事者訴訟の2つに分けられます。

本試験対策として、行政事件訴訟で最重要なのは抗告訴訟です。当事者訴訟はどのようなものがあるかをイメージできるようにしておきましょう。



形式的当事者訴訟

形式的当事者訴訟

形式的当事者訴訟は、当事者間の法律関係を「確認しまたは形成する」「処分または裁決」に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするものです(4条前段)。

取消訴訟のときと異なり、当事者訴訟はイメージがわきにくいと思います。

形式的当事者訴訟は、処分または裁決の効力を争うという点は、抗告訴訟と共通しています。ただ、抗告訴訟で処分または裁決を争うより、直接の利害関係がある当事者間で争う方が適切と考えられる場合には、抗告訴訟ではなく当事者同士で争うという形式をとることとされています。形式的に当事者同士で訴訟をするから「形式的当事者訴訟」です。

では、形式的当事者訴訟にはどのようなものがあるのでしょうか。

たとえば、公共事業のためにAさんの土地が収用されるときのことを想像してみましょう。

土地を収用するとき、起業者は土地が存在する都道府県の土地収用委員会に収用の裁決を申請します(土地収用法39条1項)。これは、「土地を使いたいので認めてください」とお願いするものです。次に、土地所有者であるAさんは、起業者に対し、土地の権利に対する補償金の支払を請求することができます(法第46条の2第1項)。「土地を使う代わりに補償金を払ってください」ということです。

Aさんは、土地が公共事業に使われること自体については反対していません。行政である土地収用委員会の裁決については不満を持っていないということです。しかし、収用される土地に対して補償金が少ないことに不満を持っています。そこで、Aさんは補償金について訴えることにしました。

このとき、収用委員会の裁決のうち損失の補償に関する訴えは、訴えを提起した者が土地所有者であるときは起業者を被告としなければならないとされています(法133条3項)。

これがまさに、形式的当事者訴訟が定義する当事者間(土地所有者と起業者)の法律関係(損失の補償)を確認しまたは形成する処分または裁決(収用委員会の裁決)に関する訴訟で、法令(土地収用法)の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告(起業者)とするものにあたります。

本来、補償金について争いがあるなら、土地を収用する裁決をした土地収用委員会に対して訴えを提起してもよさそうですが、Aさんとしては土地を収用されること自体には反対していない、ただ補償金について争いがある状態です。かんたんにいうと、それなら、土地収用委員会という行政を巻き込まず、形式的に当事者間で紛争を解決しましょうというのが形式的当事者訴訟です。

本試験では、土地収用による損失補償の額を争うとき、どのような訴えの方法が適切かが問われます。

土地収用による損失補償の額を不服として、土地所有者または関係人が訴えを提起する場合には、補償額を決定した裁決を行った収用委員会の所属する都道府県を被告として、裁決の取消しの訴えを提起する必要がある。

(平28-問21-4)

正解:✕

実質的当事者訴訟

実質的当事者訴訟

実質的当事者訴訟は、「公法上の法律関係に関する確認の訴え」「その他の公法上の法律関係に関する訴訟」です(4条後段)。

やはり、実質的当事者訴訟もイメージがわきにくいと思います。

実質的当事者訴訟は、公法上の法律関係という点は、抗告訴訟と共通しています。もし、私法上の法律関係だったら、民事訴訟になります。ただ、抗告訴訟が、「行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟」(3条1項)であるのに対し、実質的当事者訴訟は、公権力の行使を直接争うものではありません。

ここまでおさらいをすると、公法上の法律関係を争うのが行政事件訴訟(抗告訴訟、当事者訴訟など)、私法上の法律関係を争うのが民事訴訟です。そして、行政事件訴訟のうち、公権力の行使を直接争うのが抗告訴訟、公権力の行使を直接争うものではないのが実質的当事者訴訟です。

先ほどの形式的当事者訴訟は、形式的に当事者同士が争うものであったのに対し、実質的当事者訴訟は、実質的に公権力と争います。そのため、被告は行政主体となります。

実質的当事者訴訟は、たとえば、在外日本国民が、在外選挙人名簿に登録されていることに基づいて投票をすることができる地位にあることの確認を請求する訴えなどがあります(最判平17.9.14)。

実質的当事者訴訟の定義に当てはめると、公法上(公職選挙法)の法律関係(投票をすることができる地位)に関するもので、公権力の行使を直接争うものではなく(抗告訴訟ではない)、「自分たちは選挙権がありますよね」と確認を求める訴訟という点で、実質的当事者訴訟にあたります。

SOMEYA, M.

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東京都生まれ。沖縄県在住。主に行政書士試験対策について発信しているブログです。【好き】沖縄料理・ちゅらさん・Cocco・龍が如く3

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