行政事件訴訟は、抗告訴訟、当事者訴訟、民衆訴訟、機関訴訟に分けられます(2条)。
このうち、抗告訴訟と当事者訴訟は、当事者個人の権利・利益を対象にしたものです。そのため、これらを主観訴訟といいます。一方、民衆訴訟と機関訴訟は、個人の権利・利益ではなく、行政の適法性を確保するために提起される訴訟です。そのため、これらを客観訴訟といいます。
客観訴訟(民衆訴訟と機関訴訟)は、法律に定める場合において、法律に定める者に限り、提起することができます(42条)。
民衆訴訟
民衆訴訟とは、国または公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、選挙人たる資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起するものをいいます(5条)。
たとえば、公職選挙法にもとづく当選の効力に関する選挙訴訟があります。また、地方自治法にもとづく財務会計上の行為に関する住民訴訟もあります。
実際に公職選挙法を見てみると、「衆議院議員または参議院議員の選挙において、その選挙の効力に関し異議がある選挙人は、選挙管理委員会を被告とし、当該選挙の日から30日以内に、高等裁判所に訴訟を提起することができる」とあります(公職選挙法204条より抜粋)。
本試験では、どのようなものがどのような訴訟類型にあたるかが問われます。これらは一朝一夕で身につくものではないため、行政救済法(行政不服審査法、行政事件訴訟法、国家賠償法)をひととおり学んだあとで、ひとつずつ整理していくようにしましょう。
A県議会議員の選挙において、その当選の効力に関し不服がある候補者がA県選挙管理委員会を被告として提起する訴訟は、機関訴訟である。
(平30-問18-4)
正解:✕
機関訴訟
機関訴訟とは、国または公共団体の機関相互間における権限の存否またはその行使に関する紛争についての訴訟をいいます(6条)。
たとえば、国の関与に対し、地方公共団体がその取消しを求める訴訟があります。関与とは、かんたんにいうと、この場合、国が地方公共団体に口出しをすることです。
こちらも地方自治法を見てみると、「普通地方公共団体の長は、高等裁判所に対し、国の行政庁を被告として、訴えをもって違法な国の関与の取消しまたは国の不作為の違法の確認を求めることができる」とあります(地方自治法251条の5第1項本文より抜粋)。
※正確に言うと、この前の段階として国地方係争処理委員会に対する審査請求がありますが、今は行政事件訴訟法の学習のため、国地方係争処理委員会の部分は割愛しています。
まとめ
客観訴訟は、行政の適法性を確保するために提起される訴訟です。
客観訴訟のうち、民衆訴訟は、選挙の効力を争ったり、地方公共団体の財務会計上の行為を争ったりします。そこに住んでいる人がみんなの権利・利益を代表して訴えるイメージです。一方、機関訴訟は、国の関与に対し地方公共団体が訴えるなど機関が機関を訴えるものです。